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ヒトガタ機械  作者:
16/74

2-5

 松田がロックを解除した瞬間、志織は松田を押しのけ、勢いよく扉を開けた。部屋に駆け込んだ途端、正志の叫び声と、彼が檻に体当たりする金属音が耳に突き刺さる。その音の激しさに、志織は思わず体を震わせ足を止めた。それと同時に、叫び声と金属音も止んだ。

「志織……」

低く優しい声が静かになった部屋に響く。志織はゆっくり通りに近づこうとしたが、松田に腕を掴まれて引き止められた。

「危ないです、近づかないでください」

「大丈夫ですよ。見て分かりませんか?」

「大丈夫そうに見えますが、行かせる訳にはいかないんです。万一あなたの身に何かあったら、私の責任ですから」

「……分かりました」

志織は頷き、正志に向き直った。何か言おうとしたが、なんと声をかけていいのか分からず、松田に掴まれていない手で前髪を掻きあげた。

「志織、元気だったか?」

体当たりした時のまま、檻にもたれ掛かるような格好で、正志は志織を見つめていた。

「うん」

彼女が頷くと、正志は安堵したように表情を緩めた。

「よかった。ごめんな? お父さんに、志織を頼むと言われてたのに、全然面倒見れなくて」

「ううん、平気」

「あの後、どうやって暮らしてたんだ?」

「中学卒業までは、おばさんたちの家で暮らしてた。高校から寮に行って、大学からは一人暮らし」

「おばさん?」

「お父さんのお姉さんと、その旦那さん。子供がいなくて欲しがってたし、お母さんは一人っ子だったから、ちょうどいいんじゃないかって言われて」

「そっか……一度挨拶に行かなきゃな。俺がこんなことにならなきゃ、迷惑かけることもなかったし」

「……うん」

挨拶に行くなど、きっと一生叶わないだろうと思いながらも、志織は頷いた。

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