桜が咲く季節に起こる悲劇(笑) 続編
──全てが始まり、全てが終わる。
「終わりか……」
一歩、一歩、また一歩。
「あと少しか……」
足を動かせば、着々と終わりに近付く。
次はいつ起きるか分からない。
そして、1つの入り口に近付く。
「……嫌だな。本当は──」
いや、この先は言っちゃダメだ。
『生きたい』だなんて……。
「止めだやめだ。泣こうか喚こうが、未来は変わらない」
入り口に立つと、中から2人の女性が現れた。
「お待ちしておりました。さ、中へどうぞ」
「……はい」
ただ俺は、黙って着いていく。
そして、俺は1つの場所に到着した。
「では、担当者をお連れしますので、少々お待ちください」
女性2人は一度頭を下げると、この場から足音も無く消えた。
1人になって何分、何秒経ったのか。けれど、俺の中ではその時間は、とてつもなく短く感じた。
「お待たせ。ごめんね、待たせて」
こんな事になった……俺をこんな目に遭わせた、諸悪の根源。
「そんな睨まなくても……僕も、出来れば君を指名したくなかったさ。けれど……」
「いいよ、別に」
相手の言葉を遮る。
俺は一度眼を瞑り、今までのことを思い出す。
これまで生きてきた軌跡を。
笑ったこと
怒ったこと
泣いたこと
そして、好きな人の顔。
「では、この中に入ってくれ」
目の前にあるのは、人間が一人だけ入れるポット。
至ってシンプルな設計で、装飾なんてものは何一つなく、丸い円状の下に、転がるのを防止するために板で固定されている程度。
「俺は、どれ位入ってるんだ?」
「さあね。コンピュータが決めるからね。少なくとも、十年は掛かると思っていい」
「分かった。それじゃあ、もし俺また逢えた時は、一発殴らせろ」
「一発でいいのかい?」
「………………スッキリするまで殴らせろ」
この茶化しは、俺にできる最高のボケかもしれない。
だから俺も、出来るだけ明るいように言った。
この会話を最後に、俺はポットの中に入る。
「それじゃあね」
「ああ……」
乾いたような声しか出ない中、俺の身体が鉄の様なみので縛られた。
なんでこんな機能付けた。
「それじゃあ、最後にプレゼントだ」
「え?」
諸悪の根源が横にずれると、そこには好きな人が。
「どうして……だって……」
卒業式があるハズなのに……。
「勝手に言って勝手に居なくならないでよ!! 自分だけで満足しないで!!」
すごく怒ってるように見える。
「まだ私の返事聞いてないでしょ!!??」
【時間が来ました。ポットを閉じます】
耳に直接響いた声。
そして、ポットの蓋が閉まられる……。
「私は貴方のことが……」
ポットが閉められた。だけど、言葉の続きは確かに言っていた。
──好きだよ
そう思った刹那、意識が刈り取られた。
☆☆☆☆☆☆☆
【ポットが開きます】
(うん……?)
耳に響いた声。
何だろう、すごく長い夢を見ていた気分だ。
「…………ぁっ!」
「ん……?」
なんだろう、今とてつもなく安心する声が聞こえた。
ゆっくりと眼を開ける。
「起きたんだねっ!」
「えっ……」
声が掠れたが、今はそんなことを気にしている暇もない。
俺は大きく跳びあがる。
「ど、どうしているんだ!?」
「どうしてって……君と一緒だからだよ」
「一緒……?」
どういうことだろう。
辺りを見渡すと、俺の隣りにもう1つポットがあった。
「お前まさか……!!」
「うん、そうだよ。君の思ってる通り」
どうして……どうして……!
「あの糞野郎は? いや、眠ってからどれくらい経った?」
「20年くらいは眠ってたよ」
「20年……」
まさかそんなにとは……いや、例え何年経とうが全部想定内か。
「それじゃあ、言いたい事はあるだろうけど、これだけは言わせて」
彼女は一度深呼吸をして、決意をした眼で俺に言った。
「私と」
「君のことがずっと好きだった。だから、付き合ってくれないか?」
「つき……え?」
言われる前に、俺が言ってやった。
「い、今、なんて……?」
「付き合って……くれ」
さっきのは勢いで言えたが、改まって言うのはすごく恥ずかしかった……。
「ど、どうして……どうして……」
俺だってほんの数秒前そう思っていたよ。
まあ違う意味で思ってたんだけど。
「…………ほ、本当なの?」
「本当だよ。自動販売機の前で言っただろ。『好きだ』って」
「じゃ、じゃあ……私を彼女にしてくれるんだよね……?」
「そして、俺はお前の彼氏さ」
「…………」
すごく嬉しかったのか、大粒の涙が流れ始めた。
「な、泣くなって」
この反応は予想外過ぎて、慌ててしまう。
「だって、嬉しいんだもん」
「……俺も、嬉しいよ」
頭に手を起き、優しく撫でる。
「さあ、恋人になったし、一旦外に出よう」
彼女の手を握り、外がどうなっているか考えてしまう。
20年後──つまり│現代──の世界。
技術の進歩に自然破壊……そして──
「さあ、行こう。まだ見ぬ……」
未来へ。明日へ。一秒先に広がる俺たちの時代へ。
「新しい世界へ!」
誰かが合図をした訳でもなく、俺たち2人は駆け出した。
──もう一度、やり直そう。
心の中で、そう思った。
続編書いたら『桜』関係ないという……