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彼は一旦言葉を切ると、じっと志織を見下ろした。
「……何ですか?」
「ここからが本題だ。何故、千堂くんが、君を殺そうとしたのか。解析の結果分かった、正志の情報のせいだ」
雪本はゆっくりと、意地の悪い笑みを浮かべた。
「正志の停止方法だよ」
「停止方法……」
血の気が引いていくのが自分でも分かった。つまりそれは、正志を殺す方法を見つけ出したということだ。正志がいなくなってしまう……いや、もしかしたら。
「今日は、いつですか?」
「君が殺されかけてから三日だ」
目覚めるまであまりにも長すぎる。三日もあれば、もう停止されているかもしれない。目の前が暗くなりかけるが、何とか意識を保って聞いた。
「正志は、正志はまだ……」
「まだ停止されていない」
その言葉に安堵のため息を吐いた。もう手遅れかと思ったのだ。
「正志の停止条件だが」
雪本は、志織の反応を気にせず続けた。
「高村くんが素晴らしい研究者なのは知っていたが、まさかあれほどの技術をもっているとは思っていなかったよ。君のお父さんは、間違いなく天才だ」
「……何が、言いたいんです?」
回りくどい言い方に、志織は眉をひそめた。雪本は、真顔になって志織を見つめた。
「正志の停止条件は、君だ」
「私、ですか……?」
意味が分からず首をかしげる。雪本はため息をついてから言い直した。
「つまり、君が正志を必要とする限り、正志は停止しない。言い換えれば、君が正志を必要としなくなれば、彼は停止する。例えば、君が死んだときだ」
言われたことの意味が分からず、志織は絶句した。何を言われたかは分かったのだが、内容を理解できない。理解することを、脳が拒んでいるかのように、言葉の意味が入ってこない。
「君が死ねば、正志が停止する。そうすれば、正志の管理から解放される。千堂くんはそう思ったようだ」
雪本の言葉は、理解もされずに通り抜けて行った。