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検査から一週間後。
その日は正志の検査結果が分かる日だった。志織は期待半分、不安半分で出社した。正志のことについて分かるのは嬉しいのだが、万が一彼に不利になるようなことが判明したら、「分解」されてしまうかもしれない。もしその瞬間が訪れるとしたら、正志はどうするのだろう。――いや、志織は、どうするのだろう。
胸の中でざわりと嫌な感触がした。
「高村さん」
背後から声をかけられ振り向くと、長身で茶髪の若い男性がこちらへ歩み寄ってきた。
彼は千堂といい、正志の管理を補助してくれている研究院の一人だ。確か入社してまだ一年程なはずで、入社以降ずっと正志の管理に携わってきたらしい。
「千堂さん、どうしたんですか?」
彼は志織の目の前で足を止めた。幾分緊張した表情で、数枚の書類が入ったクリアファイルを掲げて見せる。
「検査結果、出ました」
例のごとく、あの文章は手書きなのだろう。正志に関する記録は一切、電子データとして残せない。
「ありがとうございます」
志織は書類を受け取ろうとしたが、彼はその手をすっと上げた。
「話したいことがあるんです、時間いいですか?」
「ええ」
志織が頷くと、彼は「ありがとうございます」と言い、先に立って歩き出した。千堂は正志の部屋に通じる扉を開けると、中に進んだ。何枚か扉を抜けたあと、監視室とは反対側の扉を開ける。
「あの、そっち、仮眠室ですよ?」
「誰もいないところで話したいので」
千堂の声は若干緊張しているようだった。
正志の部屋には彼がいるし、監視室では今は松田が正志を監視している。仮眠室なら内側から鍵をかけることができるため、正志に関することを二人きりで話したいなら、確かに仮眠室が一番だ。