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6.あなたは…?

目の前がこの男の人一色になった

 「君…もう大丈夫なの?」

少し焦った…ここまで顔近づけてくるとは思わなかったから

さっきまであの後ろの女性と一緒に口論してたとは思えないくらい

優しい口調で私の体調を心配してくれる

って本当にそうなのだろうか?

アップになりすぎて分からない

 「何してるのっ!彼方…!!」

顔は見えないが後ろの方から怒鳴り声がする

まぁ、当てつけみたいなものだろう…

私を巻き込まないで欲しい

仕方ないという感じで男の人は両手を挙げ振り向く

 「はいはい…今度は何?」

面倒くさそうに受け答えをする

その様子は先生に叱られてる問題児みたいな図

 「…いい!!彼方…貴方は芸能人なのよ!!もっと節度と自覚をもって行動しなさい!!?」

またこっちも教師みたいな説教を繰り広げる

 「それはいつも聞いてる。それともなぁに?…もしかして俺がいかがわしいことしてると思った訳?やきもちとか?」

ここまで来たら売り言葉に買い言葉って感じだ

 「彼方!!…ふざけないで!!…そうやって軽く1人のファンに近づかないでちょうだい!…これは貴方のマネージャーとして言ってるの。いつ何処で噂の波風がたつかなんて分からないのよ」

そんな発言に終止符を打つように低い声が間を割り込む

 「ねぇ、そうやって言ってんの…ファンの子聞いてんだけど。」

なっ!…と私に顔を向ける

気のせいか…いや違う

…確実に私、ここにいない方がいいかも知れない

っていうか巻き込まないで欲しい

思い立ったら即行動…私はベットから降りた

 「あれ、まだ寝てなくて大丈夫なの?」

 「平気です。」

しれっとした表情で振り向く

 「私は気にしないから大丈夫です…芸能人である貴方がなんだろうとどう考えてようと…気にせず続けてください。」

それだけ言うと帰るための身支度をする

速瀬という女の人と視線を交わすようにドアへと向かう

気付かないようなお辞儀をすると

 「お大事に」

甲高い冷たい言葉が返ってきた

それを無視するかのようにドアノブに手をかける 



その時私の後ろ、遠くの方から声がした

 「あっ!…ねぇ君!!」

さほど遠くない所から聞こえた声はいつの間にか間近にいた

ザワッッ!!

私の身体が何故か震え始める

…えっ、何!

咄嗟のことだからか心臓が灼けるように熱くなった

 「これっ…」

呼び止めると同時に肩を掴んだ

ドクンッッ!!!

 「さ、さわらないでっっ!!」

気付いたときには今までに出したことがないような大声

そして彼の手をはたいていた

さすがに驚いたのか瞳を大きく見開いていた

それに負けないほど私も動揺してる

 「はぁはぁ…」

今日の自分は変だ…何処かおかしい

 「あ、すみません…用件は?」

頑張って自然を装った

唖然としてたっていた彼を我に返らせる

 「えっ、あっ…こ、これ忘れ物」

そう言うと携帯を私に差し出す

見た感じまださっきのショックが抜け切れてないみたいだ

一度あいた瞳孔がまだ閉じてない感じ

当たり前なんだけど…

 「あ…りがとうございます。それじゃ」

渡された携帯を受け取ると医務室を後にした

その後ろで女性の声がした

きっと速瀬さんって人だろう

 「どうしたのかしら…?あの子。仮にも貴方を拒絶するなんて」

 「……。」

 「それはともかくとして彼方!!…今後の行動を改めなさい!!この怪我といいデビュー当時から付き添っているけど」

 「あぁ、俺…ライブで疲れてるんだわっ。じゃあ」

速瀬に背を向け歩き出す

それを見つめながら速瀬は心なしか肩を落とした

そして深いため息をもらす

その先はもう私のは分からなかった

正直私もかなり動揺してたから…

早足だったのがしだいにゆっくりとした歩調になった



さっきなんで振り払っちゃったんだろう


  

別に嫌だった訳じゃない

それは芸能人だからとかじゃなく一人の人間として

そりゃ当然初めてあった人だもの嫌う理由がない

以上にそんな嫌うほど人との接触は深くない

だから振り払いたくて振り払った訳でもない

今日はなんだかおかしい

さっきのこともだけど…あのライブが始まった時

何で私、頭が痛くなったんだろう

不意に額に当てる

別に熱があるわけでも頭痛持ちな訳でもなかった

ライブが始まった瞬間頭が割れるようだった

意識が遠くなってその後は分からない

そっとこめかみに手を当てる

…もう頭は痛くない

心臓もばくばくと暴れたりはしなかった

そう思うとますます不思議に感じられる

気が付くと帰りの電車はすぐそばまで来ていた…


 


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