60.飲み込めないレタス
空は快晴遊びたい盛りの人達大集合
毎度おなじみ私たち
今日はお休み
完全週休二日制ラッキー!!
…なんて奈津美みたいなテンション
今日はさすがにお傍にいないけど
………
い、いないと思うけど
前科があるからなぁ〜…断言は出来ない
そう発言してみる今日この頃
私とマコは歩きつかれて行った先近くの喫茶店に入っていた
「うぃーーー!!さみぃ」
何だ始めの効果音は…
言葉にならないほど寒いという解釈をしておこう
もう寒さが身に染み始める季節
私たちはすっかり厚着をしていた
外は晴れ晴れなのになんで寒いんだろう
見た感じ夏とあまり変わりないように見えるけど
でも、日差しが細いかも…
窓から見た印象では…やっぱ寒そう?
暑くなったり、涼しくなったり、寒くなったり
人間は切り返しが大変だ
まぁ、この繰り返しがなければ私たちは
生きてるって実感できないんだろう
時が経ったって感じないんだろう
いつまでも同じ時の中でなんていられないんだから
季節は人間にとっていい刺激になる
なぜか焦りを覚える
何回かの季節を乗り越えていくことに
自分が何も変わってないんじゃないかって
繰り返していく日常の中で不安を抱く
この暑さと寒さとの往復の中で
人間はなんて単純で繊細な生き物なんだろう
私自身繊細な生き物で…
何も変わっていないんじゃないかって
私の見えない心の奥底でキューキュー唸ってる
コンコンッ…コンコンッ
何かを叩く音が聞こえる
私の視界に人差し指が目に入る
「……?」
そこを辿っていくとマコが終着となっていた
「なぁ…早くしろよ。」
マコは私自身に触れるんじゃなくて
机越しに合図をする
ちょっと焦りがちに机を小突いていた
「いつまで考えてんだよ。寒さしのぎで入ったけどマジでお腹すいちゃったんだってばさ…」
それは早く決めろって事?
同じページをジーッとみつめてる私をじれったく思ったみたい
慌てて適当なページをめくる
その一部始終をマコは呆れた瞳で見つめていた
痛い視線を肌に受けながら無理矢理決めた
そして店員さんを呼びマコとともに落ち着く
「…世の中平和だなぁ。」
その言葉に口にしてる水を吐き出しそうになった
少し咳き込んでしまう
「コホッ!いきなり何を言い出すの何を」
「これも故に奈津美がいないからだな!!」
そして何をそんなに威張っているのか
ふんぞり返って良からぬことを口にする
「何?今度はどうしたの?」
言葉にした瞬間マコは辺りを見渡す
「いや…奈津美がいないかとおもって」
悲しい習性だぁね
そんな怯えなくても…
「だってあいつうちらに会うたびニコニコしながら彼方のことばかり語り倒すんだぜ…あの復帰してからなんて特に、ウザイったらありゃしない!!何度も何度も聞いた話を」
マコは肘を突きながら文句タラタラ
「それは好きなんだから仕方ないよ…」
「…あっと」
「ん?」
途端マコが口ごもる
「ごめん…また無神経なこと言ってさ」
「え?あぁ」
何事かと思ったけど一瞬で理解する
マコがここまで恐縮するのは
決まって彼方君のことだ
「え〜…何、別に気にしないでよ」
手なんかおばさんっぽくなってしまった
それがわざとらしく見えてしまったのか
「だけどよ〜」
なんて弱気になってしまった
「本当大丈夫だって、あ!!ほらマコお腹空いてたでしょ?来た来た!!オニオンスープとサンドウィッチセット…」
店員さんに注目する
「あ、私のも来た。いいからいいから食べよ食べよ!!」
勢いよく自分の陣地に置かれたフレンチサラダをほお張る
私はあまりお腹空いてなかったから軽食を選んだ
元気を取りもどしたマコはサンドウィッチをほお張る
その姿を見て私は一安心する
「うん!あっさりしてておいしいここはまた来なきゃだね…」
「…ほぉ!!ひょうだな!!」
………ねぇ
口いっぱい入れすぎだよ
言葉遣い乱暴でも一応女の子でしょ
「私ね、本当吹っ切れたから。色々心配とかかけたけど…そんなに気にかけられちゃうとそっちのほうが辛い。逆に彼方君の話題とか避けて通られちゃうと」
私は下を向きながら手持ち無沙汰にフォークでレタスを刺す
だがらマコの表情が分からない
「それに最後の約束したんだ。『応援してる』ってだから影ながら応援したいって思ってる。昔のね!昔の私達にはもう戻れないけど時が過ぎればこれでいいんだって思えるから」
「………」
「だから、そんなに避けないで?ただの幼馴染からファンになっただけなんだから」
その言葉を口にすると刺していたレタスを食べる
ファンになっただけ…それ以外は何も変わらない
口にレタスを入れる
開いた時違和感があった
私、笑えてない…
無理矢理レタスを口に入れることで
表情、誤魔化そうとしてる
飲み込もうとしてる?
でもなかなかレタスが飲み込めない…
………
そんなまさか、私は心の中で笑う
だってマコに大丈夫ってさっき言った時自然に笑えてた
だけど下を向いた時顔が引きつった
自分の知らないところの私
…うぅん、大丈夫
「だから…しんみりしちゃったけどそういうことだから!!」
でも私は元気だった
気軽に言えた
それは忘れ始めてる証拠
私は心のそこから喜んだ
「そうか!!分かった」
マコも笑顔の戻る
いつもの強気な性格に戻る
「そう!!だからこの話はおしまい…そして気を遣った罰金としてこれ一個もらいまぁ〜す!」
マコの皿に乗ってるサンドウィッチを取り上げる
「あぁ〜〜〜〜!!何してんだよ!!お前」
「だから罰金〜♪」
私は容赦なく食べていく
「ははっ!…これもおいしいよ!!食べてみなよ」
目の前のサラダを差し出す
マコの瞳は鬼と化していた
「んぐぅっ〜〜〜!!全部食ってやる!!」
「やだ!!それはやめてぇ…」
慌てて取り上げようとしたけど
時すでに遅し
サラダは敵の手中に収まってしまった
マコのテリトリーの入ってもなお主張する
サンドウィッチも食べた…ミルクティーも飲んだ
それなのにレタスの味だけは鮮明に残っていた