5-2
頭を下げ続ける正志に何とか顔を上げさせ、一旦床に座ってもらい、志織は正志に全てを話した。正志のことで新たに分かったことを、とりとめもないことから順に、能力のことや彼の停止条件のことまで、全てを。正志は目を閉じてそれを聞いていた。自分の停止条件が志織であると知ったときは目を見開いたが、口を挟まず最後まで静かに聞いていた。
「つまり……志織が危ない目に合ったのは、俺のせいということか」
全てを聞き終えた彼は、ぽつりと一言そう呟いた。否定することができず志織が黙り込むと、彼は志織を見上げて笑った。
「ごめんな、俺のせいで」
その笑顔があまりにも悲しげで、苦しげで、志織はただ黙って首を振った。胸が詰まり、「違う」という一言が出てこなかった。
「俺が、停止できれば、志織を楽にさせてやれるんだろうけどな……」
正志が視線を伏せる。
「そんなこと言わないでっ」
志織は思わず叫んだ。解錠する時間ももどかしく、隠し持っていた鍵で檻の鍵を開け、車椅子ごと檻の中に入る。驚いている正志のそばに崩れ落ちるように座り込み、彼を強く抱きしめた。
「お母さんが死んで、お父さんも死んで、マサにいが捕まって、ずっと独りだった……おばさんたちが育ててくれたけど、おばさんたちが私のことをよく思っていないのは分かってた。ずっと独りで、これからも独りだと思ってて……やっとまた会えたのに、そんなこと、言わないで……」
涙を必死にこらえながら告げると、正志の体が細かく震えた。
「志織?」
「マサにいしか、家族はいないんだから、いなくならないで……」
何故父が正志を作ったのか、何故志織が、正志がこんな目に合わなければいけないのか。それを解明するには、正志の存在が不可欠だった。