5-12
そこにいたのは、雪本と斎藤だった。
彼らは志織と正志の姿を見ると、驚いた表情を浮かべた。
「お前らっ……何故ここに?」
「あの……」
頭が真っ白になって言葉が浮かばない。口を開くものの声は出てこない。
「すみません」
正志が志織を押しのけて進み出た。ゆったりと二人に近寄っていくその背中には、余裕すら漂っている。彼が何をするつもりか分からず、志織は困惑した。
「俺、父に言われたんです。志織を頼むって」
正志が雪本に触れた瞬間、雪本が膝から崩れ落ちた。間髪入れずに斎藤にも触れると、斎藤も倒れこむ。
「マサにいっ?」
彼が何をしたのか分からず慌てて駆け寄ると、正志は志織を振り返ってにっこりと笑った。
「これで大丈夫」
「何したの?」
「ちょっとね」
正志は右手を掲げて見せた。
「ここから電気出せるんだ。検査結果読んで知ったんだけど、スタンガンみたいな役割果たすらしい」
「大丈夫なの?」
「スタンガンだから死にはしない」
正志は言うと、志織の手を握った。志織は思わず手を引いて体をこわばらせてしまう。
「……よっぽど意識しないと、電気出ないから」
正志はすっと真顔になって呟き、志織の腕を強く引っ張った。
「逃げるぞ」
正志に引っ張られ、志織は狭い通路を走り抜けた。