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68.二人きり

なんだかこの展開多すぎ

そしてこの展開は何?

整理出来てる振りして出来てない

私は最近なんでいつも懲りずに泣いてるんだろう

後何回泣けば枯れるんだろう

こんなに泣き虫だったかなぁ

だけど、こんな晴れ晴れとして心地いいのははじめて

泣きっ面の自分も愛おしく思える


 「…ねぇ」


 「ん…?」

まだ彼方君は私の近くにいた

傍にいることが何より嬉しい

 「昔の私ってどんなんだった?」

 「何だよ、いきなり…」

それはそうだ

イキナリなのは知ってる

だけど聞き返す

 「いいから答えてよ」

 「そうだな…1と2どっちがいい?」

 「何それ…どういう意味?」

私の昔に分岐点なんてあったの

首をかしげる

 「答えないなら教えない…」

 「えっと、えっとじゃぁ…2で」

あまり考えずに2番を選ぶ


 「2番を選んだ貴方は…昔の貴方はとてもドジで人のやることにうるさくてお節介で泣き虫で我がままで…可愛いには程遠い騒がしい女の子でした」


心理テストか診断みたいな口調で得意げに言葉にする

 「何それ!!…いいとこなし」

てか、そんな人格が出来てる頃に一緒にいたか?

少しはいいこと言ってくれると思ったのに

お約束だよ…

こういうときにはいい事しか言わないのは

ってなに少女思考走ってるの…私

だけど私は思わずムカッと来た 

 「何で、1番はひかないの?」

 「何?選択肢って言うのはどっちかしかひいちゃいけないじゃないの?」

少し怒り気味の声

 「でも、最後に種明かしはあるでしょ?」

 「手品じゃないんだから」

その独り言は無視される


 「1を選んだ貴方は…いつも真っ直ぐで何事にも一生懸命で歌が大好きな明るく笑顔が絶えない…近所男の子に人気のある可愛い女の子でした…」


 「要は1番は長所、2番が短所でした…」

種明かししたら簡単なものだった

彼方君はニヤニヤしながら顔を向ける

 「何それ可愛いって言ったり可愛くないって言ったり」

 「あらら…ちゃんと聞いてた??!」

照れ隠しに言葉を荒げる私

乱暴な言葉で恥ずかしさを紛らわそうとしている

それを横目で見ながらまたニヤニヤとする


  「俺、近所の男の子…」


思わず顔が赤くなった

その事実があまりに恥ずかしすぎて頬を隠す

っていうかこれでどれほどの人が騙されているのだろう

さすが人前に出てるだけある

口説く上等文句というか…

私とは大違いで余裕をかます


顔を下に向ける

止まらなくなってない????!

彼方君のこの軽々しい口調

昔からこんなんだっけ?

でも医務室で再会した時はこんな感じだったかも


 「満春は?」


 「ん…」

うつむいたまま言葉を返す

 「俺の昔ってどんなんだった???」

 「い、いきなり言われたってわかんないよ」

その隣で苦笑していた

 「酷い…俺は、いきなりでも言ったのに」

 「……」

 「まぁ、いいや…変わりに」



さっきの騒がしさが嘘のように沈黙になる

少し不安になる私

淡々としゃべり倒していた奏汰君がいなくなる


 「…変わりにもう一度抱きしめてもいいかな?」


ふっと彼方君を見上げた

それはいつも見慣れていた昔の奏汰君

昔、よく見せていた奏汰君の照れた顔

ふわっと覆いかぶさる感覚はさっきと変わらず心地いい

私の中でまた切なさが押し寄せる


 「ありがと…あの時のまま好きでいてくれて」


心が痛んだ


奏汰君の声が私の耳に降って来る

どうしようもなく不安定にさせる

それは涙を誘わせる

言葉もなく私は腕の中で懸命に首を横に振る

途端、腕の強さが増した

少し苦しくなったけど我慢した

澄ますと聞こえる鼓動

私の鼓動より早かった

それは余裕がなかったことに気付かせてくれる

表情こそは平気な顔してるけど

本当は私と一緒なんだって分かった途端

腕の中で声なく笑った

負けないように腕の力を強くする

ふっと香る匂い

私だけが感じれる…

『昔のまま』なのが何より嬉しかった 


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