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ヒトガタ機械  作者:
54/74

7-3

 晴也は当然といった口調で正志の質問に答えた。

「父がまだNELにいる。それに、あの研究所のネットワークは、ここからも見られる」

「え?」

思いもかけない発言に、思わず志織は声を漏らした。

「NELの情報が、ここに漏れているんですか?」

「漏れているなんて失礼な。これでも私は、NELの研究員だ」

失礼な、と言いつつ、彼はまだ笑っている。

「そうなんですか? 研究員証は?」

「そんなもの、とうになくした。かなり前から、私はここで一人で研究することを許可されているからね」

あまりにも信憑性のない話だ。晴臣の息子がNEL研究員だったというのは聞いたことがあるが、就職後すぐすぐにやめてしまったと聞いていたし、研究員証がないなら彼の話を証明するものは何もない。彼が何らかの手法を使って、勝手にNELの情報を盗み見ていると考えたほうがしっくりくる。志織はそれ以上詳しく聞くのはやめた。

 その代わり彼女は、姿勢を正して晴也を見つめた。

「晴也さんに、お願いがあります」

「志織さんからお願いされるとはね。何でしょうか?」

わざとらしい口調に不愉快さを覚えるが、志織は気にしないようにして続けた。

「正志を、ここで引き取ってくれませんか」

「志織っ?」

正志がぎょっとして志織を見つめる。しかし彼女は正志を見ずに頭を下げた。

「お願いします。あそこを抜け出した以上、正志の居場所はないんです」

「じゃあ何故、君は正志くんを逃がしたんだ?」

面白がっている口調で晴也が問いかける。志織はゆっくりと顔を上げ、晴也と目を合わせた。

「正志は二十五年間も監禁されていました。ロボットとはいえ、感情を持っている以上、正志の心は完全に荒廃していたんです。でも、自己満足かもしれませんが、私が正志の管理担当になってから、兄は落ち着きを取り戻しました。それなのに、正志を壊そうとする人間はまだいたんです。しかも、そのせいで私の命が狙われた。もうあの場所には、私も兄も、いられなかったんです」

「あ、そう」

晴也は両手を弄びながら、興味なさげに返事をした。聞いておいてこの態度は何なのかと、晴也に対して苛立ちが募る。彼に助けを求めたのは間違いだったのではないかと、志織は思い始めていた。

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