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ヒトガタ機械  作者:
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1-2

 斎藤の言葉に従い、志織は斎藤の後について研究室を出た。この研究室の廊下は独特で、一面真っ白の壁で扉らしきものが全く見えない。しかし壁のある一定の部分に手を当てると、隠されていた扉が開く。これはどこに部屋があるか知らないと扉の位置も分からない上に、指紋と目の認証をしないと扉が開かないため、最高のセキュリティであると言われている。志織も、自分が直接関係する研究所への扉の位置しか知らない。国内最高峰の研究所といわれているだけあり、情報漏えいには細心の注意を払っているのだ。事実、このセキュリティにしてから、この研究所から情報が漏れたことは一度もない。

 斎藤は廊下の奥へと歩いていった。長身なのに大股で歩くせいで、志織は小走りにならないと追いつかない。ここでは入り口から遠くにある研究室ほど重要視されていて、志織は比較的手前にある研究室しか利用しないため、自分がどこに連れて行かれるのか、皆目見当がつかなかった。

 廊下の突き当りまで歩いたところで、斎藤は立ち止まった。もちろん志織はこんなに奥まで来たことはない。何もない突き当りの壁にしか見えない部分に、彼は掌を押し付けた。数秒後、壁の一部が数センチ引っ込み、右にスライドして扉が開いた。まさか廊下の突当りにまで研究室が用意されているとは知らなかったので、志織は表情には出さなかったものの驚いた。

 扉の仕組み自体は他の研究室と変わらなかったが、中に入ってからもパスワードの入力や入館証の認証で複数の扉を通らなければならなかった。

 これほど厳重な管理をしなければいけない研究になぜ自分が呼ばれたのか、志織は全く理解できなかった。十年前の自分なら、自分の能力が評価されたと素直に喜べたかもしれない。だが、今は、自分に特別な能力がないことも、研究所最高のプロジェクトに呼ばれるはずがないことも分かり切っていた。だからこそ、この斎藤という上司が自分をどこに連れて行き、何をさせるつもりなのか全く分からず、志織は周囲を警戒しながら歩いた。

 いくつもの扉を抜け、ようやく開けた空間にたどり着いた。斎藤がドアを開けた瞬間、金属音と複数の男たちの怒号が聞こえ、志織は思わず立ち止まった。斎藤に促され部屋に入ると、彼は志織を彼の前に立たせた。今まで彼の後姿で見えなかった部屋の全貌が見えた瞬間、志織は愕然とした。そこは、あまりにも異様な空間だった。

 部屋は、壁一面が白く、ほとんど何も置かれていなかった。壁際には数人の研究者がいたが、誰も彼もかなりの重役ばかりだ。部屋の中心には、写真や絵でしか見たことがないような大きな檻があり、これがこの部屋に置かれている唯一の「物」だった。部屋は、大きな檻が置いてあるにもかかわらず狭く感じないほど広かった。

 そして、檻の中では、一人の青年が暴れていた。

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