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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
木こり達のドーム
38/211

山奥の村には怪物がいるそうです

 家の裏庭に井戸を見つけたシドラは水をくみ上げてキューちゃんのボディに付いた泥を洗い流し始めた。

 それを見て周りで働いていた子供たちが集まって来る。

「ウィザーのおじさんは何をやっているの?」

「私の名はシドラと言います。見ての通り馬車の汚れを落としているんですよ。」

 

 この村ではウィザーは教師と医者でしか見たことは無い子供達である。

 彼らは名士であり尊敬する対象であった。

 ウィザーとは雲の上のような存在だったのだ。

 そのウィザーが百姓と同じような仕事、すなわち馬車を洗うような事ををするのを見るのは初めてだったのだろう。

 

「きゅっきゅっ。」

「うわっ馬車が答えた。」

「いや、ウィザーの馬車だから人の言う事位わかるさ。ウィザーの先生が乗って来る馬車だってこんな声を出すよ。」

「だけどあの馬車はいつも綺麗にしているぜ、こんなに泥まみれになってはいないよ。」

 

 ウィザーとは彼らと違い、馬車など洗わなくとも綺麗なのが当たり前だと思っているのだ。

 

「なんかどこかでひっくり返ったの?おじさん。」

「い、いえっ。ひっくり返って等おりません。私はウィザーなんですよ。」

「何胸張って言ってるんだろう?」

「体中泥だらけになって言っても説得力ねーなー。」

 

 こう言う時子供は残酷である、したくない話題に平気で踏み込んで来る。

 

「もしかして旧道から来たんじゃないの?」

「ばっか、ウィザーだぞ。そんな馬鹿みたいなことする訳ないじゃないか。」

「そうだよなウィザーはなんでも知っていて何でもできるんだぞ。」

「あ、いや、そうとばかりは限りませんが。」

 

 子供たちが寄せる絶対的信頼の中、どのように話を逸らそうか、シドラは必死で考えていてた。

 

「もしかして途中で怪物に合ったとか。」

「おじさん怪物と戦ってきたの?」

 怪物?いや、怪物と呼ばれるような物はパンフレットには書いていなかった。

 ガルドの知らない者が何かいるのだろうか?

 

「そうか怪物と戦って怪物を倒してきたから泥だらけなんだ。」

「すっげーなっ。やっぱりウィザーって本当にすげーんだな。」

「いや、皆さんの言う怪物とはどんな物の事を指しているのでしょうか?」

 

「あれ?怪物と戦ってきたんじゃないの?」

「山の奥の方に行くと時々見かけるって奴。」

「赤い目をギラギラさせて俺たちを睨み付ける8本脚の怪物さ。」

 

 8本足?磨き虫が地上におりた所を見られたのかな?

 

「ほう、それでその怪物は皆さんを襲うんですか?」

「ああ、怪物を見たら一目散で逃げるんだそうだ。だから怪我した奴はいっぱいいるぜ。」

「もしかして、自分でコケたんじゃないんですか?」

 

「……うん、そういうやつもいるな。」

 

「どなたが怪物を見たのですか?」

 子供たちは周りを見渡すが誰も返事をしない。

「直接その怪物を見た方はおられないのですか?」

 誰も返事をしない、やはり子供達は何かを見間違ってそれに尾ひれがついただけのようだ。

 

「俺の妹だ。俺の妹が見たと言っていたぞ。連れてくらあ。」

 少年が一人走り出した。

 少年と言ってもドワッフ族であるので、顔中に濃い産毛が生えているんですがね。

 やがて少年は少女を一人連れて来た。

 

「ヨンデカルトルキオ。」

「ウン、サルノエウラ コノキエコシ ルキオ。」

「妹さんはウィザー語を話せないのですか?」

「妹はまだ6歳だから学校には行っていないんだ。」

「6歳?それにしてはあなたとあまり大きさが変わらないではありませんか。」

 

 さすがにドワッフ族とはいえ女の子に髭は生えていなかった。

 

「ドワッフ族の女は成長が早いんだ。体も男より大きくて力も強いから男は一生女には勝てないんだよ。」

「それはお気の毒な人生ですね。それはさておきどちらで怪物を見たのですか?」

『お前どこで怪物を見たんだよ?』

「コノキエコシ サルノエウラ シグホトケギ。」

 幼女はドワッフ語で答える。

 

 無論シドラはウィザーなので少女の言葉は理解できた。

 しかし戒律によってウィザーは各種族の言葉の使用は禁じられているので通訳が必要となるのだ。

 

「この山のもうひとつ向こうの山の上から見たんだって。」

「そんな所まで子供が一人で行ったのですか?」

「ドワッフの女は強いんだ。この年なら毎日山を駆け回って山菜を取っているよ。」

 ドワッフ族での女性の優位性は6歳の頃から既に顕著なものらしい。

 

「しかしそんな子供で事故でも起きたらどうするのですか?」

「この年ならば一晩や二晩山で過ごしても平気だよ。熊や狼もいるから寒かったらそいつらと一緒に寝るさ。」

「………………。」

 

「どうしたんだ?」

「いえ……軽いカルチャーショックを感じまして……それで怪物はどんな格好をしていたのですか?」

「怪物の格好を教えてくれってさ。」

「ヨルナハトチ エルラフトチ ミンクゴウゴウ。」

 

「足が8本で腕が2本で赤い目がギラギラしていたそうだよ。」

 シドラは自分の知っている磨き虫の種類を思い出して見た。

 

「大きさはどのくらいですか?」

「大きさはどのくらいかって?」

「ウゴウウ。」

 少女は腕を精一杯広げる、かなり大きいようである。

 

「この辺に有るもので例えればどのくらいですか?」

 少女は周りを見渡しで納屋を指さす。

「イチュラン。」

「納屋位の大きさだってさ。」

「8本足で赤い目をギラギラ?もしかしてあいつの事ですかね?」

 

 それらしきものに心当たりが無くもないが正確には判らない。

 

「おお、やっぱりウィザーのおじさんはそいつと戦ったことが有るんだ。」

「いえいえ、心当たりが有るだけですよ。」

「あれ?シドラの頭の上に何か出たぞ。」

「ほんとだ旗みたいなものが出てる。」

「プリー、プリー。」

 幼女もシドラの頭を指さす。

 

「は?」

 シドラは頭の上を見るが何もない。

 手をパッパと振ると子供たちの目からフラグが消える。

「気のせいじゃないんですか?」

 

「そうだったみたいだ。でも旗が見えるとその時言っていたことが本当になるっていう伝説のある……フラグかな?」

「そうかこの後シドラはあの怪物と戦うんだ。」

「それで戦ってあいつを倒してくるんだ。」

 

「いえいえ、私はなんであれその怪物と戦う理由は有りませんし、多分危険なものでもありませんよ。」

「やっぱウィザーはすげーなー。」

「俺たちを守ってくれる神様の使いだかんな。」

 

 この村ではウィザーはそのように言われているのですか?それならそれらしく振る舞わなくてはいけませんね。

 

「もちろん。私はウィザーですから。」

「おお、胸を張って言っているぜ。」

「すげーすげー、やっぱウィザーはすげーっ。」

 

 子供達に囃されてシドラの胸は更にそっくり返る。

 

「俺たちも洗うのを手伝うよ。」

「アッチュラ、アッチュラ。」

 子供たちは井戸の方に駆け付けると水をくみ上げてシドラの所に持ってくる。

 

「服を脱いでよ洗ってあげるから。」

「いいえ、人前で服を脱ぐことは戒律に反しますから、このまま水をかけて下さい。」

「え?服を着たまま?」

「このまま泥を洗い流してください。」

 

「水、冷たいよ。」

「風邪ひいちゃうよー。」

「大丈夫です。私はウィザーですから。」

「おお、胸張って言ってるからきっと大丈夫なんだ。」

「よっしゃ水をぶっかけろ。」

 子供たちはシドラの頭から水をぶっかけた。

 

「擦れ、擦れ。」

「アチュール、アチュール。」

 子供たちはシドラの周りから水を掛けながらごしごし擦る。たちまちシドラの汚れは落ちて綺麗になる。

「皆さん少し離れて下さい。」

 シドラは子供たちを離すと体全体をぶるぶると震わせて水を切る。

 

「おお、なんだ?」

「すげーっ、なるで犬みたい。」

「器用なことをするな~っ、さすがウィザーだ。」

「オットゲイソー。」

 少女が手を叩いてはやす。

 体中から水を吹き飛ばしたシドラはすっきりした格好になった。

 

「皆さんありがとうございます。おかげでキレイになれました。」

 シドラの服はしずくもたらさず濡れてもいなかった。

 

「それが体を綺麗にするウィザーの魔法なのか?」

「そうです。私はウィザーですから。」

「だから胸は張らなくていいから。」

 

「ホントはただ体を振って水を切っただけです。そのような便利な魔法が有れば私が知りたいですね。」

「なんかよくわからないけどウィザーの魔法ってあんまり便利じゃないんだね。」

「あまり便利になりすぎると人間は怠惰になりますからね。手ごろな所が良いのですよ。」

「ふ~んそんなもんかな~っ?」

 

「それより皆さんは学校へは行かないのですか?」

「ああ、学校は1日置きなんだ。ほらここは小さな村が多いから二人のウィザーが巡回して回っているんだ。あれが学校だよ。」

 少年は川の対岸にある古びた家の様な建物を指さした。

 

「午前中が学校を開いて午後はそのまま病院になるんだ。」

「薬師の方はいるのですか?」

「ああ、俺の兄ちゃんが薬師の見習いをやってらあ。暇を見ては薬草取りにいってるぜ。」

「ちょっと学校を見に行ってみましょう。」

「ああ、俺たちも仕事しに戻らないと父ちゃんにどやされちゃうからな。」

 

 シドラは子供たちと別れると学校に向かった。


アクセスいただいてありがとうございます。

ドワッフ族の村は平和で山の動物たちとも仲が良い様です。

ラフレアが熊と相撲を取るのもそれ程珍しい事では無いように思えます。 以下次号

 

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