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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
木こり達のドーム
32/211

木こりの仕事は筋肉が付きます

「エマさん起きて下さい、朝なの。」

 

 ピクシードームでの怠惰な生活に慣れてしまったエマは久しぶりに日の出と共に起きる。

「朝ご飯を食べに行くなの、エマさん。」

「え?昨日あんなに食べたのにまた食べに行くの?」

「当たり前なの、木こりは体力勝負なの。うんと食べてうんと力をだすなの。」

 

 そんなに食べてあんた良く太らないわね。

 

 ラフレアの体は確かに大きく太いが余分な脂肪は殆ど無く、出るところは出てくびれている所はくびれている。

 もっともくびれていてもあたしの肩幅よりうんと有るんだけどね。」

 

「え?何がですなの?」

「いいえ、何でもないわ。」

 胸なんかスイカですよスイカ。それを歩く度にブルンブルン震わせて……いや、筋肉だから脂肪より重たいんだよな……歩いているから迫力満点。

 

 ここの男はうかつに女に手を出したら撲殺される危険があるみたい……いやホント。

 

 朝から食堂は盛況であった。男も女も器を山盛りにして胃袋に掻き込んでいた。

 肉はどこでも貴重品なのであまり出ない、主体はパンと豆と野菜、それをスープかお茶で流し込む。

 食堂の真ん中にバケツのような容器が5,6個置いてあり勝手によそうのだ。

 

 食べた食器はカウンターに返せばそれでおしまい。

 みんな手早く食事を済まして次々と出て行く。

 

「おばちゃーん豆がなくなったぞ。」誰かが叫ぶ。

「あいよ~っ。」

 食堂のおばちゃんはやや年を取ったドワッフの女性だ。

 

 軽々とバケツを持って来る。バケツが変わるとたちまち人が群がる。

 カウンターの横に様々な模様の大きな布に名前が書かれた包みが並べられており、何人かはそれを持って外に出て行った、弁当らしい。

 

「よお、昨日はよく眠れたかい?」

 トレイを持ってヨセミナ姉妹がやってきた。トレイの皿には山盛りの食材が乗っている。

「それっぽっちで大丈夫かい?」

 姉がエマのトレイを見て聞いて来る。

 

「お姉さん達エマさんはまだ来たばかりなの、それが普通なの。」

「まあ、ラフレアも来たばかりの頃はそんなもんだったからな。そのうちあたしたちみたいな山盛りになるさ。

 

 うう~っ、あたしもここにいると胸でお手玉するようになるのかな~っ?

 

「それにしてもここは規模が大きくてにぎやかね。」

 エマのドームではこれだけ大きな規模の職場は無かった。

 工房と言ってもみんな家内工業程度で、住み込む場合は家族のように生活をするのが普通であったからだ。

 

「ここは出稼ぎに来る者の為の場所だからね。安心して仕事のできる環境が有るから外からたくさんの人を呼べるんだ。」

「そうだね~っ寮にしたってすごくいい部屋だし。」

 

「この寮のシステムを作ったのは今の所長の先代なんだよ。それまでそれぞれの工場が寮を用意していたんだが、先代が駆け回ってギルドを統一したんだ。」

「その結果様々な機材や人間が流動的に動けるようになってね、一気に生産性が上がったんだ。」

「だけどそんなに木材を作ってどうするの?私の居たドームではレンガ作りの家だからそんなに木材は使わなかったよ。」

「あたしもよく知らないんだけどさ、隣のチェンジャリー・ドームを通じてマイリージャドームに運ばれているらしいわね。」

 

 エマが仕事場につくとヨセミナ姉妹はもう用意が出来ていた。

 

 「これを付けるなの。」

 ラフレアが大きな前掛けを渡してくれた。

 胸からドレスの裾まですっぽり隠れ、ゆったりした袖も付いている。

 当然ラフレアの物は特別性らしい、あたしの倍くらいありそうだ。

 

 3メートル程の長さの丸太が馬車で運ばれてくると滑車とロープを使ってゆっくりと丸太を降ろし台座の上に乗せる。

 台座の下には丸い棒が並べられ台が自由に動くようになっていた。

 そのまま台を滑らしてノコ引き台の中に引き込む。

 

 台座の下に棒を突っ込む穴が有り、そこに丸太を突っ込みテコの要領で台座を上げると台座の下にくさびを挟み込み、コロの丸太を抜く。

 そこに台座全体と同じ長さの角材を流しくさびを外すと台が下がり木材の乗った台が固定される。

 のこぎりの高さに合わせて角材の高さを変えていけば順次板材を切り出していける訳だ。

 

 墨入れの人が来て今回必要な材料の切り出しに合わせて木材の切断面に墨を打つ。

 糸に墨を含ませて墨を打つ場所に合わせて糸をパチンとはじく。

 糸の当たった位置に墨の跡が残るのだ。

 

「おお~っきれいな線が引けた。」

 初めて見る光景にエマは感動していた。

 

「エマさんは墨打ちを見るのは初めて?」

「こうやって材木には線を引くんだね、初めて見たよ。」

 木材の切り出しなどおよそ縁のない世界に育ったエマにとっては珍しい光景であった。

 

「それじゃ切るか?」

 ヨセミナ姉妹は革の手袋をするとのこぎりのガイドの間に両持ちののこぎりを挟む。

「じゃああたしからだ。」

 

 姉がガイドまで引手を押し込んで引き始める。ギイ~ッと引くと次に反対側から妹が引く。

 二人で交互にのこぎりを引くとみるみる木材にのこぎりが食い込んでいく。

 

「エマさんこれを持つの。」

 ラフレアがエマにくさびを渡す。

 

「私が合図したら丸太の切断面に私と反対側の位置にこのくさびを打ち込むの。」

 エマは革の手袋にくさびと木槌を渡される。その間もヨセミナ兄弟ののこぎりは止まらない。

「いまなの。」

 

 エマはのこぎりで切られた木材の隙間にくさびを打ち込んだ。

 

「これを打っておかないと木が下がってきてのこぎりが動かなくなるの。」

 エマ達はのこぎりが切り進むにつれて次々とくさびを打ち込んで行く。

「よっしゃ~っ、切れた。」

 のこぎりが丸太を切り終わり最初の一枚を切り終わった。

 

「エマさんくさびを回収して木を持ち上げるの。」

 二人はくさびを集めて腰の袋に収めると丸太の前後に回って板を持ち上げる。

「最初は軽いけどこの次は重たいの。」

 

 丸太に引かれた墨の高さと同じ角材を丸太の下に追加する。これで墨と同じ高さの板材を切り出せる。

 今度の板材は厚さが15セルメ位ある。

「角材を作る為の厚さなの。これでも200ケルグ以上有るから普通の人では持てないの。」

 

 木の切断面にはくさびが打ち込んで有る為に少し隙間がある。

 ラフレアはそこにベルトの様な物を通して板を縛る。

 そこにフックを通して天井からつられている滑車につなぐ、ロープを引っ張ると簡単に持ち上がった。

 

 横に設置してある台車に乗せて次の加工場に運ぶ。

 

「これを縦切の加工場に持っていくの。」

 台車を押して隣の加工場に行くとすぐに戻って次の板を切る準備にかかる。

 切り出し台では二人が水を飲んでいた。すごい汗である。

 

「今切った木材のおがくずを掃除するなの。」

 2人は切り場の周りに飛び散ったおがくずを素早くホウキで履いて集める。

「仕事場はいつも綺麗にしておかないとみんなが怪我をするの。」

 

「それじゃあ次だ。」

「二人とも毎日これをやっているの?」

「そうよだからこんな体になれるのよ。」

 

 二人揃ってマスキュラーポーズを決める。

 

 な~にか~っ?ドワーフの女性にとって筋肉はステータスなのだろうか?

「エマさんもなってみてはいかがですか?」

 いきなり後ろからいつもの声が聞こえる。

 

「ひえっ!」

「お邪魔します。エマさんがしっかり仕事をこなしているのか興味がありまして。」

 ちゃんとやっているわよ!

「大体女性の背後に忍び足で近寄るなんてエチケットに反するわよ。」

「気配を消してなどいません。気配を感じられないのはエマさんが鈍いからではないでしょうか?」

 

 余分な事を言うな。

 

「それに何よその距離感は?」

 シドラは一歩分エマから離れて立っていた。

「はい、最近は学習しましてエマさんの足の届かない位置から話をしております。」

 

 意味が違うだろうが。

 

「製材と言うのも初めて見ました。なかなか工夫されていて無駄を排除していますね。」

「アンタ達は魔法を使えばすぐに出来るでしょう。」

「いいえ、人々が現在有る力を使って出来る最善の事をしているのは非常に重要な事だと思いますよ。」

 

「私達が使用している魔法も時が立てば人々の間でごく普通の事として使われる時代が来るでしょう。」

「嫌に確定的に言うのね。」

「はい、まだウィザーを始めて間が有りませんが人々の叡智は必ず魔法を追い抜いて行くと感じています。」

 なんだ?今日は珍しくやたらとまともな事を言ってる。

 

 昨日はいじけていたくせに。

 

アクセスいただいてありがとうございます。

製材所の仕事は結構大変な物の様です。

世間にある物は一つ一つが誰かによって作られています。

決して天から降って来る物ではありません。

この仕事場では若い男は目のやり場に困ります。 以下洗濯板の次号へ

 

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