私について。
(a)人間は必ず死ぬ。
私はこの世界についての客観的知識を知っている。それは生物には必ず寿命があることだ。そして人間もまた生物である。また、私は今まで死んだことのない人間をこの目で見たことがない。故に、人間は必ず死ぬ。
(b)私は死ぬことができない。
私は今まで生きてきて死んだことがない。また、私は死ぬことがどういうことなのか、主観的に把握できない。死が、それを受ける当の者にとってどういった終わりになるのかを私は知らない。また、生とは経験をさせてくれるが、その終着点の死ではそれはなく、故に、私が死を経験することはできないのである。とするのならば、こう考えを巡らせる私は原理的に死を経験することができない。
(c)死なない人間はいない。
(結論)私は人間でない。
私は人間が必ず死ぬことを知っている。然し、私は今のところ死んだことがなく、死ぬ経験をするのも不可能である。よって、私は人間ではない。