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檻に駆け寄ろうとした志織を、斎藤が羽交い絞めで引き留めた。
「危ないっ、さっきの暴れ方、見ていなかったのかっ」
「でも……」
斎藤を振りほどこうともがく志織を見て、壁際にいた重役たちは何かをこそこそと話しあっていた。そして、結論が出たのか一人がこちらに近づいてきた。
「斎藤、とりあえず一旦ここを出よう、正志の監視は先ほどまでのメンバーで行う」
「分かりました。高村くん、一旦ここを出よう」
「斎藤さん、彼に何が……」
「詳しく説明してやるから、一旦別の場所へ移るんだ、いいな?」
普段気弱な話し方をする彼の口調が厳しくなり、志織は抵抗するのをやめた。そのタイミングを待っていたかのように、何名かの重役たちがふたりの周りへ歩み寄る。
数名の重役たちに囲まれ志織の視界から正志の姿が消えた瞬間、再び正志の荒々しい咆哮が響き渡った。思わず正志のもとへ走り寄ろうとした志織の肩を、誰かが強く引いた。いつの間にかあけられていたドアから志織が引きずり出され、ドアが閉まるのと同時に、叫び声は途切れた。