51.お誘いの意図
そう、これで最後
ほんとに最後
マコの家から翌日帰ってきた私は
昨日決心したことを実行に移す
最後の決心を胸に掲げ携帯を取りだした
なんて事はない、ただ電話するだけなんだから
そうただの友達として
これは私が言わなきゃいけないことだから
速瀬さんが側からいなくなった今
きっとそれを告げてくれる人はきっといない
ここ最近の自分に終わりを告げるために
複雑な想いとは裏腹に
無情にも軽快に呼び出し音は鳴り出す
ドキン ドキン ドキンッ
プルルループルルループルルルー
ドキン ドキン ドキン
呼び出し音と心臓の音が交互に私を揺らす
音を重ねる度に冷静さを失っていく気がした
プルッ!?
「…!!」
心臓が飛び出してきたのかと思った
切羽詰まったかのように言葉を吐き出そうとした
「あっ!もしも…しぃ」
『留守番電話サービスセンターに接続します。発信音の後に…』
ホッとした気がした
そんな自分に苛立ちもあるけど
それ以上に安心感が勝る
「留守…かぁ」
ほんの僅かな時間緊張感から解放され
私は勢い良くベットへと身体を預けた
…何も上手く言ってない気がする
きっとそれは何か間違っている証拠
何処かを正さなくちゃいけない事実
何処?…何処から方向を間違えてしまったんだろう
答えが、真実が何処にあるか分からない
プルルルル!!
「わっ!!?」
条件反射で私はベットから跳ね起きた
と同時に枕元にあった携帯がバイブを鳴らしながら落下した
一体誰…何だろう
でも、そんなのきっと決まっている
ゆっくりと携帯を足元から拾って開く
とりあえず私は軽く上を羽織り玄関を後にする
上着ポケットには携帯をにじり込ませ
待ち合わせ場所は家近くの公園
だからそうは遠くなかった
「…よっ!」
目的の場所へとすんなりたどり着く
近いから当たり前の話なんだけど…
そこには普段着のマコが待っていた
「どうしたの?今朝別れたばっかりじゃん」
そう言わずにはいられなかった
マコはその問いには答えず話を切りだした
「これからボーリングいこーぜ!!」
「えっ…!!」
「なにそんなビックリしてんだよ・・・」
マコはさも不思議な顔で首を傾げる
「だっ…だって今からって!!」
開いた口が塞がらないとはこの状況
昨日お泊まりしたのは誰なのか分かってる?
他の誰でもない目の前の私なのよ…
「久々にやりたくなってさ…こうスカーンッとね!!」
転がす真似をしてみせる
…その音はミスってますけど
呆気にとられてる私に目もくれず歩いていく
「…ハハッ!!またまたスットライク!!」
はは…っ
呆気にとられてたけど
自分が一番楽しんでたりして
「見た見た!!…また取っちゃったよ」
「今日の満春は手強いぜっ」
て、手強いって
まるでいい勝負かのように…
マコに気付かれないように点数を見る
こう言っちゃいけないけど圧勝ですけど私
だって昔から言ってたなぁ
こう力を調節してやるスポーツは嫌いって
確かドッヂボールとか好きだって
…思い出したら笑えてきた
現にボーリングなんてマコと一度も
…………あれ
あれ…?
じゃぁ、どうして今ここにいるの?
「うがぁ!!!?…まただよ。普通に投げてるつもりが筋はあると思うんだけど」
異様な音をたてて転がった球は清々しいくらいに
ガーターゾーンにストライクする
「なぁ!!…満春、あたし間違っていないよなぁ!!…こう投げてんだよ!?これでいいんだろ?なんで満春みたいに上手く転がせねーんだろなぁ〜」
あまりの言葉の嵐に返す言葉が出てこない
マシンガントーク本人の態度がいきなり急変した
「ラ、ライバルに弱みを見せてどうする!!」
そう独り言とも言えない独り言を言うと嵐はやんだ
「い、良い試合じゃないか!!なぁ…あともうちょっとで満春追い抜くぜ!!」
極端!!
極端すぎて痛い…
だけどこんなマコの性格が私は安心する
こんなウダウダと悩んだときは特に
あっ…まさか。
ってか、私鈍感すぎ
まさかも何もないじゃない
思わず心から苦笑というものをしてしまった
だって不甲斐ないなぁ…って思って
自分が…情けなくて泣けてくる
良い親友を持ったとかそんな安っぽい言葉じゃ言い表せない
もっと大切な気持ちが私の中で芽生えつつある
「…ありがとうマコ」
「はぁ?…何言ってんだよっ!!もう勝利宣言かいっ…」
「違う違う…そんなんじゃないよ」
私はこぼれ落ちそうな涙を拭った
隠して隠してとりあえずマコにだけは見られたくなくて
止めろってマコに忠告されても私の癖
自分を隠すことに一生懸命だったけど
だけど今はマコを正面から見て言いたかった
私の間違っていたこと一つ
何だか分かった気がする
「…満春…」
とりあえず今は…
「マコ!!とりあえず今ははしゃぎまくるぞーーーーーっ!!!!?」
勢い良く私は立ち上がり
その弾みでジャンプをしてみた
色んなモヤモヤが一色になって空で弾けたような気がした