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瑠美の疑問

 次の日は朝から直接「月王」の本社に行き、織田さんを乗せて今日のプレゼン先に向かう。昨日も一緒に仕事をして慣れた所為か、車の中では雑談も弾む。織田さんが、この三年間にあった社会の出来事を、いろいろ教えてくれたりした。


 午後からのプレゼンは、私の主導で行った。昨日から織田さんのプレゼンを見ていた事もあり、自分でも驚く程、スムーズに出来た。


「なかなか堂々としていて、良いプレゼンだったね」

「ありがとうございます。織田さんのプレゼンを見せて貰ったお陰です」


 お世辞じゃなく、私は本心でそう思っていた。


「じゃあ、今日は他の製品でもあれぐらいのプレゼンが出来るように、詳しく説明するよ」

「ありがとうございます」


 今日は昨日と違い、織田さんは値段がリーズナブルなファミレスを食事場所に指定してくれた。きっと、お金を出す私の負担を考えての事だろう。どこまでも大人な人だ。仕事の面も含めて、私は尊敬する気持ちさえ覚えた。


 翌日のプレゼンも滞りなく成功で終わり、三日目の食事は打ち上げのような気楽さがあった。


「そう言えば、織田さんは浩司君と知り合いなんですね。一緒にアパートまで来てたし」


 かなり打ち解けた事もあり、私は忘れかけていた、最初の疑問を聞いてみた。すると、予期していなかったのか、織田さんは驚いて食べ物を「ブフォ」っと吹き出しそうになった。


「だ、大丈夫ですか?」

「ご、ごめん、ちょっと驚いて」


 聞いてはいけない事だったのかと、私の方が心配になる。


「いや、あいつが自分の嫁さんと義人って奴を殺して、自分も死ぬって言うから……」

「浩司君は本当に愛佳ちゃんの事が好きで、一途ですからね……でも、浩司君は人を殺したりしないですよ。優しい人ですから」

「そうだな。放っておけば良かったよ」


 織田さんはそう言って、やれやれと言った感じで笑う。


「あの時も聞いたけど、どうしてあんないい加減な奴と結婚したんだ?」


 そう言われて、私も考えた。でもいくら考えようとも答えは記憶にないから分からない。


「まあ、義人にも良いところはあるんですよ。でも、結婚していたとは、私も思いませんでした」

「でも、お見合いするって津川に言いに行ったんだろ?」

「そうみたいですね。その時の事、浩司君はどう言ってました? 私はなぜ浩司君に言いに行ったか話してましたか?」


 織田さんは私の質問を聞いて少し考えている。


「たしか、君は津川に見合いの話をしに行った理由を言わなかったと聞いたが……だから津川は自分で理由を想像して、義人に教えに行ったんだよ」

「そうなんですか……」


 浩司君はそれで義人に、教えに行ったのか。


「それが気にかかるの?」

「いや、そんな事は……」

「まあ、深く聞き過ぎたな。ごめん、これ以上は言う必要ないよ」

「いえ、謝られるような事では無いですよ。私自身が本当に分からないだけですから」


 その後は話題を変えて、また仕事関係が中心になった。


 また何か分からない事があれば、遠慮なく聞いてくれれば良いと、織田さんは別れ際にライン登録してくれた。私は大袈裟な程頭を下げて、この三日間のお礼を言い、有意義だったプレゼンの仕事を終えた。

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