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志織は、先程の千堂の表情を思い出しながら頷いた。緊張するほど重要なことなら、こんな所で立ち話ではなく、確実に二人きりになれる空間で話したほうがいい。
「分かりました」
「すみません、お手数おかけして」
千堂が扉を大きく開き、先に入るように促す。志織が仮眠室へ入ると、後ろから千堂も入ってきた。仮眠室は二段ベッドが一つしかない、かなり狭い部屋だ。しかし窓がないため、扉を閉めてしまうと真っ暗になってしまう。志織は電気をつけようと、目の前にモニターを出した。
部屋の電気をつける操作をする前に、扉が乱暴に閉まる音がして光が遮られた。急いで電気をつけようとしたが、その瞬間首に圧迫感を覚え、かっと頭に血が上った。
首に手を伸ばすと紐状のものが指に触れた。必死に紐を引き剥がそうとしたが紐は首に食い込み外れない。目の前のモニターが志織の体調の異変を察知し赤いEMERGENCYの文字を点滅させている。いくらもがいても紐は絡みついて離れない。誰か助けて。
「ぐっ……」
声が出ない。爪が何度も肌を滑る。苦しい。助けて。嫌だ。離して。
「お前のせいでっ……お前の父親と、あの変なロボットのせいでっ……」
千堂の低い声が脳に響く。目の前がぼやけ赤い文字が滲む。体が動かない。腕が重い。目が開かない。助けて。たすけて。くるしい。たすけ、て。
目の前が真っ暗になり、意識が途切れた。