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10.憧れの彼女

週明けの月曜日…やっぱり教室はそれぞれの話題で盛り上がっていた

2、3人のグループで固まり些細なことで話題の花を咲かせている

ここまではっきりと表面に出ていれば

グループの個性も出てくるものだ…

その中変わらずテンションの上がらない私達

細かく言えば『私』なのだが

 「んで、結局のとこ1万の服を8千にまけてもらった訳!!まぁ、本当はよ…5千円位にと思ったんだけど言葉でかわされちまったんだなぁ…」

この前のことを淡々としゃべる

その時周りで何が起きてたかも知らずに

 「って聞いてるか?!…あ、てか満春、何であの時先に帰っちゃったんだよ」

なんのリアクションもなかった私に質問が下る

 「いつ気付いたの?」

逆に簡潔に質問を仕返した

その会話の流れに気にとめることもなくマコは答えを言った

 「何時って…確か5時位」

あれから2時間か・・・

 「あのさ…」

私には気になったことが1つ

それをマコに聞くことにした

 「彼方ってどんな人?」

やっぱりあれからあの人の顔が頭から離れなかった

気のせいか…頭の中に彼がいること自然に受け止めている自分がいる

この短期間で私の脳は更に調子が悪くなってる

 「え…なんでそんなこと聞くんだ?」

一瞬笑顔が曇った気が…

瞬間だったから思わず見逃してしまう

 「ま、まぁ…いいけどよ!私もファンだし、こういうこと言うのもなんだけど…彼方の事は私じゃなくて奈津実の方がよく知ってると思う」

やっぱりどこかおかしい

言葉も途切れ途切れでどこかおぼつかない

 「まっ、そういうことだなっ!!」

そのまま先生も来てないのに黒板へと身体を向ける

それからマコはH.Rが始まるまで顔を向けることはなかった

以降先生が来るまで話することはなかった 




 『あっ…ごめん!今日これから用事があるんだ。悪いけど掃除当番変わってくれないかな?』

 『まったく仕様がないなぁ!!…今回だけだよ!!』

聞き慣れた声がマコの頭によみがえる

とても明るい声の持ち主

 『あ、またあの子だ…。』

休み時間移動中偶然通りかかったクラスから見える

あの時誰だか名前を知らなかったただ

いつも元気で可愛い子とクラス中広まっていた

周りの人を明るくさせる

周りの雰囲気やわらかくしてくれる

そんな噂をいつも耳にしていた

私は隣のクラスなのにだ

隣のクラスの人気者『彼女』を私自身いつしか目で追ってしまっていた

 『なぁーんて言うと思う!??…ははははっ』

悪戯じみた笑顔を浮かべながら友達とじゃれあっている

屈託なく微笑んで相手に罪悪感を持たせない

どちらかというと私は背が高いし、男子にも負けない力持ちだし

女っぽくもないし、言葉遣いだって男らしい

私の家は男所帯できてる母親は私がちっちゃいときに死んでるから

父親が兄貴、弟、私を育ててきたことになる

まぁ、自分のことはどうでもいいんだ

『彼女』のわたしとは正反対なところに惹かれてるのだろうと思う

あの子のようになりたい…違う

なれないのは分かってる容姿や雰囲気共に私じゃ無理

気が付けば兄と喧嘩して

言うことを聞かない弟を箒振り回して追いかけているようじゃ…

ただ単に…

自分自身にないものを持ってるあの娘が単純にうらやましい

それでも決まって寂しい顔をするときがあった



 『あ、お母さん?…』

決まってその娘は放課後電話をしていた

もちろん学校の所有物だ

お母さんって…

親となら家に帰れば幾らでも話せるのに…

しかもほぼ毎日のだ

家に掛けてるんじゃない…のか?

そんなに急ぎの用があるのかその時は疑問だった

 『あぁ…そうか、うん…じゃね。』

ガ、チャン…

ピピィ!!ピピィ!!ピピィ!!

その時は中学生今の子は持っているだろうけど

私もそうだけど『彼女』も携帯なんて持ってなかった

更に音はなり続ける

テレホンカードが持ち主を呼んでるのにも関わらず

満春は手を伸ばさなかった

そのまま消えてしまうんじゃないかというくらい悲しい顔をしていた

鳴っている音に気が付いてないのか

カードを忘れているのにも関わらず電話ボックスを後にする

 『あっ、…お、おいっ!!テレカ忘れてれるぞ!!』

 『えっ…!』 

駆け寄りテレカを差し出す

私は悪いとは思ったんだけど顔色をうかがう

 『あっ!忘れてた…ごめんね、ありがとう』

…一瞬泣いてるかと思ったけど、いつもの笑顔に戻っていた

見ていたこっちは痛々しかった信じらんないくらい泣きたい笑顔

 『あ、あのさ…大丈夫か?』

何かあったのか?…なんて聞く勇気は出なかった

でも思わず声かけずにはいられない

 『あ、ゴメン…余計なこと…』

 『いいのいいの!!そんな私気分悪い顔してた?』

表情を整えるかのように顔に手を乗せる

『彼女』はそう言って茶化していたがどこか寂しげ

そう言いながらいつもの笑顔に戻った

聞きたくても聞けなかった笑ってる印象が強かっただけに

この質問はどうしても出来なかった

彼女の作った笑顔さえ壊れてしまうような気がしたから

『どうしてさっきあんな悲しい顔してたんだ?』って

それは後…結果知ることになるけど

これが初めて『彼女』満春と話した言葉だった

 


マコが言うとおり後で奈津実に聞いてみた

何故か疑いの目を向けられたが…

本人も彼の話がしたかったのだろう

なんだかんだ言って最後は一人で盛り上がってしまった始末

アーティスト『彼方』本名不明

若干16歳でデビューが決まる

主にロックをが中心、最近歌番組にも出始めた

ひととき芸能界引退報道が流れたがそれも原因不明

引退騒動のとき一時活動停止

ただ今ツアー中、来月ニューシングル発売予定

そのシングルも入れて通算18枚

最近海外進出もあるっていう噂があるらしい

声、顔、奈津実がひいき目で見てるのもあるけど

悪いとこないらしい…

でもこの前ライブに行ったときに思った

お客さんが一人の男性に寄せる想い

『彼方』という人物だから一人一人をあんなにも夢中にさせる

それは生半可な気持ちじゃあそこまでにはならない

少なくとも私はそう思った



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