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正志は檻に歩み寄ると、檻を両手で掴み、ゆっくりと揺らした。
「出せ。志織に会わせろ」
檻を揺らす手は、段々と速く、力強くなっていく。それに合わせ、志織の心臓の鼓動も速く大きくなっていった。
「志織はどこだ。無事なのか。志織に何かあったら、ただじゃおかないからなっ」
檻が揺れる音と共に声も大きくなり、ついに彼は檻を思い切り蹴った。志織は、自分の心臓が大きく跳ねるのを感じた。
心臓が過剰に反応するのは恐怖のためではない。しかし、自分がどう感じているのか、自分でも理解できない。よく分からない感情が志織の胸に広がっていた。
「行きますよ」
松田が志織に告げたが、志織はモニターに映る正志から目を離せなかった。落ち着くために松田に感付かれないようゆっくり呼吸をゆっくりとしたが、心臓はなかなか収まらない。
「早く」
松田が志織の肩を思い切り引っ張る。それで体勢が崩れ、ようやく志織はモニターから視線を外すことができた。心拍数はかなり上がっており、耳元で心臓が鳴っているかのようにうるさい。なぜ自分がこんなことになってしまっているのか分からず、志織は混乱していた。
松田に手を引かれ監視室を出た志織の耳に、今までの音とは比べ物にならない金属音が届く。しかし、正志が何をしたのかを志織の目が捉える前に、扉は松田によって閉められた。