表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/93

8.誰も知らない再会

多分足が随分疲れてる

これで何件目なんだろう…。

溜息は出てこない…だって出したってこの流れは止められない

 「おっ!!ちょっと待ってくれよ。なぁ?この服良いんじゃないの?」

まだ太陽が真上にあるこの時間

昼間だからみんな学校人並みは緩やかだと思ったら

今日は紛れもない日曜日である

顔にこそ出さないけど私は人混みが嫌い

だけど何故かマコはつまんないだろうに私を連れて買い物に来てる

何が面白いんだろう自分と一緒に来て

 「この色といいこのデザイン!!やばいマジで私好みじゃん」

 「………。」

端から見たらガラスにへばりついてる様な形になっている

分かりやすい欲しがり方だ

そしてこうなるとマコはうるさくなる

 「これマジ欲しい!惚れた!!値段は…1万円!!?とんで2千円だよ。キィーーッ!!何でこんなに高いんだよ!!あり得ねぇって」

マコは本当にガラスにへばりつき始めた

もうここまでくれば奈津実化イコール誰にも止められない

周りで見てる人たちの事なんてお構いなし

 「うしっ!!こうなったら店員に直接交渉だ!!それで聞かなかったら暴動だ!!」

怠慢と言う言葉で周りに歩いてる人たちが振り返った

止まらないだろうな…こうなると

あまり重大なことにとらえていない私は呑気に壁に背中を預ける

様子をうかがうと鼻息が地面に届く位の迫力でお店へと入っていく

早くて10分…店員が恐れをなして値下げする場合

遅くて2時間…店長を呼んでお互い融通がきかなくなり暴動を起こす場合

…今のところお店の方は静かだ…

視線だけで様子をうかがっていると気のせいか

違う方向から悲鳴らしき絶叫が聞こえてくる

この雑踏の中一つや二つ絶叫あっても不思議じゃないか

昼下がりの開放的な時間だから

 「きゃーーーーーーっ!!」

 「ちょっと待って!!マジそれ本当!!!?何処に???」

目の前で3人組女の子が通り過ぎる

きっとこれが原因だったのだろう

時計を見てもう15分

答えは…『暴動』だな

店内を覗き込もう

と思った矢先に遠くの方から色んな絶叫が飛び交う

一緒に地響きもしている気がする

どうやら原因はこれだけじゃないらしい

 


目の前を通り過ぎた女の子達は声のする方へと走っていく

 「えっ!!…まさか本当に!?」

 「あっ、ち、ちょっと待ってよ!!私も見たぁいー!!」

遠くから聞こえる声いわゆる黄色い声で駆けていった

えっ…会話の節々に聞こえる『カナタ』という言葉

 「あぁ…今日は散々だなぁー」

考えに更けていると今度は怪しい姿の男の人が目に入った

いかにも変質者と言わんばかりの全身黒ずくめ

黒い帽子を深くかぶりサングラスをかけ長めのコートを着ていた

 「事務所の帰りにこんな…」

何か独り言をしゃべっていた

聞こえてこないから分からないけど

これからのことを私は一部始終まるで観客のように見ていた

だってマコを待ってなきゃいけない長くなるだろうけど

背中を預けた壁に頭も預ける 

 「ねぇ!こっちの方に行ったって噂だけど」

声がした方へと視線を向けると女子高生が叫んでる

あまりの大きな声にビックリしたのだが男は気付いてないらしい

まだ怪しい独り言をつぶやいている

 「まったくこれからどうやって…」

 「噂によればさ、黒いサングラスに帽子と長めのコート」

さっきより2,3人増えこっちへと向かってきていた

 「ちくしょう…まいったなぁ」

自分の世界に入っている黒ずくめ男

私の前をちょっと過ぎたところで再び耳をつんざくような叫び声が聞こえる

 「きゃーーーーーーーっ!!!見つけた彼方いたぁ!!」

私の目の前で黒ずくめの男は声にビクッと過剰に反応した

と、同時に歩行中の人がザワザワと騒ぎ立て始める

一種のお祭り騒ぎへと一変

なんの騒ぎだと次々とお店から覗かせる客

気付くと私から見て左の方から地響きが聞こえ始めていた

まばたきをするたびにどんどん増えていく人の固まり

それは群をなして徐々に徐々に加速していた

そして私の目の前で何故か慌てふためく男

一つのコメディを見ているみたいだ

 「うわっ…やべっ!!」

そう言うや否や思いっきり私の方に突進してきた

「うわっっ!!!」

 「えっ――………!!」

ドッシーーーーー〜〜〜〜ン!!



周り一体に派手な音が流れる

傍観者としてみていた私に避ける余裕はなかった

一瞬頭が真っ白な状態におちいった 

見事に2人とも地面に激突

幸いバックが命を守ってくれたらしい

というか何が起きたのかまったく分からない状態になっていた

目に浮かぶ星のマークは消え去り

フッと我に返ると黒ずくめの男は私に覆い被さっている

 「…ったたたたぁ」

男も我に返ったのか身体を動かし始めた

男が動くたびに埃が鼻につく

きっと今の一件で埃が舞っているのだろう

 「ぃってぇ…。今度は一体なんなんだぁ?」

動かれると…

 「ゴホッゴホッ!!ゴホッゴホッ!!」

気付いていない男の下

我慢できないほどの砂埃を吸ってむせていた

 「ケホッ…ゴホ!!ゴホゴホゴホッ!!」

 「…………うわっ!!?ご、ごめん!!」

やっと状況を把握できたらしく私は解放された

息を落ち着かせてゆっくりと身体を起こす

と、すぐそこに帽子とサングラスを外したさっきの男が顔を覗いてきた

彼方……この人だ。

ちらほら聞こえてきていた『カナタ』って言葉やっぱり

 「ほ、本当マジゴメン!!」

こんなとこいるわけないって思ったけど

 「…いえ」

その場で土下座するんじゃないかという勢いで頭を下げる

 「本当に大丈夫です…」

 「大丈夫って…所々擦りむいてるし…ってあれ?君…」

何か言いかけた途端また女子高生の声があがる

男はっていうか彼方は早く危険を察知した

 「わっ!!こんなことやってる場合じゃ…」

声が聞こえたと同時にまた焦り始めた

 「確か、ここら辺から声が聞こえたような…」

不意をつかれ女子高生はすぐ側まで来ていた

男は今までにないくらいの驚きを見せる

 「っっっ…!!!!」

…っえ???!何…

どっかに引っ張られたかのような感じがした

 


「ここかなっ!?あれいないなぁ…こっちにはいないよ!!」

私にはチラッと女子高生の顔が見えた

しばらく経つと何人かの黄色い声が表通りを横切った

やがてちいさくなり聞こえなくなる

 「…行ったか?信じらんねぇーよ〜…こんなとこまで」

独り言が癖なのか一人呟く

なるほど…あぁ、やっと飲み込めた

今、この人が私を包み込むように抱えてる

引っ張られるような感覚だったけど

引っ張られたんだ…店と店との空いてる空間に

気付けば知りもしない段ボールの影いる

そしてさっきと一緒この人は気付いてないだろう

 「はぁ…こりゃ命がけ…ってうわっっ!!!?」

やっぱり…お約束だ

 「ごめん!…つい君も一緒に連れて来ちゃった」

あり得ないくらいのボケ

私から手を離す

ついでに足や手についた土をはたき落としてくれた

 「な、なんか本当ごめん…さっきから」

肩身狭いというか心なしか彼が小さく見えた

必死に私に頭を下げている

 「いえ…」

それ以外の言葉が見当たらなかった

 「……………。」

 「……何ですか?」

沈黙を不審に思い顔を上げると不思議そうな顔で考え込んでいた

 「ねぇ、俺見てなんにも思わないの?」

いきなりな質問を口に出す

 「何故?」

私は表情を変えず言い返す

するとまた不思議そうな顔をして見せた

 「それじゃ、私はこれで…」

でもそんなこと私には関係ない 

そう思い表通りに出ようと足を向けた

 「あっ!!ちょっと待って…」

出ていこうとする私を足止めされた

無理矢理行こうにも彼は腕を掴んでいた

 「…何か?」

無理に手を離そうともせず成り行きに任せた 

その強引な行動とは裏腹に彼方君は笑みを見せる

 「お詫びもかねて…お茶、しない?」

さっきのことがあったばかりなのにこんな事をして良いのか

芸能人でもこんなことをするのだろうか

と、思うながらも私はあっさりとその申し出に応じてしまった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ