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2.歌が好きな女の子       

私の頭の上でまた、モヤがかかる

全体的に真っ白で何もない感じ

深い深い霧の中に逃げ場を見失っているような様な感覚

また自分の体も濃い霧で見えなくなっていた

この感覚…また

いつもの夢、別に怖くないから冷静に物事をとらえていた

 「ママぁ…ねぇママママ?この人達って歌うたうの大好きな人たちなのぉ?」

今日は男の子はいない…代わりに女の子の母親と思われる人が姿を現す

 「そうなんだぁ!やっぱり奏汰くんと一緒なんだ!!…ねぇ、ママ?この人達この前も見た…どうしていつも歌ってるの?」

女の子は消えたり現れたりを繰り返していた

まるで瞬間移動をしているかのように

私の視界を遮ってうろちょろと…

 「お仕事?お仕事でお歌うたえるの!!…すごいすごい!!だってお歌は人を幸せにする力があるんだよ!…あたし奏汰君が歌うと嬉しいもん。」

そしてまた消えた…

 「あっ!!この人…この前も出た!いつも歌うたえて、テレビであたし達を幸せにしてくれるんだぁ」

うっすらと見える女の子は屈託なく笑い飛び跳ねていた

すると、いつも夢で出てくる男の子が姿を現した

 「あっ!奏汰君!!」

女の子は迷うことなく男の子の方へと駆け寄った

そして手を取りジャンプしてみせる

 「ねぇねぇ!奏汰君さっきテレビ見てたの!!…それでねそれでね考えたんだ!奏汰君、将来  絶対歌手にだよ!!…あたし奏汰君のお歌好きだし、それにテレビに出ると会えないときでも会える…」

フッと見た女の子の顔がかげった

その途端溢れんばかりの涙が男の子の頬を伝った

 「うっ、うぅ…うわぁぁぁぁぁーーーーーんっ!!!」

耳が壊れるんじゃないかと思うほどの泣き声が辺りをこだました

堰を切りながらしゃべる

 「ぼ、僕のおうち…お引っ越しするんだ…。」

視線はいつまでも下を向き、一直線に零れる涙は留まることを知らない

でも、その一言だけで十分理解できる

 「えっ…何それ、お引越しするの?お引越しって遠くに行くこと?嫌だ…そんなのやだ、嫌だ!!やだやだやだぁ…」

次から次へと涙が落ちては落ちては

真っ白な空間はなにもなかったかのように涙を吸い込んでいく

はち切れんばかりの女の子の表情は悲しさで歪んでいた

 「やだ…やだよぅ!!やだやだ…」

涙は白い空間で無と化す

 「いやっやだもん!・・・いやだぁぁぁーーっ!!!!」

姿もない少女の声だけが空間をこだました  




………。

 「…はっ!!?」

な、何…今の

いつの間にか寝ていたベットから跳ね起きていた

夢の中だけど何故か鮮明に思い出せる

声はすぐそこまで届いていた気がする

だけど、泣き出した女の子が目の前にいるようなそんな錯覚が起きた

私は目が覚めたばかりの瞼を動かせずにいた

瞬きするのを忘れ現実か夢かただ一点を凝視する

しばらくしてベットから腰を上げカーテンへと手をかけた

少し光が漏れているところに手を伸ばし一気に開ける

外はすっかりおはよう体制が整われていた

何の夢だったか思い出せない…

そのせいなのか重くなった頭を軽く振り制服に着替え階段を下りる

 「あら、お早う…」

「おはよう」

お母さんと心地いい匂いが私を迎えてくれた

フライパンにはオムレツらしきものが見え隠れする

テーブルにはサラダとヨーグルトが規則正しく置かれていた

だけど私は見送るだけで玄関へと直進した

 「満春、ご飯は?」

 「いらない」

それだけいうとドアノブを回した

 「そう…いってらっしゃい」

大抵これが日常茶飯事

これ以上の会話があまりない

私の家は気のせいか冷めてる

例えばさっきの場合お母さんというのはきっとうるさく言うものだと思う

だけど我が家はそれをすんなりと受け入れてくれる

私の我が儘や考えを簡単に承知してくれる

別に学校に間に合わない訳じゃないって知ってるのに

さびしいとは思わないけど昔からこんなだったのかと時々思う


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