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13.握る手

この前と同じ喫茶店

今日は朝からちょっと曇りがちの空

にも関わらず絶える様子がない人並み

まぁ、洗濯物とか気にするような年代の人は通ってないけど

喫茶の窓際に写る街を見ながらふけっていた

この前話したマコに…



今日会うことも知ってる

正直に言ったらマコが言うには

『目玉が飛び出しそうなほど驚いた!!』だそうだ

だけどすんなり私のこと理解してくれた

はっきり言って最近のマコはおかしい

この件もそうだし

だけどもう無駄な詮索はしたくない無理矢理そう思うことにした

最近、頭痛の回数が多くなってきた

風邪かな???って思ってはいるけど

原因はきっと考えすぎ

今日は珍しくそんな症状がなく普段の私を満喫してる


喫茶店でミルクティーをかき混ぜてる私

まだ来ない彼方君を待っていた

あの部屋で電話を掛けた時この約束をした

あれから彼方君と呼ぶことにした

別にそんな親しい仲じゃないけど彼のことをイチイチなんて呼べばいいのか

なんてそんな漫画じゃあるまいし…

これって決めてしまえばもうそれで決定なのだ


だけど彼方君の電話を取った時の反応が忘れられない

テレビで写ってるとおりの営業で出ればいいのに

焦って取ったのか声がうわずっていた

余程、電話なんて来ないって思ってたのか

するわけないと判断されていたのか…

それともどの女からなのか分からない位教えていたのか…



とりあえずは

初対面医務室での出会いと先日偶然出会ったのひっくるめて

あれから随分印象が変わった…



待ち合わせ時間から20分過ぎ

周りの声に敏感になり始める

時計の針が気になる、人が歩く足音も気になる

待った?…って言う声にもいちいち反応する



 「ゴメン!!…遅れた」

フッと視線を向けると怪しい男が立っていた

…ますます怪しい格好になったと言うべきか

変装するなら彼はもっと美的センスを学ぶべき

普段着は普通なのに…

それとも遊んでいるのか?

通行人は怪しさ2倍男を見ては足早に去っていく

一瞬警察に突き出そうかと思った

それほど疑わしい装いをしている

きっとこの前の騒動を学習したからだろうけど

けど、この格好あんまりだ

というか…サングラスに帽子に髭なんて古い

今、渋谷でも変装しないで出かける芸能人が多い中

 「あれ?…聞こえてる?」

 「あっ、はい…」

なんて言っても前一回この姿見てるからあまり驚かない

ジロジロと見て行く人達はこの黒い物体が『彼方』だと知ったらどうなるのだろう

こんなカラスみたいな格好でも抱きついてきたりするのだろうか

キャーキャーするのだろうか

私にはあまり感情が顔に出ないから

きっとこんなこと思われてるのを微塵も感じてないだろう

 「あ、やっと返事した…」

反応が返ってきて安心したらしい

 「こんにちわ」

挨拶をする

 「えっと、確か約束したよね…」

なぜか今更な事を言う彼方

私はミルクティーを口に含ませながら頷く

「…あの」

 「……ん?何」

軽く営業スマイルで顔を眺めてくる

 「一般人がお邪魔して良いんですか?」

率直に思った疑問をぶつける

 「いいのいいの!!…今日速瀬さ…マネージャーいないから」

少し戸惑うかと思ったらサラッと答える

要はうるさいやつがいないと言いたいのか…

なるほど…っわ!?

 「やべっ!もう時間がないんだ…だから早くいこッ!!」

と、急に私の手を掴み席を立つ

そそくさと会計を済ませ外に出る

一人勝手に私の手を引っ張って歩いてると言う感じ



私より頭1,5個分大きい彼方君が目の前で歩いてる

太陽の見えなかった空はすっかり晴れ渡っていた

でも丁度良い位置で彼方君が光を遮ってくれる

眩しさから私を守っていた

光を独り占めにしながら私を引っ張る

透き通る色素の薄い髪

不意に掴まれた手のひらに力が入る



それは私の方からか彼の方からか分からない

時々振り返る彼方君の顔が懐かしい

とても懐かしい感じがして

私の凍ってしまった部分を溶かし始めていた

わざと今度は意識して彼の手を強く握る

握り返してくれるかドキドキした

…けど、分からない。

応えてくれたのか


心臓が暖かくなって優しい血液が流れ出す

それとは逆に彼の背中で

最近ずっと心の何処かで引っかかっていたもの

まだ拭い去れない不安と共に重みを増して崩れ始めていた

予感とも言いがたい運命みたいなざわめきを


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