28.気持ちの整理
目先100メートルにある家に隠れる
だけど私の方が言わんばかりに輝きを放ってい太陽
徐々に傾き夕日へと変わり始める
退屈だった授業は終わり下校時間
頑張りたい生徒は部活に力を移す
怠け者のとはあえて言わずに帰宅する人は
一緒校門に向かっていた
「奈津実が言ってた情報、ホントなのかな?」
「…え」
いきなりの問いかけに
私は不意に見ていた夕日から視線を外す
「ほら、朝言ってたこと」
…核心をつかれた
あまり考えたくないことだった
思わず目線が足元に
「本当なのかな?…彼女がいるなんて」
「………。」
「だいたいそう言う情報とか何処で仕入れてくんのか知んないけど…ガセじゃないんだよなぁ日々冗談で生きてるような奴だけど…根拠のないことは言わないんだよ不思議と」
自然とマコの腕は組まれる
「んまぁ、最後らへんはガセなんだろうけど…だってさ」
組んでいた腕を解き
いきなり前を歩いていた私の前に立ちはだかる
突然のことに私は立ち止まってしまった
「んもう!!聞いて聞いて…彼方に恋人発覚だってぇ!!ネットで調べたらその光景を見た人目撃者多数なんだってぇ☆…彼方ったらとうとうその気になったのねぇ…そんな堂々と報道しなくたっていいのに!!…んもう、奈津実ちゃん困っちゃう!!でもね、安心して…こんな可愛くないこと言ってるけど本当は嬉しいの。…しっかり貴方の気持ち受け取ったわ!!いつでも貴方の奈津美がお慕いしておりますぅ」
身振り手振り奈津実の物まねをする
はっきりいって本人じゃないかって位
しっかり似てると思わせるのがさすがマコ
あまりにもそっくりで
気付いたら笑ってしまっていた
自然と目尻が下がる
「あっ!そんなに似てた?奈津実の真似!!ってか、言われても全然うれしかないぁーっ…」
微妙な表情をしながら元いた場所へと戻る
だがそんな釈然としない顔が一瞬にして変わった
「満春さ、この話聞いたときから少し元気なかった感じだったろ?…気にしてんのかなって思ってたんだ。勝手な考えなんだけど」
誤魔化すように頬を掻くマコ
照れ隠しにも見えた
「でもまぁ…奈津美には悪いけどなんの証拠もなし根も葉のない噂だと思うよ。もしくは」
「………。」
マコの口が止まる
…ん?マコがこっちを一瞬見たような気がした
気のせいだったのかマコの視線は全く逆の方向を向いていた
嘘を隠せない人がとる行動って馬鹿っぽい
こんなにもわざとらしく見えてしまう
何がでも言いたかったんだろう…
「…何でもない。」
そう言いながら軽くスキップ私の2歩先を歩いた
最近嫌と言うくらいお母さんとマコが会話していたことが頭から離れなかった
一体何だろうって…冷静になればなるほど
頭の中で分析を開始する
…6年前、失った記憶、そして何故か関係のない彼方君まで
ずっと頭の中で渦を巻いてた
だけど感情を表に出さない私が元気がないことに気付いてくれた
言われるとそうだったことに気付く
そんな私を気遣ってくれた
分かりにくい私の気持ちを誰よりも早めに気付いてくれる
知ってる上でマコなりに元気にさせようと気遣ってくれる
過去や噂やあの夜の出来事…何より
目の前にいるマコが真実だった
知っていたはずなのに
誰よりも不器用で誰よりも正直で真っ直ぐ…
マコ達が何を隠そうとしているのかは分からない
だけどきっと私から聞かなくてもいつか2人から話してくれる
その時を待っていることにする
ありがとう…
私は2歩先のマコの後ろをそんなことを想いながら歩いていた