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最強(弱)無双の魔法使いは無敵少女と旅をする。  作者: たけまこと
小人族のドーム
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ウィザーは覗きも出来ます

「いらっしゃいませ~っ」

 10才位の小柄な少女が駆け寄ってくるとシドラは少女にメモを渡した。

 

「怪我をした人がいるので湯治をお願いしたいと思いますが、よろしいですか?」

「ウィザーがお客さんを連れて来られたんですか?」

 

 少女は怪訝そうな顔をした。

 ここでもウィザーが人を直接助けることは実際めずらしい事らしい。

 それはエマのドームでも同じ事であった。

 おそらくエマが今の状況を見たとしても同じ印象を受けた事は間違いない。

 

「ちょっと隣のドームで怪我をしましてね、旅の途中だったのでこちらまで足を伸ばして治療をお願いしようと思いまして。」

「ウィザーが人間と一緒に旅をしているなんて珍しいですね。」

「それ程意外なこととは思いませんが、結構人間と交流するウィザーも多いと思いますが。」

 

 確かに人間と交流を持つウィザーも少なくないし、何かを頼まれて便宜を計ってくれる事も有る。

 しかし彼らの中の戒律にふれる部分では決して援助をしてくれない。

 人間のことは人間同士で解決することを基本とし決して仲介の労を取ることはない。

 ましてや旅の同伴をする例を少女は知らなかった。

 

 しかしそれ以上聞く必要も無いのでそのままにした。

 シドラはエマの手を取ると支えながら下に降ろす。

「立てますか?」

「ああ、なんとか大丈夫見たい。」

 シドラに支えられてなんとかエマは立つことができた。

 それでも足は悲鳴を上げている。歩けば結構辛い事になりそうであった。

 

「手足をこんなに……。痛みますか?」

 少女はそっとエマの手にふれる。

「そんなに熱は持っていませんね。これならもうお湯に入れますかね。」

 エマは旅館まで歩こうとしたが足の痛みに顔をしかめる。

 

「それでも一人で歩くのはまだ無理みたい。」

「お客さん、私の肩につかまってください。」

 エマの身長からすればサツキは脇の下に入るくらいの大きさの少女であった。

 

「だ、大丈夫?」

 見た目には華奢なので少し心配になってしまった。

「大丈夫ですよ。ピクシー族は体の割には力は強いんですから。」

 少女は屈託なく笑った。

 

 エマは少女に連れられて宿屋に入っていく。

「すぐに床をのべますから。」

 わらのようなものを編んだ床の部屋に連れられてきたエマに少女はすぐに布団を敷いてくれた。

 ピクシー村の習慣ではベッドを使わず直接床に布団を敷いて寝るようである。

 そういえば家に入る時に靴を脱がされた。

 

「骨折はしていないんですよね。熱取りの薬草を巻いていますから腫れはもう引いているようですね。」

 少女は寝かせたエマの手足をさわりながら言った。

「偉いわね、そんな小さいのによくそこまで分かるんですね。」

「湯治に来られるお客さんは結構怪我やなんかが多いですよ。

 骨折が無ければ早い目にぬるいお湯に浸かった方が治りは良いようですね。」

「それにピクシー族は小さいので幼く見られがちですが私はもうじき20になるんですよね。」

 

「げっ。」

 せいぜい10歳位にしか見えない少女が実はエマよりもずっと年上である事に衝撃を受けた。

「に、にじゅう?それじゃあ結婚は?」

 エマの村の基準からすれば17,8才で結婚するのが普通なのでつい聞いてしまった。

「いや~っ、なかなか声をかけてくれる人がおまへんで。」

 少女は恥ずかしそうに横を向く。

 

「ご、ごめんなさい。つい余計なことを聞いちゃって。」

 優しい人のようだが少し地味な印象が有った。それで声がかからなかったのかもしれない。エマは焦って謝る。

「いいんですよ。それよりまだ少し時間が有りますから食事の前にお風呂に入りますか?」

「そうね、旅の垢も落としたいし。」

 

「それでは私がお手伝い致しましょう。」

 部屋の隅から声がしたので二人して驚いて声の方を振り返る。

 ふたりはこの時まで存在を忘れていたシドラがいつの間にか部屋の隅に座っていたのだ。

 

「「い、いつの間に?」」

 

「おや?さっきからおりましたが気が付きませんでしたか?

 それより入浴をなさるんでしょう。私が背中をお流し致しましょう。」

「「ギロッ。」」

 

 シドラはふたりの三白眼に睨まれて怯んだ。

 

「あなたもお泊りになられるのですか?」

「い、いえ、私はウィザーですから。」

「それではお客さんの世話は私どもで致しますから。」

 

 そう言われてシドラは少女に宿から蹴りだされてしまった。

 

「そんな~っ、私はエマさんの世話をしようと思っただけなのに~っ。」

 シドラは宿の入口にすがりついてわめく。

「ま、ま、旦那さんお嬢様のお世話は宿屋の方でいたしますだから。」


 ドワッフ族の男の使用人にシドラは丁寧に追い返される。

 

「きゅい、きゅい~っ。」

「はい、仕方ありません。またドームの外に行きましょう。」

 断固たる旅館の対応にシドラはとぼとぼとドームの外に歩を進めた。

 

「それではお風呂に入りましょう。あ、私の名はサツキと呼んで下さい。」

「私の名はエマです。まだ15才なのでサツキさんがそんなにお姉さんだとは思わなくてごめんなさい。」

「エマさん15才なんですか?ずいぶん立派な体をしておいでなんですね。」

 まあ、ピクシー族に比べればどんな種族も立派な体に見えるだろうなどとエマはチラッと考えてしまった。

 

 確かにサツキの体はまるで子供のように小さいばかりか殆ど胸の膨らみもない。

 一方エマは村の中でもいささか育ちすぎといえるくらい背も高く胸も大きい。

 それがサツキと並ぶとまるで親子のようにすら見える。

 サツキに支えられて風呂場に着くと着替えを手伝ってくれた。

 

「うわっ、エマさん大きいですね。」

 

 服を脱いだエマを見てサツキは少し驚き気味に言った。

「やだ見ないでよ恥ずかしいから。」

「包帯を解きますからね。ああ、熱冷ましの薬草を貼っていたんですか。」

 サツキは服の裾を上げ紐で両袖を縛ってたくし上げるとエマを風呂につからせた。

 手足にお湯がしみてエマは顔をしかめる。

 

「アツツ。」

「ここは湯治用のぬるいお風呂ですが、しみますか?」

「い、いえもう大丈夫よ。」

 しみるのは最初だけですぐに心地よい暖かさに包まれる。

 

「お湯には肩まで浸からずになるべく長く入っていて下さい。

 後で三助さんを寄こしますけどなにか用事があったらそこの紐を引いてください。」

「ありがとうございます。でも多分大丈夫だと思いますよ。」

 お湯に浸かりながらエマは体の痛みと一緒に疲れもほぐれていくのを感じていた。

 

 

 

 その頃シドラはトボトボとドームの出口に向かって馬車を進めていた。

「いや、やっぱり気になります。エマさんは怪我をして身動きもままならない状態なのです。」

「きゅうう~っ。」

「旅館の娘がいるから大丈夫ですって?」

「いいえ、そんな事はありません。きっとエマさんは私の助けを欲しているはずです。」

 

「きゅきゅきゅ~う。」

「小さな親切大きなお世話ですって?」

「いやいやいや、そんな事はありません支えてあげなければ立つこともままならない状態なのですよ。」

 

「きゅいっきゅいい~っ。」

「きっと風呂に入っているから邪魔をするな?」

「おお、それこそ私の力が力を貸すべき時ではありませんか。一人で体を洗うことすら出来ないのですよ。」

 

「行きましょう、すぐに戻ってエマさんのお手伝いを。」

「きゅっきゅっきゅううう~っ」

 キューちゃんの必死の説得もむなしくシドラは急いで旅館に取って返した。

 

「どちらでしょう。エマさんはどちらで風呂に入っているのでしょうか?」

 シドラは旅館の周りをうろうろしながらエマの場所を探った。



アクセスいただいてありがとうございます。

ピクシー族の看板娘はやはり幼女でした。

ただ、やはり年齢はエマより少し上ですが……。


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