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ヒトガタ機械  作者:
49/74

6-6

 いつのまにか寝てしまっていたようで、気がついた時には時計が八時近くを示していた。

「おはよう」

「ごめん、私、寝てた……?」

「熟睡してた」

正志はくすくすと笑うと、カップにわずかに残っていたコーヒーを飲みほした。

「朝食を食べたら、ここを出たほうがいい。店員さんが嫌そうな顔してた。俺はコーヒーしか飲まなかったし」

「だよね……」

混んでいなかったにせよ、一晩明かされたのは店としても迷惑だったろう。朝食はここで摂っていかないとあまりに申し訳ないので、今回は志織だけでなく正志も食事をすることにした。

 朝食セットの中から適当に選んだメニュー食べ終え、二人は朝の街に繰り出した。

「なんか、久しぶりに飯食ったから、変な感じ」

腹部を手でさすりながら、正志が苦笑する。

「体調悪くなってない?」

志織の言葉に、正志は怪訝そうに眉を寄せた。

「ああ……長らく食べてなかったけど、特に問題はないらしい」

「私、何か変なこと言った?」

「何でもないよ」

「何でもないって顔してない」

志織がきつい口調で問い詰める。正志は根負けしたのか、困ったような表情を浮かべた。

「二十五年間ずっと、物として扱われてきたから、『体調どう?』って聞かれるのが違和感あって」

ぐさりと胸に突き刺さった言葉に、表情が強張る。悟られまいと顔を逸らしたが、正志はそんな志織の頭をぽんと叩いた。

「そんな顔すること分かってたから、言わないでおこうとしたんだ」

「……ごめん」

志織は謝りつつ、ごまかすために作り笑顔を正志に向けた。しかしそれも正志にとってはお見通しだったらしく、呆れた視線を向けられる。

「謝るなら、そんな顔すんな。お前は昔から、ごまかすの苦手なんだから」

「最近は結構、本心分からないって言われるけど」

「職場の人間と俺を比較すんなよ。いつから志織のこと見てきたと思ってんだ」

正志が明るく笑ったのを見て、志織もようやく表情を緩ませた。

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