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49.愛し方

さっきまで交差するカップルや

肩車をしている親子連れがいたところまで帰って来た

適当なベンチを見つけ速瀬さんは座る

 「ごめんなさいね…いきなり声掛けてしまって迷惑じゃなかったかしら?」

ベンチに座る速瀬さん

軽くコンッ…とヒールをならし綺麗に足を組む

やはり何処か上品さが見える

私は手元にあるミルクティーを見て気が付いた

 「あ、飲み物何か買ってきますね…」

 「あ、いいの。気にしなくても…ありがとう」


あ、また微笑んだ…


どうも今日の速瀬さんは感じが違う

今まで私と言う存在自体が敵で

微笑むどころか真顔の速瀬さんさえ見たことない

いつも何処か威圧感を向けられてた気がしたから

私に向けられていた壁がないというか

何となく親近感を覚える

「座って」の合図なのか手のひらを席に向ける

それに従って静かに腰を落ち着かせた

 「あの、話って…」

なかなか話しを切り出さない

 「私、ここにいたらまずいんじゃないんですか?」

別に怒ってるわけじゃないっていうのは分かるんだけど

…でも、このままいたら

 「それは彼方のことを言ってるの?」

心臓が一跳ねした

心を読まれたのか

速瀬さんの口元でもう一回復唱された

咄嗟のことにうつむくしかなかった

 「大丈夫よ!!…私は担当から外れたわ。というか外して貰ったわ。今はさっきいた彼方より2,3下の子のマネージャー」

言い捨てるとため息をついた

 「…それはどういう」

 「言葉通りよ。愛想が尽きたから外れたの。始めからこうすれば良かったわ。」

速瀬さんらしくない言葉

って言っても私は速瀬さんのことを何も知らない

さっきまで威圧感があっていつもキリッとした人だと思ってだから

うぅん…だからかな

引き受けた仕事は投げ出すような人じゃないって 

 「実際、貴方と会ってから問題が色々あってね…運良く報道はされなかったものの新曲はいきなり白紙に戻したり、仕事をサボったりドタキャンしたりの連続、どんなに言ってもしても貴方の事ばかり」 


 「それで、あの子に担当が変わって2ヶ月・・・」


丁度私が別れを告げた時期と重なってる

私はどうしても気になることを訪ねた

 「それで彼方君は…?」

 「芸能活動休止」

 「…!!」

手に持っていたミルクティーを落としそうになった

 「なんて表向きだけど…それじゃすまないかもしれない」

 「―え?」

 「役に立たないなら切り捨てるだけ・・・解雇、契約破棄になるかもしれない」

言葉を無くす

…解雇。引退?

私の脳裏に数百回と繰り返される

その度に殴られたような感覚に陥る

 「…そ、そんな」

 「このまま立ち直れなかったらの場合だけど」

 「わ、たしは…」

 「分かっているわ…別れたんでしょう?」

目を丸くする半分

やっぱりっていう答えがあった

この人は何でもお見通しなんだから

 「本人から聞いてないけど…あれを見たら一目瞭然。それに貴方が彼に嘘をついたあの時の瞳で気付いたわ。」

 「……」

 「私はファンを大事にして欲しかった…数千数万といるファンに。いい子ぶってるって思われても例え偽善者と言われても彼方君が彼女たちを愛して欲しかった…それを私一人だけのものにするなんて重すぎる…それに比べると軽すぎるんです。昔約束を交わしたものなんて小さく思えるくらい」

私は彼方君に話したのと同じ事を話す


 「軽かったのかしら?」


意外な言葉に顔を上げる

 「貴方はただ哀れんでいるだけ…汚い部分、綺麗部分も見てきてしまったから。それがファンのため?同情してあげることが?なにも愛すって事は一つだけじゃない。色んな愛し方があるわ…貴方を想いながらファンを大事にすることだって出来るはずよ…」

 「……」

 「それを満春さんは拒否してしまっている…確かに彼方は貴方しか見えてないわ。馬鹿なくらい」

胸の奥が疼く

 「満春さんに対しての彼方が異性として『愛』なら、ファンの前での彼方は格好つけてだけど笑ってはしゃいで楽しそう…それが彼なりのスタイル『愛し方』なのかもしれない…。全身でファンに答えてるし与えてる…貴方を今も昔も傷つけた張本人達に…」

 「……」

 「逆に貴方はファンの気持ちばかりで彼方の事考えたことある?」

はいなんて返事できない

確かに口先では思っているって言っても

何故かそれは嘘のような気がする

 「貴方は状況に流されているだけ…もっと視野を広げたら色んな事が見えてくるわ。きっと」

 「それは私も一緒だったんだけど」

 「…え?」

言葉は思考に遮られた

速瀬さんの言葉

 「まぁ、いいわ…これで話しはおしまい。つき合わせちゃって悪かったわね」

今回何度目かの微笑み

私には引っかかっていることがあった

 「あの、最後に一つだけ…」

 「何かしら?」

 「何故、…あ、いえ何でもないです」

改めて聞きたくなった


本当に担当から外れたんですか…?


言葉は何故か口に出来なかった

速瀬さんの言った事って

今でも彼方君の事を思っていってる言葉にしか

まだ…彼の担当から

まるで…外れてないような言い方だから



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