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一人用ということもあり、部屋はそれほど広くなかった。ちょうどビジネスホテルの部屋くらいの広さだ。ベッドは一つ、その向かいにソファが一つとガラステーブルがある。入り口と反対側には大きな窓が一つだけあり、窓際にはデスクと椅子、扉の隣には小さめのクローゼットがあった。
「志織はベッドで寝ていい。俺はここで寝るから」
正志が志織の隣に腰掛けた。
「でも、こんな所で寝たら……」
「大丈夫。ずっと床で寝てたんだ、ソファがあるだけでもありがたい」
皮肉でもなんでもなく、心からそう思っているような正志の口調に、志織の胸は痛んだ。
「そんな顔すんなって」
正志は呆れたような笑顔を浮かべた。
「俺は、お前が無事でいればそれでいいんだから。お前に何かあったら、俺も動けなくなるし」
「寝る場所はそんなに関係ないでしょ?」
「いや、関係ある。こんな所で寝て志織が体を痛めたら、追手が追いかけてきたときに逃げられないかもしれないだろ?」
ふざけた口調で言うと、正志はソファにごろんと横になった。
「昨日横になってないからうまく充電できなかったみたいで、今日はもう限界だ。俺はもう寝るけど、志織は?」
「シャワー浴びてからにするから、もう少し起きてるかな」
志織がソファから立ち上がると、正志はソファに足を乗せぐっと伸びをする。
「んー……そっか。じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
正志が目を閉じたのを見て、志織は寝支度をするため自分の荷物に手を伸ばした。