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ヒトガタ機械  作者:
36/74

5-5

 松田と二人で部屋に入ると、正志は檻の中心で眠っていた。

「ここ数日、怖いくらいに大人しいんです。座り込んで、じっと宙を見つめて、まるで何かを考え込んでいるように……」

松田の台詞にドキリとしつつも、志織は表情を変えずに正志を見つめた。

「私のバイタルサインが彼に届いているそうですから、それを分析していたのかもしれません。私が彼の能力については説明しましたから、彼は今まで知らなかった自分の能力も知っています」

「そうでしたか。てっきり不調でも生じたのかと……」

松田が頷いた時、正志の体がピクリと動いた。何度か瞬きをすると目を開け、むくりと起き上がる。

「おはようございます」

松田が声をかけると、正志はこちらを振り向いた。その途端目を見開いてこちらへ駆け寄る。

「っ、志織?」

「マサにい、久しぶり。心配かけてごめんね?」

正志はぶんぶんと首を振った。

「いや、大丈夫だ。志織が徐々に回復してることは分かってた。それに……」

正志の表情がやや曇る。

「志織が危険な目に遭ったのは、俺のせいだしな」

「そんな顔しないでよ」

マサにいのせいじゃない、とは言えなかった。正志はきっと否定するだろうし……志織自身、殺されかけた原因は、正志にあると考えてしまっていた。

 松田がいるため脱出計画について話すことなどもちろんできず、志織は何とか二人きりになれないかと思案していた。

「松田さん、正志と二人にしていただけませんか?」

「駄目です」

彼女は即答した。

「あなたは以前、無断であの檻の中に入ったでしょう。あの後私と雪本さんは上から厳重注意を受けたんです。あなたも何度も注意されたでしょう?」

「……そうですね」

あの時あのようなことをしてしまった以上、正攻法で正志を二人きりになることは不可能だろう。逃げる計画を立てることもできない。それならば……。

 正志が暴れていないことを直接確かめられたので、二人は退室することにした。部屋を出る直前、志織は正志を振り返って片目を瞑って見せた。正志は一瞬はっとした表情をし、軽く頷いた。

 正攻法で二人きりになれないなら、危ない橋を渡るまでだ。

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