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84.嵐の後のアラシ☆

まだ終わってないといわんばかりに

地響きに似た歓声が鳴り止まない

耳鳴りが止まない

まだ会場にいるような感覚がやまない

暖かい空間と化していたドーム

私は一足先に会場を跡にしていた…。




楽屋にも聞こえるくらいの歓声

彼方はライブを終え控え室にいた

規制退場もなんのその

指示を出しているのにも関わらず

アンコールがここまで鳴り響く

彼方の耳にも聞こえている


アンコール!!アンコール!!


気持ちは乗り出して行きたい気分


 「いいのかよ…こんなとこ来て」


ドアの向こう側で声がする

彼方は拭ききれない汗を気持ち良さそうに拭う

汗が目に染みるのか痛そうに顔を歪ませる

はて?顔の見えない挙動不審者

 「さぁ…いいんじゃない?」

慌てている言葉が荒い女の声と変に冷静なまた女の声

 「だって冷静に考えたらやっぱやばいんじゃないのか…?」

やけに不安そうな女の子

 「だってここ入んなきゃ用事伝えらんないじゃん…もし見つかったら私達彼方の知り合いなんですぅ〜とか言っちゃえば平気平気!!」

呆気からかん言い放つ女の子

彼方の耳にも聞こえていた

 「即捕まるってそれじゃ。っていうか!!ここどこだよ…」

どう考えても関係者らしい声じゃない

楽屋にいる彼方はそう考えていた

不意に何かを思いついたかのように腰をあげる

そして汗だくのシャツをパタパタさせながら扉を開けた

途端目が合う

途端目が合う


 「あ………」


 「あ………」

お互い少し間が空くと

認識が遅れる


 「マコ…だよね?」


なんだか間の抜けた声が飛ぶ

ライブ後だからなのか少し声が掠れている

低い声にまた磨きがかかって…


 「サインください!!!!!!!!?」


ドンッッッッ!!!!!?

状況把握は彼女の方が早かった

というか彼方という人物の目の前できっと勝てる者はいない

 「っっって!!!!てめぇ!?…っ奈津美!!!!」

イキナリな突撃に言い返す言葉がこれしかない

まだマコの頭はクラクラしていた


腰にきた腰に…


そんな状況を彼方は言葉を出さずに見守る

というか挟む暇がないと言うか

イマイチ状況把握が出来てない彼方

満春の友達がどうしてここにいるのか

顔も知らない女の子もいる

それよりここは関係者以外立ち入り禁止のはず

 「愛してます!!思った以上に!!」

 「意味不明だからその告白!!」

 「だからサインください!!」

 「繋がってないって文章が…っ」

 「サインは何処がいいんですか?私、何も用意してません!!紙も鉛筆もあ、そうだ。いい事考え思いつきましたっ」

途端少し顔を赤らめる奈津美

 「んだよ…モジモジと」

 「ありました。サインできる取って置きの場所が…」

ますます顔を赤らめる奈津美

嫌な予感がした


 「私の唇にサインしてください…貴方のその音楽を奏でて止まないその唇で」


そういって静かに目を閉じる

 「あ、気にしないでください…初めてですけど、きっとサインより心に残ります」

 「うぐっぁぁぁぁぁあああ!!!馬鹿か!!!?お前…!!」

マコの身体という身体が硬直する

途端鳥肌が立ち両腕を温める

奈津美の言葉に突っ込まずにはいられないマコ



はっ…!!

とりあえずは何故ここにいるのかを伝えなくてはならない

そんな当たり前のことがマコは忘れかけていた

誰のせいとは言わないが

 「だから連れてきたくなかったんだよ…」

ペースが乱される

突然へこむマコに対応が追いつかない彼方

溜息さえ抑えられない

 「さっきまで冷静だったのは嘘だったのか?私を騙すためだったのか。ただ彼方に会いたかっただけなのか?先に帰ってろってあの時無理矢理でも追い返せばよかった!!私はどこまで馬鹿なんだ」

独り言を大声で叫ぶマコ

苦悩に苦悩を上乗せしながら

そんなマコを他所に何かに取り付かれたかのように彼方に近づく


 「付き合ってください…!!」


 「え…?」

彼方はまたもや対応に追われる

 「!!!っな、奈津美…!!」

ヨコシマなのか不明なオーラを保たせながら

彼方の手を握ろうとする

 「だって化粧室の場所分からないんです…」


ガンッッ!!


近くの壁に頭をぶつける

構わずキラキラオーラーを醸し出す

 「言い方紛らわしいんだよ…!!」

そんな私のツッコミにキッっと奈津美は睨む


 「何がいけないことなの!!好きな人の前に立つ時はいつも綺麗な自分を見て欲しいじゃない」


いけないことではない…

一応マコも女だ

そんなことまで分からないほどあの男家系に汚染されてはない

だけどなぁ〜〜〜…お前のその顔

気分は『ヒ・ロ・イ・ン☆』そう顔に書いてある

その表情が突っ込まなきゃいけないって思ってしまうんだよ!!


 「…その突き当りを右、だけど」


親切に教える彼方

 「はいっ…待っててくださいねぇっ〜」

ハートマークがつきそうな語尾

台風のように去っていった

 「はぁ〜」

 「プッ…!」

溜息と同時に隣でこらえ切れなくなった彼方が笑い出す

 「…っははははははははは!!!!」

突然、彼方の声が廊下に木霊する

何のことで笑っているのか分からないマコ

っていうかこっちは泣きたいくらい

 「いやっ…ごめんごめん」

 「何だよ」

意味不明なことでも自分のことで笑われているのはわかる

少しムッとした表情を見せる

 「なんだか…くくっ!いいコンビだと思って」

 「ンなわけないだろ!!!だいだいこんな事しに来たわけじゃないんだ」

ハッ!!っと目を見開く

 「そうだよ!!こんなことしに来たんじゃないんだよ…」

自分でも忘れていたと言わんばかりのリアクションに

彼方はまた笑いそうになった


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