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ルミナリエ

作者: 口羽龍

 1月の神戸は、鎮魂の祈りと光に包まれる。毎年1月17日は、阪神・淡路大震災の起こった日だ。1995年1月17日、午前5時46分、マグニチュード7.3の大地震が起こった。後に言われる、阪神・淡路大震災だ。これによって、何千人もの人々の命が失われ、多くの人が被災した。それ以来、神戸が行っているのが、神戸ルミナリエというイルミネーションだ。もはや神戸の冬の風物詩になっているが、それは阪神・淡路大震災がきっかけだという事を忘れてはならない。


 新婚の夫婦、ひかる真名子まなこは三宮駅にやって来た。会場へはここが最寄だ。2人はそこまでの道のりを歩いていた。多くの人が神戸ルミナリエに向かっている。みんな、神戸ルミナリエを楽しみにしているようだ。だが、ここにいる人々は、神戸ルミナリエが行われている理由を知っているんだろうか? そして、阪神・淡路大震災の事を知っているんだろうか? 毎年1月17日の早朝、祈りに包まれるあの日をニュースで見て、その意味がわかるんだろうか?


 しばらく歩いていると、美しいイルミネーションが見えてきた。神戸ルミナリエだ。多くの人がデジカメやスマホで写真を撮っている。そして、笑っている。とても幸せそうだ。みんな、神戸ルミナリエを楽しんでいるようだ。


「きれいだね」

「うん」


 2人はその美しさにうっとりしていた。これが神戸の冬の風物詩、神戸ルミナリエなんだ。2人とも、生で見るのは初めてだ。写真やテレビでしか見た事がない。改めて見て、本当に美しいなと感じた。みんな、その美しさに見とれている。だが、その中に、阪神・淡路大震災を経験した人は、どれぐらいいるんだろうか? そして、それを知っている人はいるんだろうか? 年を追うごとに徐々に記憶から薄れていく阪神・淡路大震災。その記憶を、いつまでも残してほしいものだ。だが、それはいつまで語り継がれていくんだろうか? できる限り、長く語り継いでほしいものだ。


「神戸の冬といえば、やっぱりこれだ」

「うん」


 2人は歩いて、別の場所にやって来た。ここの電飾も美しい。ここにも多くの人がいる。みんな笑顔だ。このイルミネーションが、どれだけの被災した人々を励まし、勇気づけたんだろうか?


「これもきれい」

「ああ」


 今夜も寒い。この近くで豚まんを買ってこよう。


「寒いから、豚まんでも食べよっか」

「そうだね」


 2人は近くの店で豚まんを買ってきた。とても暖かくて、冬の寒さに染み渡る。2人は豚まんを食べた。暖かくて、おいしい。


「おいしい!」

「本当だ!」


 辺りを見ていると、多くの人々が温かい豚まんを食べている。みんな、幸せそうだ。暖かそうだ。


 と、真名子はその奥のイルミネーションを指さした。そこにも行ってみようと思っているようだ。


「ここにも行ってみようよ」

「そうだね」


 2人はそこに向かって歩き出した。と、光はこの神戸ルミナリエが行われている理由を思い出した。


「このルミナリエ、阪神・淡路大震災の記憶を後世に語り継ぐために、やってるんだね」

「うん」


 真名子も知っている。この神戸ルミナリエは、阪神・淡路大震災がきっかけで行われているんだと。どれだけの被災者が、この光に感動し、勇気と希望を与えられただろうか? そう思うと、ジーンとくるものがある。


「僕たちはその時、生まれていなかったけれど、毎年1月17日のニュースでよく覚えているよ」


 2人とも、阪神・淡路大震災の事を知っている。1月17日が近づくたびに、それに関連したニュースや特番をよく耳にする。そして、1月17日の早朝の黙とうの様子をニュースで見た事がある。それを見るたびに、また1月17日が巡ってきたんだという気持ちになり、ジーンとくる。


「いつまでも、語り継いでほしいね」

「うん」


 と、1人の老人が、ルミナリエを見て、泣いている。阪神・淡路大震災で身内を失った人だろうか?


「どうしたんですか?」

「震災で亡くなった息子を思い出したんや」


 やはりそのようだ。阪神・淡路大震災を生き延びて、一緒に見たかったんだろうな。天国にいると、神戸ルミナリエを見る事ができない。そう思うと、無念でたまらないだろうな。


「そうなんですか・・・」

「どうして、あんなひどい事が起こらなければならなかったんだろうか?」


 いまだに老人は思っている。どうして1995年1月17日に、こんな大地震が起きなければならなかったんだろうか? そして、それで多くの人々の命が奪われなければならなかったのか? どんなに問いかけても、その答えが見つからない。自然には逆らえない。神様はどうしてこんなひどい試練を与えるんだろう。どんなに聴いても、答えが返ってこない。


「わからない・・・」


 光にもその理由がわからない。光は黙り込んでしまった。天災だからと言って、これはとてもかわいそうだ。神戸が一瞬にしてがれきの山になり、ある場所では火の海になったからだ。


「僕にもわからない・・・。それが運命だったとしか言えない・・・」

「どうして神様はこんなひどい事をするんかいな?」


 老人は泣き崩れてしまった。去年、妻を亡くした。生き残った子供たちは独立して、家を出ていった。もうひとりぼっちだ。これから、どうして生きていけばいいんだろう。


「その気持ち、よくわかりますよ」

「いつまでも、語り継がれてほしいですね」


 2人は老人を慰めた。すると、老人は顔を上げた。とても優しい2人だな。


「ああ」


 と、3人は空を見上げた。天国で、阪神・淡路大震災の犠牲者は、この神戸ルミナリエを見て、どう思っているんだろうか? 自分も見たかったと思っているんだろうか?


「亡くなった人々は、この夜景をどう思っているんでしょうか?」

「わからない。でも、きれいだなと思ってるはずだよ」


 遠い空にいても、この感動が伝わるといいな。だけど、そうはいかない。どうすれば、天国にもこの感動は伝わるんだろう。伝える事ができれば、この感動を共有する事ができるのに、それはできない。

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