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それから数日間、何も行動できずに時間だけが過ぎていった。いつまでも志織に護衛をつけておくこともできず、NELの警護もだんだん雑になっていった。一応ホテル住まいは続いていたものの、一人で行動しても小言を言われなくなっていった。そのことに志織は焦りを覚えていた。彼女自身の安全のためではない。NELが、今まで以上に正志の破壊にこれまで以上に力を注ぐのが目に見えていたからだ。
焦りは正志も感じていた。彼は自分が破壊されることよりも、自分のせいで志織が傷つけられることの方が気になって仕方がなかった。だが、いくら考えても、ここから逃げだす方法など考え付かなかった。
「早くしないと、もっと危険になっちゃうよ」
「ああ。でも、いい計画が……」
「賭けに出てもいいなら、方法はいくつかあるけど」
「駄目だ。もし捕まったら、志織がここにいられなくなる。ここだけじゃない。恐らくどこにも志織の居場所はなくなるぞ」
「そんなの、うまくいったときも同じでしょ」
マイクに拾われないように交わす会話は日々とげとげしくなり、危うく会話が録音されそうになったことも何回かあった。志織は多少の危険があっても逃げ出すべきだと思ったが、正志は完璧な計画でないと実行には移せないと言い張った。
しかし、監禁されている正志と違って、自由に動き回れる志織のほうが有利だった。志織は、正志にも内緒で、ある計画を実行することに決めた。
NEL全体の点検作業の日。それが、志織の立てた脱走計画の実行日だった。