無限という一瞬。一瞬という無限。
ー君は何故泣いているんだい?
悲しくて泣いているのさ。
ーどうして悲しいんだい?
人が怖いんだ。
ーでも自分も怖い。
その通りだ。
ー人は怖い生き物なのか?
怖い。怖くて恐ろしい生き物だよ。
ーどうして?
あ、また曲がったよ。
ーあぁ。そうだね。
また被ってしまった。
ー曲がらなければ良かった?
いや、自分の判断だ。
ーじゃあ後悔していない?
後悔なんてしない。僕が進んでしまったから。
ーまた人が来たよ。
あの角を曲がろう。
ーそうだね。
あの人はきっと僕を蔑んでいる。
ーいいや、思い込みだよ。
そんな事ないさ。邪魔だと思ってる。
ーそうか。なら何故分かるんだい?
そんな気がするからさ。
ー人はそういう生き物なんだね。
あぁ。そうさ皆自分勝手なんだよ。
ー私はそうは思わないけどね。
へぇ。どうしてだい?
ーさぁ。そう思うからかな。
よく分からないな。
ーほら。余所見してたら人にぶつかるよ?
大丈夫さ。どうせ避けてくれるから。
ーそんな風に思うなよ。益々人をしんじられなくなるぞ。
一つ訊いてもいいかな?
ーあぁ。何でも言ってくれ。
僕はそんなに気持ち悪いかい?
ーいいや、そんな事ないさ。
どうしてそう言えるんだい?
ー人というのは皆同じだからさ。
いいや、違うよ。人は一人一人違うものさ。
ーそれこそどうして言えるんだい?
同じ人間なんて存在しないからさ。
ー答えになってないよ。
いや、これが答えであり真理さ。
ーなら私の意見も聴いてくれるかい?
あぁ。いくらでも聞いてやるよ。
ー確かに一人一人同じ顔をしている人間はいない。
あぁ。その通りだ。
ーだが、人という括りはみな同じなんだよ。
それがどうした?
ーみな同じ心臓がある。同じ魂がある。
そんな訳ないじゃないか。
ーいいや、同じだよ。何処かしらで必ずそれらは繋がっている。
どうしてそう言えるんだい?
ー人は進化して出来た生き物だからだ。
どういう意味だい?
ー遥か昔から脈々とそれらは受け継がれている。
だから同じだというのか?
ーそういう事でもないさ。最後まで聴いて欲しい。
あぁ。分かった。
ーこの地球が生まれ初めて生き物が生まれたその日からこれらは必然に出来た運命だったんだ。
そんなに大袈裟な事なのかい?
ーだが、これはとても大切な事なんだよ。
それが人が同じだって事とどう関係しているの?
ー神がこれらの運命を定められた、と言えば君は信じてくれるかい?
いいや、絶対に信じないね。そんな上手い話があってたまるか。
ーあぁ。この科学の時代。そんな事を言ったら頭が可笑しいと言われても仕方無い。
そうさ。よく分かってるじゃないか。
ーその偏見が人を恐れる根本じゃないのかい?
え?どういう意味?
ー科学で証明出来るものは数多く存在している。だけどそれでも証明出来ない事がある。人というのは実はまだまだ知られていない事の方が多いのさ。
本当に?
ーあぁ、そうさ。それを私は神の御業と呼んでいる。だがそれすらもいつかの未来に科学で証明されてしまうだろうけど。
じゃあ空とかも飛べるかな?
ーそう想い出来たのが飛行機さ。
へぇ。
ー人が夢想する事に実現出来ないものはない。
何だか格好いいね。
ーそれを証明するのが科学であり、創るのは人だ。
それで、話を戻すけど人が同じだって事は一体どういう事だい?
ーそうだな。まだそれを話していなかった。
うん。でも今はいいよ。また今度にしよう。
ー知りたくないのか?
いいや。凄く知りたい。
ーでは何故?
だって。いいや、何でもない。
ーそうか。じゃあもう終わろうか。
うん。また話を聞かせてよ。
ーその前に、もう準備は整ったのかい?
あぁ。もう大丈夫だよ。
ー今まで楽しかったか?
君と話せたこの一時だけはね。
ー私は君自信だよ。
いいや、君はキミさ。僕じゃない。
ーいい景色だな。
うん、とても。
ーもう、いいのかい?
充分だよ。
ーさようならは言った方がいい?
……。さようなら。
ーあぁ。行っといで。