表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
木こり達のドーム
37/211

ドワッフ族の村に着きました

「おお、これはこれは良くきただべや~っ。」

 

 ラフレアの家に着くと愛層の良さそうな髭面のオヤジが出迎えてくれた。

「エマさん兄のスカウスなの。」

「いつもラフレアがお世話になっておりますだ。おお、ウィザー様までおいで下さるとは。」

 

 丁重に頭を下げるスカウス。ずいぶん年の離れた兄弟だったんだ。

 

「いえいえお世話になっているのはこっちの方でして。」

「ウィザー様はずいぶん汚れていらっしゃいますだね、もしかして旧道をやってこられたんだべか?」

「いや~っギルドで聞いたらこちらの道を教えられたものですから。」

「あの道は馬車では通れなかった筈だども良くやってこられましただなあ。」

 

 やっぱりあの道は人間用の近道だったみたいだ。

 

「いえいえ、軌道馬車の性能を甘く見てはいけません。」

「きゅいっきゅうう~っ。」

 

 体中に土をこびりつかせ、枯葉まみれになっている姿をして言ってもあまり説得力がないぞシドラ君。

 

「そ、そうだべか。でも帰りは新道をお使いになることをお勧め致しますだよ。まだ全部開通してはねえだが旧道よりは走りやすいだべ。」

「そうさせていただきます。時に体と馬車を洗いたいので井戸をお借りしたいのですが。」

「ああ、裏にありますだでどうぞご自由に。」

「ありがとうございます。」

 

「ああ、洗い終わったら馬車は納屋に入れておいてくだせえ。」

「ご丁寧にありがとうございます。」

 シドラキューちゃんを連れて汚れを洗い落としに行ったようである。

 

 挨拶をしていると家の方から小柄な女の子が走って来る。

 丸々とした10歳くらいの女の子だった。

 

「ラプツィーニ、エルラ~ド。」

 思いっきりラフレアに向かってアタックを掛ける。

 受け止めたラフレアの体がドカンという音を立てて揺れる。

 

 やだっ、ものすごい勢い、私だったら吹っ飛ばされそう。

 それ程に少女のアタックには勢いが有った。

 少女を抱き上げて頬ずりをしたラフレアは少女を降ろすとエマに顔を向けさせた。

 

「カンナ デルトーサ エマラプツィ ドルトレッサ。」

「カンナドール。」

 そう言って少女はエマに頭を下げる。

 

「ヨルデーラカンナ。」

 スカウスがカンナの頭を撫でる。

 

 何を言っているのかエマにはわからなかった、どうやらドワッフ族の言葉らしい。

 当然のことながらエマにはエマのドームの言葉が有り、普段村ではその言葉で会話をしている。

 ドームの外では共通語としてウィーザー語を使っているに過ぎない。

 

 この年齢の子供はまだ学校でウィーザー語を習っていないらしい。

 改めてエマはウィザーがウィザー語の授業を行う意味を理解できた。

 この言葉を学校で教えることにより人々が移動しても言葉が通じる状況を作り出しているのだ。

 

「初めましてエマと言います。仲良くしようねカンナちゃん。」

 エマはしゃがんでカンナの手を取った。

 ぷにぷにしたカンナの手の感触はとても気持ちの良いものであった。

 

「エマ?」

「うん、そうよ『エマ』よ。」

 エマは自分の胸を指して言った。

 

「エマ、ソルニーリャ。」

 カノンがにこっと笑う。

 

 カンナは子供らしくぷくぷくした感じでとても豊かに育ってきているのが判る。

 目の大きな黒い癖のない髪をした、とてもかわいい娘でラフレアの手にしがみついている。

「あれ?カノンちゃんて5歳じゃなかったっけ?」

 エマが5本の指を広げて言う。

 

 どうやらカノンも意味が判ったらしい。

 

「ン、カノン5エルノ。」

 カノンも指を5本広げる。

 大きい、5歳にしてはずいぶん大きい。

 しかもうっすらと胸まで盛り上がっている。

 

 ま、まさか本当に?

 

「ね、カノンちゃん胸お手玉出来るって本当?」

 エマはラフレアの方を向いて聞いた。

 ラフレアはうなずいてカノンに何か言う。

 

「ン、カノンジュデス。」

 エマの頭から血の気が引いてきた。

「カノンやって見せてあげるの。」

「ジュデル。」

 カノンはポケットからお手玉を取り出すと壁を背にして座る。

 

「カ、カノンちゃんいつもお手玉を持ってるの?」

「カノン良くこれで遊んでるなの。」

 屈託なくカノンは笑うとお手玉を放り投げる。

 

「ふん、ふん、ふん。」

 お手玉はカノンの胸に当たるたびに跳ね上げられて隣の胸に移っていく。

 少女胸は服の下でピコピコ動いている。やはり幼少時からの訓練がドワーフ族の胸の大きさの秘密であった。

 

 やめれ~~~っ。

 

 エマは目まいがして頭を抱える。

「エマさんどうかなさったのですか?」

 スカウスがエマの表情に気付いて声をかけて来る。

 

「い、いえなんでもありません。ありがとうカンナちゃんとても上手なのね。」

「えへへへ~っ。」

 幼女は照れたように微笑む。

 

『カンナにお土産があるの。』

 ラフレアは背中の包みを開けると荷物を取り出した。

『ほうらカナンの新しい服よ。』

『わあ、お姉ちゃんありがとう。』

 ラフレアはカナンの体に買ってきた服を当ててみる。

 

『大きさは大丈夫みたいね。』

「ラフレアちゃんはそうやって見るとお姉さんというよりもお母さんみたいね。」

「むふふふっ。」

 

 ラフレアは嬉しそうにほほ笑む。きっと子供好きなんだろうな。

 

『ほかの子たちの服も買ってきたからみんなを呼んでいらっしゃい。』

 ラフレアはカナンの服をスカウスに渡すとカンナに言った。

『は~い。』

 言われたカノンは外に飛び出して行く。

「村の子供たちはラフレアの持ってくるお土産をすごく楽しみにしているんだべ。」

 すぐに子供たちが集まってくるとラフレアは子供たちにいろいろなお土産を渡していった。

 

 子供たちはお土産をもらうと大喜びで走り去っていった。

 

「この村は貧しいのですか?」

「いんや、それ程貧しい訳ではねえだども、必要なものは全部自分達で作れるだから。ただ、交通の便が悪く生活はあまり便利とは言えないだべなあ。特に被服等は町までいかなければ綺麗な服は手に入らないべなあ。」

 

「行商人も来るでしょう。」

「んだ、だども絶対数が少ない村には実用品しか持っては来ないだから。」

「でも下の町はすごく活気が有るように見えますが。」

「もともとこのドームは人口の少ないドームでだったべが、あの町が出来て以来どんどん町に人が集まっていくだで。」

 

「ああ……成程。」

「でも悪い事ばかりじゃねえべが。村の若い娘は町に出て行っても子供を産むときは村に戻ってきよりますだで。」

「へ?……それって?」

「ええ、まあ父親がだれかわからない子供もおるだが、たんだそんなことはどうでもええんだが。兄弟だったり幼馴染だったり、そう言った男がその子を引き取って育てますだで。」

 

 スカウスの言葉はエマにはいささか衝撃的な発言だった。

「という訳でこの村は子持ちの独身男はいささか多いいんだべや、ハハハ。」

 道理で子供が多い割には母親の姿があまり見ないと思ってはいたが。

 

「わしらドワッフの男は家で仕事をする者が多いいだでな、畑も有るだしウィザーもおるで、特に問題なく生活は出来とるべ。それに年を取って村に戻って来る女性が子供たちをまとめてくれておるで。」

 なんか家族体制が崩れているような成立しているような不思議な村であった。

 

 しかし考えてみれば母親が母乳を与えられないとなれば幼少時に母親が子供の面倒を見る必然性は少なくなる。

 それ故育児の分担が逆転するのも状況としては理解できる。

 

 しかし私やいやだな~っ。そうエマは思う。

 たとえお乳が出なかったとしてもやっぱり子供は自分の手で育てたいと思った。

 だって血肉を分けた自分の子供なんだから。

 

「まあ、下の街が出来たおかげでこの村にも木こりの寮が出来たでや、おかげで女たちは出稼ぎに出んでも、ここで木こりの仕事ができるようになったで、それもまたよかと思うで。」

 

 山間の村は早く日が暮れる。すでに太陽は山にかかり始めている。

 

 スカウスがエマ達を家に招き入れる。

 母屋に納屋を持つ堂々とした家であった。すべて木でできており屋根は植物の茎で葺いてある。

「ずいぶん立派なお家なんですね。」

「んだ、200年ほど前の家だで。その間代々暇にあかせて改修してきただべから。」

 

 エマのドームでは家の壁は石と土で作り屋根だけを木で葺いたものが多い。

 この村は木が豊富なので木で作られているのだろうとエマは思った。

 河原以外は平らな部分が殆どなく、平らな部分は皆畑として利用されている。

 斜面を削って平らな場所を作り家を建てその周りに実のなる植物を植えている。

 納屋には家畜も飼っているのだろう。斜面の上の方を見ると数頭のヤギが草を食べている。

 

 昼は放牧し夜は納屋で寝かせているのだろうか?

 納屋には鍛冶道具も置かれていた。ここの人達はなんでも自分たちで作るというのも本当のことらしい。

 軒を見ると沢山の魚が吊るされていた。エマのドームでは見たことのない魚で有った。

 

「この辺では魚が豊富なんですね。」

「ああ?いや、この辺では魚の方から村にやってくるだで。」

「魚の方から?」

「年に何度か魚が大量に川を上って来るだ、オラたつそれに罠を仕掛けて魚を捕るだ。

「ほれ見てみい川ん中沢山の魚が川上目指して泳いどるだべ。

 エマが川を見ると流れが急であるにも関わらず大きな魚が上流に向かって泳いでいた。

 

「この魚はどこへ向かっているんですか?」

「この山の奥の方に湖が有ってな、そこで産卵をするだ。」

「産卵した後はまた川を下るんですか?」

「いんや、産卵したらそれで終わりだ。産卵を終えたらこいつらはそこで全部が死ぬ。」

 

 産卵の為に川を上り産卵したら死ぬという性質がこの魚には有るみたいだった。

「死んだ魚はどうなるんですか?」

「ああ、腐って虫が湧くだからそれを食って小魚は大きくなる、大きくなって川を下って行くだ。」

 

 うわっ共食いだ、と思ったがそれはそれで自然の摂理なんだろう。

 

 子供を育てようとする親の精一杯の生き様なのかもしれないとエマは思った。

 そう考えれば家族だの親子だのと言う狭い範囲の考え方は無意味なのかもしれない。

 ドワッフ族の誰の子供でも育てるという考え方の方がこの世界の標準的な考え方なのかもしれない。

 

「家を建てたら木を植えるべや。家が壊れるまでに2回以上は伐採が出来っから、子供たちの家を作ることが出来んべ。家族が増えたら斜面を削って新しい家を建てんだ。そうやって徐々に村は大きくなってきたべや。」

「この家はずいぶん大きな家なんですね。」

 

「前は2家族10人が住んでいましたが今は分家して隣に家が建っていよるで。

 この一区画は全部我が家の親戚筋なんだあな。」

 この区画に建っている7,8軒の家の事らしい、さっき集まってきた子供たちは皆この区画に住んでいる子供たちなのだろう。

 

 村の規模の割には結構子供たちが多いのにエマは驚いていたのだ。

 

アクセスいただいてありがとうございます。

ドワッフ族の結婚観は現代とは大きく違っているようにおもえますが本当にそうでしょうか?

江戸時代の日本の結婚観はだいたいこんな感じだったそうですよ。 以下次号

 

感想やお便りをいただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ