文豪パロディシリーズ『「蜘蛛の糸」の真実』
地獄に落ちたカンダタのもとに下りてきた情けの糸。下ろしたのは散歩をしていた釈迦と言われている。
だが先日、驚きの事実が発覚した。なんとそれを下ろしたのは釈迦ではなく、蜘蛛本人だというのである。
考えてみれば、下りてきたのは「蜘蛛の糸」なのだから「蜘蛛が下ろした」のは当たり前といえば当たり前である。
確かに、どう考えても脆弱すぎる。だって「蜘蛛の糸」ですよ?カンダタは、極悪人だ。だからといって二度も地獄に落とすのは少し酷ではなかろうか。
這々の体で逃げきり「助かった⋯」と思ったのも束の間なんか回り道されてる。みたいなやつ。
蜘蛛の証言。
〈踏まれそうになってとってもこわかった。復讐してやろうと思って、散歩中の釈迦を脅してやらせた。自分は手の中に隠れていた。糸にはあらかじめ切れ目を入れておいた。落ちてケガしてしまえと思った。あれから地獄のみんなにもいじめられているみたいなのでせいせいしてます。〉
カンダタが生前殺人なども犯した極悪人だったことなどから、蜘蛛には「情状酌量の余地あり」として執行猶予付きの判決が出たということだ。
ん?なんか踏んだ⋯
あ、蜘蛛。
―――信じるか信じないかはあなた次第です。
© 1918 芥川龍之介