表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトガタ機械  作者:
17/74

2-6

 いつの間にか腕は松田の拘束から離れていた。志織が松田を振り返ると、彼女は、目の前に出したモニターに何かをしきりに打ち込んでいた。

「マサにいは? 元気?」

くだらない質問だとすぐ気付いたが、正志は笑顔のまま答えてくれた。

「うん。体調は悪くないし、体力もある。服はこんなだけど」

彼はすり切れて肌が露出した肘や膝を示して笑った。

「じゃあ、明日買ってくるね」

「楽しみにしてる。服のサイズは変わってないから」

その言葉に背筋がぞくりとした。二十五年前から体格が変わっていないという発言が、二十代の青年から発せられるということは、これほどまでに違和感があるのか。

 志織の表情がこわばっていたのだろう、正志が心配そうな顔をして尋ねた。

「どうした?」

「ううん……服、持ってこられるか、許可もらえるかなって」

「無理しなくていいからね」

我ながら不自然な日本語になってしまったとは思ったので、正志が追及してこなかったことに安堵した。

 今まで無言だった松田が、志織のそばに寄ってきて耳元で囁いた。

「落ち着いているようですね。いったん戻りましょうか」

松田の声が聞こえたのか、一瞬にして正志の表情は変化した。

「志織をどこへ連れて行く気だっ」

あまりの剣幕に体が強張る。思わず正志を呼ぶ声が口から零れた。

「マサにい……?」

「志織を俺の目の届かないところへ連れて行くなっ」

正志は志織のことを見ておらず、松田のことを睨みつけていた。檻を揺らす音が重く響き渡る。

「マサにい、どうしたの……?」

いつも優しいはずだった。こんなに激しい怒り方をする人ではなかった。志織の知っている正志は、絶対出られない檻を破壊しようと、自分の身を傷つけるようなことはしなかった。怒ることもあったが、ここまで怖い表情をしている正志は、見たことがなかった。

何が一体、正志をここまで暴力的にしているのだろう?

 志織は、訳が分からず、呆然と立ちすくみ混乱していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ