表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトガタ機械  作者:
40/74

5-9

 計画実行当日。彼女は正志の部屋に、服の入った大きめの鞄を持って行った。

「はい、これ。今のとちょっと違う服にしてみたけど、どう?」

「また買ってきてくれたのか?」

正志は苦笑して、檻の隙間から差し出される鞄を受け取った。

「またって言っても、ジャケットだけだよ?」

正志は早速鞄を開けると、紺色の上質なジャケットを取り出した。以前と同じように、時間限定で首と手の拘束を解く。彼はすぐに着ていた青いパーカーを脱ぎ、ジャケットを羽織った。しっかりとした生地のジャケットは、いつもラフな格好をしている正志が着ると、着せられているような感じが滲み出てしまっていた。

「どう?」

「なんかちょっと変」

志織がくすっと笑うと、正志は顔をしかめた。

「変ってどこが?」

「なんか、着慣れてないのがバレバレ」

「こんなにしっかりした服、着たことないからな。公の場所に行ったことなんてなかったから」

彼の言葉に、ずきりと胸が痛む。志織の表情が変わったのを見て、正志は慌てて言葉をつけたした。

「別に、そのこと気にしてるわけじゃないからな? ただ、着慣れてないって言うから理由言っただけで……」

「分かってるよ」

自分の声が思ったよりも辛そうで、志織は動揺して口を閉じた。

「志織? 大丈夫か?」

「……何が?」

「今日なんか、様子がおかしいぞ?」

「何ともないよ」

志織はそう言ったが、直後に首を振った。

「あ、違う。今日の夜に、NEL全体で点検作業があるの。それでちょっと緊張してるかな」

「点検作業?」

正志が初耳だというように首をかしげる。

「うん。年に一度のね。あちこちで警報が鳴るから、毎年のことなんだけどびっくりしちゃうの」

志織が苦笑してみせると、正志は心配そうに眉を寄せた。

「今日は何時まで仕事?」

「点検の時は休みだよ。でも、一人で帰るのは控えろって言われてるから、点検終わるまで帰れない」

「そうか……なら、点検の間、ここにいるか?」

願ってもない提案に、志織は表情を輝かせた。

「本当っ?」

「そんなに嬉しいのか?」

「あ……うん、まあね」

正志が嬉しそうに笑うのを見て、志織は曖昧な笑顔を浮かべた。点検の時の警報が少々怖いのは嘘ではなかったのだが、別に一人でもやり過ごせる。その時間に正志といられることは、計画を遂行する上で非常に好都合だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ