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本編


 ―オフィス―

 目が覚める。

 やけに肩が重く、嫌な夢を見たようなそんな気分だ。

「また、ここで寝てたんですか?ピーターさん。」

 聞き覚えのある女性の声に男は見まわした。

「ん?ああ、そうか晩はここで寝てたんだったか…」

「仕事も良いですが、ベッドにはしっかり入る方がよろしいですよ。右腕の骨折もまだ癒えてないのですから。」

「ああ、気をつけておく。メアリー。」

「そういえば、ご友人の方に遊園地へ招待されていたのはいつでしたっけ?」

「ええと…たしか…9月の…12日だったから…」

「でしたら今日ですね。」

「やべ。遅れるわ。」


 ―遊園地―

 遊園地自体には間に合った。しかし、

「アイツも遅れるから先入っとけって言ってたけどアイツ全然来ねえじゃん。」

 その時一通のメールが届く。

「今日無理そうだから一人で周れ...っと…ふざけてやがるなヤツめ」


 仕方ない。直帰するのも面倒だ。それなりに遊んでみるか。


 ピーターはこの頃仕事漬けで休息という休息をとっていなかった。ぎこちない歩みは様々な場所へ運ぶが、どこも賑わいが激しく、休みというものがない。

 ふと古びていてやや小さいサーカステントが目に入った。後に聞いたところによると、この遊園地は元は小さなサーカス会場でこのテントが原点だったのだ。


「あれなら少しは休めるだろ。見るだけだし。」


 テント内は円形の二重構造になっていて外側の廊下の突き当たりにはトイレがある構造だった。おそらくスタッフルームは裏口からだろう。

 テントの中に入ると、複数人の黒いスーツの男たちがいた。その険しい表情から何か異様な状況にあるのが伺える。


「あの...出ます…ね…」

 そう言って、踵を返そうとした時に後ろから声をかけられた。

 

「いや、もう仕方ないでしょ。入りなよ。」


(あ…やばい…これ口封じコース?)

 意を決して振り返るとかなり身なりの整った男性がいた。

(絶対ドンだ。)


「どうもチャールズ紡績の次期社長。ルカ・ベネットです。」


「チャールズ紡績ってあの国内トップシェアのあのチャールズ紡績⁉︎…の次期社長⁉︎ベネットってことは創業者のチャールズ・ベネットのご子息だったり…」


「ええ、いかにも!」

あまりの大物に唖然とする。

「あ、どうも。しがない探偵業をしてます。ピーター・エリオットです…」

そう言って握手する。仕方なく左手で。ルカ氏の左手の薬指には指輪があった。

 (こういうの忘れないのが成功者なのか…)

 

「ことの説明をした方が良いね。実は招待もあって、お忍びで家族と遊園地来てるんだけど人混みがひどくてね。せめてでもここで妻、娘とサーカスでも見ようかなと。大丈夫。開演時にはSPたちは掃けさせるから。」


 開演までの間、ベネット家族とお話することにした。ピーターはルカ氏の右隣に座り、ルカの左には娘、妻と並んでいた。

「やはり、これまでの道のりは長かったんですか?」

「うーん…どうだろうね。けど、楽には行かないことは多少多かったかなー。特にこどもの時は親が厳しくてね…うちはね、いつも比較される環境だったんだ。

まあ、結果が出る方が評価されるのは当然なんだけどさ。」

 (相場は兄が継ぐのが一般的だけど競争とは…さすがはチャールズ家…実力主義…)

「どんな感じだったんです?」

「勉学、作法とまあ、色々かな〜。その競争も今になってみれば結構大事って理解してるけど当時はただただキツかったね。この子にはね、比べられる人生だけは歩ませたくないんだ。そして、強制もしたくないかな。この子がしたいことをさせたいしね。ね?リリー?」

 そう言って隣の席の娘の頭を撫でた。娘はよく分かっていなさそうだが嬉しそうだった。

「理解しきれているとは思ってないですが、私もそれが良いと思います。」

「多分、分かってるとこで十分だよw」

 その時携帯が鳴った。ルカ氏は携帯を見るやいなや席を立った。

「あ、ごめん仕事の電話だわ。」

「ああ、どうぞお構いなく。」

 ルカ氏はSPと共に廊下に出て行った。それを見送るとルカ氏の娘が尋ねてきた。

「パパ、よくああやって行っちゃうの。なんでなの?」

 この子は寂しさを感じていてそれを我慢していたのだろう。

「パパは仕事で忙しいんだよ…でもパパも君と一緒にいたいって思ってるはずだよ。だから一緒にいる時はめいいっぱい楽しむと良いよ。もちろんママともね。」

 そう言ってルカ氏の妻に目を向けるとニッコリと笑っていた。

 しかし、娘はどうやらまだ納得していないらしい。

「そっか…そうだね。」

 (うん、気まずいな)

「ごめんね。私もお手洗い行ってくる。」

 そう言ってピーターも席を立った。

 (余計なことを言ってしまった気もしてきたな。)

 トイレに向かう廊下でルカ氏ととくに会話もなくすれ違った。

 トイレから戻るとまだルカ氏は来ていなかった。席についてからしばらくしてルカ氏が戻って来た。

「外に色々あったから買って来たよ。ポップコーンとかコーラとか。ピーター君の分もあるから遠慮せず食べて良いよー。」

「ありがとうございます。」

 ルカ氏の家族も楽しそうな雰囲気だった。SPも出て行ったのでもうすぐ始まるのだろう。

 

 ―開幕―

 サーカスを見るのは初めてだったが、圧倒されるものだった。舞台上でジャグリングや玉乗りなどの絶技が次から次へと披露される。さすがに空中ブランコのような設備が入るほど広くはないが、施設が小さい分だけパフォーマンスが近くで見ることができ、ワクワクするものだった。


 急にテント内が暗くなる。次はどのようなパフォーマンスがあるか皆ワクワクしていた。

 5分ほどして舞台の真ん中にスポットライトが当たる。舞台の上には一人のピエロが立っている。


 徐に何かを取り出した。ライトが強く、影が濃いので何かがすぐには分からなかった。しかし、その正体はすぐに分かった。

 静まり返った空気を、乾いた破裂音が真っ二つに裂いた。

 銃だ。一瞬パフォーマンスかと思ったが、どこか雰囲気が違う。命に関わる緊張感が走る。ルカ氏の娘が叫ぶが、それ以外の誰も何も喋れない。

「これより、あなたたちは人質になってもらいます。」

 スピーカーからボイスチェンジャーの声が流れる。

「あなたたちが変なまねをしたらこのテント内に放火します。ぜひとも賢明なご判断を...それでは目隠しと拘束をさせてもらいます。ご安心ください。すぐに終わりますので」

 そして、4人は大人しく拘束された。


「それでは外の人に用件でも伝えましょう。ルカさん携帯電話をお貸しください。」


「胸ポケットに入っている。暗証番号は0924だ。娘が怖がっている。なるべく早くしてくれ。」

 (さすがにキモが座ってるな。落ち着きが違う。)

「はい、もちろん。」


 静けさに電話の呼び出し音が響く。かかったようだ。

「今サーカステント内で立てこもりしているものです。こちらの要求は3億円と逃走用の車です。1億円毎に人質を1人解放します。下手な動きをすればボタン一つでテント内に放火できます。全てのドアは予め内側から施錠しています。無理やり開ければどうなるかは分かりますね?では車は2時間後にお願いします。」


 電話口の声は聞こえなかったがピエロの様子から交渉は成立したようだ。

「良かったですね。この遊園地の所有している金庫の中に十分な金額があるらしいですよ。」


 目が見えないため声だけでしか分からなかったが、犯人の声からは少しも嬉しさがこもっていない。かなり慎重なようだ。


「まず解放されるのは誰が良いですか?」


 間髪入れずにルカ氏が答える。

「娘を頼む。良いだろ?」

 ルカ氏の妻も続く。

「はい。どうかお願いします。」

 ピーターも納得している。

「ええ、問題ありません。」

「…」

 娘は恐怖からか何も言えなかった。


「分かりました。ではそのお嬢さんを初めに解放しましょう。次に解放する人を決めることをおすすめします。」


 足音が左側に行く。そして、後ろに足音が移って行く。ドアの開閉音がした。おそらく外に出たのだろう。

 

「あの…やはり次はご夫人が良いと思います。娘さんも1人では可哀想ですから。」

 先に言わなければルカ氏は私を次に解放させるつもりだっただろう。しかし、それは最善策ではない。

 

「…気持ちは嬉しいけど、君自身は良いのか?」


 (ダメに決まってんじゃん!

 当たり前だろ!

 でも、あの子供放って置けないでしょ!)


 ルカ氏の妻が口を開く。その声はか細く涙が含まれているような気がした。

「本当に申し訳ございません…」

「いえ、1番良い選択をしただけです。」

 椅子の軋みからルカ氏も横で礼をしているのが分かった。

「なんと礼を言えば良いか…」

「いえホント大丈夫ですって。」

「あとアメリア。頼みたいことがある。おそらく外のSPがいるだろう。情報提供するのと彼が解放される時にSPたちでピエロを取り押さえろ。」

 アメリアというのはルカ氏の妻だろう。あと、さらっと3番目の解放が決まった。

 

 その時後ろでドアの音がした。ピエロが戻ってきたのだろう。

「お嬢さんは安全に引き渡しました。」


「本当なんだろうな?証拠は?」

 ルカ氏はピエロに強く問う。

「ええ本当です。次の解放者はご夫人なんですよね?では予定も早まりそうですし、確認も早くできるでしょう。」


 (なぜ分かった⁉︎まさか盗聴器⁉︎しかし、これは硬直状態でもある。逃走用の車がない今、ピエロからすれば放火で焼け死ぬだけだ。圧倒的な貧乏籤。ならばまだ策を練るまでは問題ない。)

「ああ、じゃあ妻の解放も頼む。」


 (この人…気づいてんのか?でもやるしかない。)

 

「分かりました。ですが、3番目の方と合わせてお二方で解放するのはどうでしょう?」


 (なんの提案だ?まさか俺が出る時の作戦を潰す意図か?それならルカ氏が出た時同じことをすれば良いだけではないか?)


「ようし!分かった。2人とも出な。あとは任せろ。」


「そうよ。あなたはどうなるの⁉︎」

「いやでも!それじゃあ…ルカさんが…」

 ピエロがピーターの言葉を遮る。

「ではそれで行きましょう。」


「待って!ルカさんはどうなるん…」

 自身の背に静かな鉄が当たる感触があった。

「もう、戻れませんよ。さあ、行きましょう。」

「…」

 何も言えなかった。ルカ氏は自身を助けたのにその上保身に走る自分に苛立ちを感じる。


 そのまま外へ出た。しばらくしてドアの音がしたのでピエロは戻ったのだろう。

 目隠しを外され手の拘束も解かれた。日差しが強くすぐには周りが見えなかった。次第にハッキリしてくるとそこにはルカ氏の娘が目に入った。その横には泣き崩れるルカ氏の妻。周りには武装した警備隊。


「あの…本当…力不足で申し訳ございません…」

「いえ、良いんです…あの人はこの子を守ることが最優先事項なんですから…それより多くは望みません。私も同じ気持ちですし…でもやはり辛いものですね。」

「…」

 

 そうして、保護されてから1時間ほどしたのか車がこちらに向かってきた。おそらく逃走用だろう。


 運転手が降りてきて電話をかける。

「逃走用の車が届いたぞ。早く人質を解放しろ。」


 その瞬間、運転手の顔色が青ざめた。その理由をピーターも分かってしまった。というより聞こえてしまった。

 電話の向こうからブザーの音がしたのだ。そう、それは放火に使われる装置の起動音に違いない。


「おい!どうなっている。要求は通したぞ!」

 その時また割れるような銃声が一発聞こえた。


 皆が騒然とした。それはルカ氏の身に危険を与えたことを意味した。

 ルカ氏の妻が電話を奪い叫ぶ。

「あなた!生きてるなら返事をして!」


「…」


 返事がない。最悪なことが起こってしまった。ルカ氏の妻は絶望感に倒れた。


 その時テントのドアが開いた。皆がピエロに身構えている。しかし、その予想は外れた。


「あっぶねえ〜‼︎死ぬかと思ったわ。」

 ルカ氏だった。左腕にはおそらく先ほどの銃の怪我があった。


 まさに奇跡。周囲は呆然とした。

「あなた!」「パパ!」

 ルカ氏の家族は警備隊を振り切り、駆け寄る。


 その後、テント内の調査が始まった。重要参考人として4人は残された。

 一部始終を警官に説明し、ピーターもその職業柄手伝うことができた。


 ―調査―

 テントの消火後その場で調査が始まった。

「テント内では何があったのですか?」

 警官ルカ氏に問う。

「2人が出た後、俺だけ残して放火するって言ってたんで、急いで目隠しと手の拘束解いて抵抗した。」

「抵抗した⁉︎」

「そう。焦げ臭い匂いしたから一か八かやった。で、腕に一発くらった。」

 警官は証拠品の銃を見せた。

「犯人はこの銃であなたの左腕を撃ったということですね。」

「そうそれ。今めっちゃ痛い。」

 銃はダブルアクションの銃で装弾数6発だ。残弾は4発。

「揉み合いになったそうですが、どのような状況だったか詳しく教えてください。」

 ルカ氏の説明はこうだった。

 放火後、目隠しと拘束が取れたルカ氏がピエロに体当たりをした。その時ピエロの手から銃が落ちた。

 ルカ氏は馬乗りになり、揉み合いになった。

 しかし、ピエロは自力で抜け出し、這いずりながら銃を拾い、発砲。

 その際に舞台照明の一部に流れ弾が当たり、火も相まってテントの一部が壊れ、それがピエロを下敷きにした。

 その間にルカ氏は脱出した。


 その証言の後、ピーターはテントに向かった。

 そこには瓦礫を避けた状態の焼けて誰なのかもう分からない遺体があった。静かに一礼した後に観察する。

「これがご遺体ね…」

 焼けたインクの匂いに顔を顰めるが、しばらく耐える。遺体はドアを向いており、自身の死に抗うようにも見える。

 近くにいた鑑識に伺う。

「出火元はどこからですか?」

「どうやらテント内の廊下にあらかじめガソリンを撒いていたようで、おそらくそこから。」


「犯人は当時、放火予告の際“ボタン一つで”と言っていたのですが、その装置らしきものは見つかりましたか?」

「それならこの照明用のものですね。」

「照明用?」

「ええ、舞台に設置してあるものを使ったようです。おそらく留め具を外し、廊下まで引っ張ってきたのでしょう。コードが長いのでそれを実現するならこれかと。」


「次にご遺体の身元は?」

「それなんですが、ここまで顔や細胞がやられてしまっては、歯などのDNA鑑定しかないですね。それにも時間がかかりますし。」


 遺体はうつ伏せで背中は押し潰された後がある。

「この遺体から他に何か変わったものは?」

「分かっているのは、右手に証拠品の銃が握られている状態で発見されたことのみですね。。」


「そうだ。監視カメラとかはないのか?このテント内のやつ」

「我々も調べましたが、破損が激しいうえに犯人によって通信も遮断されていました。」


「他にはなんかないか…」

「そういえば、周囲にあった証拠品でイヤホンのようなものがありました。」

「⁉︎ それだ‼︎犯人はおそらくテントを留守にする際、中の情報を盗聴していた。」

「…しかし、ご夫人からの証言もあり探しましたが、盗聴器のようなものは出てきていません。」

「あれ?そうなのか?」

 (どういうわけだ?盗聴器はどこに行ったんだ?)

「あともう一つ言いますと、リアルタイムで盗聴していたなら録音機能はないかと…」

「そう…なんだよね…」


「でもなんか…引っかからない?」

「というと?」

「イヤホンがあったってことはほぼ確実に盗聴器があったわけだ。それ以外に落ちてる理由がつかない。」

「それはそうなんですが…」

「それからもう一つ…銃だ。揉み合いの後に拾って撃った。おかしくないか?」

「特におかしく聞こえませんが…」

「1発だったんだ。」

「?」

「残弾数からみて、拾った後、別に再装填や撃鉄を起こす必要もないのに“1発しか”撃っていない。もし、殺すための発砲だったら残弾はないはずだ…」

「‼︎」


 その時後ろから声がした。ルカ氏だ。

「おーい!僕が今回の件でもし裁判にかけられたら証言してくれない?取り調べも面倒でね。」

 ピーターは鑑識を後にして振り向いて駆け寄る。そしてニッコリ笑って左手で握手する。

「ええ!もちろん!」

 ルカ氏が手を離そうとしたその時、ピーターは手に力を込めた。そして、口を開く。

「あなたが……

 “本当にルカ・チャールズ”なのであればね…」

「何を言うんだい?僕の顔はちゃんと知っているだろう?」

「そうですか?では僕の名前を言ってみてもらってよろしいですか?先ほどまではきちんと呼べていましたよね?」

「…」

「おや?お忘れですか?“ペーター”ですよ!」

「そうそう!ペーターだ!」

 周囲の人々の顔が青ざめる。

 

「え?どうしたの?アメリア?リリー?」

「ピーターです…」

 左手を持ち上げ、続ける。

「それから、指輪はどうされました?」

「それは…」

 相手の視線を追い、ジャケットの外ポケットが怪しい。

「失礼…」

 そのままピーターはポケットを漁った。

「これはどういうことですか?」

 見事に指輪が入っていた。

「合わせて申し上げますと、あなたの手は少しゴツゴツしていて、とてもこの指輪が入るとは思えません。どんな趣味をなさっているんですか?

 例えば……曲芸なんかを?」


「全く失礼なやつだな〜。僕は君を助けたんだよ。そんな言い方はないんじゃないかな〜。」


「そうですか?では失礼ついでに質問なんですが、以前に会いましたね?」


 周囲が驚く。

「トイレの時ですよ。あの時は姿形が似ていたので全く違和感がなかったんですが、周りにSPたちがいませんでしたね。服さえ合わせれば完璧だ。ってふうにね。」


「…」


「おーい!これ見てくれ!」

 遺体を調べていた鑑識が何かを見つけたようだ。

「左手に何か小さい機器みたいなの握ってるぞ。これなんだ?」

 それは探していたものだった。

 

「これは盗聴器だ。なぜ犯人がこんなことをするんでしょう?

 そうだ。この遺体は犯人ではないからだ。

 これはルカさんが最後の力を振り絞って、犯人の証拠品を掴んでいるんだ。」


「じゃあさっき僕が言った証言は?どう説明がつく?」


「それは、おそらく順序が逆なのだろ。

 犯人はルカ氏を殺害後に放火したんだ。それでもこの事態は作れる。

 おそらくは絞殺でもしたのだろう。

 それから服を入れ替え、指輪を回収した。

 その後、辻褄合わせと被害者のふりで自身で自分の左腕に1発。

 そして、放火と脱出。

 しかし、犯人は気づいていないがまだルカ氏は生きていた。だが、下敷きになり身動きが取れない。何とかして僕らにこの真実を知らせるため椅子の下にあった盗聴器を見つけ握りしめたんだ。」


「さっきから何を言ってるんだ?僕はここにいるじゃないか。それが何よりの証拠だろう?」


「夫人?ルカさんのご家族には誰がいらっしゃいますか?」

 夫人は少し考え、青ざめる。

「双子の兄がいます…」

「やはり…」

「ルカ・チャールズは俺だ!見れば分かるだろ!アメリア!リリー!」

 凄まじい剣幕で怒鳴る。

 

 ルカ氏の娘はそれを見て泣き出した。

「あの人は…リリーにそんなことは言わない…」

 

「悔しいと思うならこの指輪でもはめてみます?」


「……分かった。俺の負けだ。」


 ―後日―

 オフィスで山積みの仕事をしているとメアリーが掃除に来た。

「遊園地でのご活躍が素晴らしいとお聞きしましたよ!」

「そんなものでもないさ。」

「犯人の動機は何だったんでしょうね?」

「ん?ああ、社長の座を奪われたから自分が双子の弟として夫人、娘と暮らして尚且つ会社の社長にもなるってプランだったそうだ。あの遊園地の招待状も計画のうちで娘が遊園地好きなのを知ってて呼び、立場上で人混みの多さからサーカスに誘引するってやつらしい。」

「なんだか…怖いものですね。私怨というのは。」

「…」

「どうしたんですか?お機嫌が悪いのですか?」

「いや、今となってはもう他人事だけどあのルカさんの娘はずっとパパと遊びたかったんだと思い続けてたんだと思うとね…」

「…父親を失うには…幼すぎますね…」

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