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第7章 舞輝



数ヶ月後。


舞輝は達弥から正式にプロポーズされ、婚約指輪をもらった。


「ありがとう!」

「廉たちが結婚するって言ったとき、きっかけってなんだろうな?って言ったじゃん。」

「うん。」

「わかった気がするんだ。目の前にいる大切な人を絶対離したくない!って思ったときだって。」

「そだね。]


舞輝は微笑んだ。



廉と愛海は結婚報告の記者会見を開き、入籍、春には挙式を無事終えた。

純白のドレスに身を包んだ愛海の姿はとても綺麗だった。


「舞輝もきっと綺麗なんだろうな。」


達弥が拍手しながら言った。


「がっかりさせないように頑張ります。」


舞輝はフラワーシャワーを空に放った。

愛海の投げたブーケは、まっすぐ舞輝の手に届いた。


「次は、舞輝の番!」


愛海はウィンクしてみせた。


「サンキュー。」


舞輝はブーケを軽く掲げて言った。


「俺、必ず舞輝を幸せにするから、信じて付いてきてくれよな。」

達弥が言った。


「うん、そのつもりだけど?」


舞輝は達弥の腕を取って寄り添った。



舞輝たちの結婚式は6月のジューンブライド。

翔と聡太も駆けつけてくれた。

しばらくして、舞輝のお腹に子供が宿り、舞輝は劇団を引退した。

立会い出産で無事誕生したベイビーはかわいい女の子だった。

達弥は涙を流しながら大喜びして、二人の名前から1文字ずつ取って、舞弥マヤと名づけた。

しばらく子育てに奮闘し、舞輝は再び踊り始めた。

ブランクを取り戻すのに、1年はかかったが、フリーでミュージカルに出演し復帰を果たした。

そして、達弥がダンススクールを開業し、夫婦で未来のダンサーを育てている。

その背中を見てすくすくと育っている舞弥は、早くもHIP HOPに興味を示し、子供達に交じって踊っている。


「ママ、いってらっさい!」

「頑張ってって!」


達弥が舞弥の耳元で言った。


「ママ、がんばってって」


舞輝は吹き出した。


「うん、頑張ってくるね!いってきます。」


舞弥のほっぺにちゅ〜をした。


「じゃぁ、行ってくるね!」


舞輝は立ち上がって達弥に言った。


「あぁ、頑張ってこいよ!」



舞輝が向かう先は・・・東京ミュージカルカンパニーの入団オーディション。

翔からの知らせで、アカデミーに入らなくても入団できるシステムが新たに導入され、舞輝の劇団員復帰のチャンスができた。

そのかわり、ハイレベルなオーディションといわれている。

舞輝に迷いはなかった。

チャンスがあるなら何度だって挑戦する気だった。

受かれば、また翔たちと踊れる。

翔も聡太も舞輝の劇団員復帰を待ち望んでいた。


試験会場は、アカデミーの一番広いスタジオ。

各教室が控え室になっている。


試験内容は、まず全員で課題の振り付けを覚え、10人ずつスタジオに入って審査される。その中で課題の振り付け、歌、演技、自己アピールをするのだ。


「100番から110番まで入ってください。」


舞輝の番号は、112番。


「交互に並んで2回踊ってもらいます。2回目は、前後入れ替えてください。」


課題の振り付けを2回踊った。


歌の審査。

これも課題曲となっていた。

高校生の時に、ここの入団試験を受けるのにお世話になった声楽の先生のとこにこのオーディションのことを話し、再び通った。

自己アピールも、演技も自信なかったけど、精一杯試験員にアピールできたと思う。

合格者もその日に発表される。

翔と聡太が心配して駆けつけてくれた。


「舞輝!」


審査が終わり、スタジオから出てきたところを翔に声かけられた。


「翔!聡太!」


舞輝は一気に笑顔になった。

今になって緊張が解けたのだ。


「どうだった?」

「今の精一杯出し切ってきたよ。」

「受かるといいな。また一緒に踊りたい。」


聡太が言った。


「受かんなくても、次がある限りまたチャレンジするよ。焦らず待ってて!」

「変わんないな。舞輝。」

「そう?これでもお母さんなんだけど?」

「信じらんねぇもん!舞輝が人妻になって子供までいるなんて。」


翔が言った。


「おれ、ショックだったもん・・・舞輝がお母さんなんて。」

「お前、まだ舞輝のこと諦めてなかったのか?」


翔は呆れた。


「いけないかよ?」


じゃれあってる二人を見て、舞輝は笑い出した。


「なんだよ?」

「いや、ホントサイコーの仲間だなって思って。」

「間違いない!」


翔と聡太は声をそろえて言った。


予定より審査が長引き、夕方に合格者の発表が出た。

3人で掲示板の前へ行くと、112番を探した。


「あった!」


3人揃って声を上げた。


「やったじゃん!」

「やったよ!」


3人は抱き合って喜んだ。

達弥にすぐ電話を入れた。


「おめでとう!よかったな。またあの劇場で舞輝の踊る姿が見れるんだな。」

「うん。」




舞輝が一番輝いているとき。

それはこの劇場で、このステージの上で・・・

大切な仲間と、大好きなダンスを踊って・・・

かけがえのない、達弥と舞弥にエネルギーをもらって・・・

大切な親友に支えられて・・・



ホントに近い未来。

またあのステージでライトを浴びて・・・

たくさんの拍手に囲まれて・・・

『舞輝』っていう劇団員は“舞”って“輝”く。


いつもそばにいてくれるみんなの力で。

これからも舞輝は輝き続ける。





終わり


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