第二十二話 Then and Now -過去と今-
コックピットから引きずり出されたドールの両腕は今までと違い武器腕ではなく、人間の様に五本指のついたシンプルな義手であり、全身を覆うスーツは今までのドールとは違い戦闘を想定しているようには見えなかった。
「分厚い殻の中身は柔らかいって相場は決まってるもんだな」
一輝達は銃を構えると引き金を引き銃弾を撃ち込む。
弾丸は真っすぐ奥歯をかみしめるドールに向けて撃ち込まれる……はずだった。
突如上空から人影が弾道の前に立つと全身で弾丸を受け止め、一輝達は突然間に割って入った人影に驚き引き金から指を離す。
「……LOWか?」
「いってぇなぁ……少しは手加減とかねぇのかよ……」
間に入った茶髪の男はスーツ型にも関わらず弾丸を受けたためか苦痛の表情を見せるが、何事もなかったかのように武器を構える。
単発式のグレネードランチャーを構えた茶髪の男は引き金を引くと一輝達は互い互いの方向に飛び榴弾を躱す。
しかし榴弾は地面に転がるとまばゆい光を発し、二人の目をくらませる。
「おっし! 後は頼んだぞ隊長!」
茶髪の男はドールの手を引きさがっていくと、二人は眩む視界の中ドールを追いかけようとするが、先程茶髪の男がいた場所にガスマスクに似たマスクをつけたLOWの兵士がおり、剣とハンドガンを構えながら静かに立っていた。
「……なんだアイツ」
「考察は後にしよう一輝、ドールを追わないと!」
アルバが立ち上がり、ドールを追いかけようとするがガスマスクはハンドガンを一発アルバに撃ち込むとカメラ部分を直撃し、装甲の薄いカメラ部分から入り込んだ弾丸は目元から後頭部を貫通しそうになったが、横から現れた結城拓真が突き飛ばし軌道は僅かに逸れ、地面に倒れたアルバは痛みから声にならない声を上げながら藻掻く。
「結城さん! 無事だったんですか!」
「墜落の衝撃で気絶をしたが……俺は無事だ!」
大きな声で結城拓真は言うが、背中のプロペラは完全に折れており結城の声もどこか無理をしているような声であった。
「ドールはどうなった?」
「今逃走中です!」
「なら追いかけて! 俺はこいつを引き留める!」
「アルバは?」
「皆少しずつ体制を整えてる! 救援は来るはずさ!」
「分かりました!」
一輝は走り出すと、ガスマスクはその道を塞ぐように立ち塞がるが、結城は銃弾を撃ち込みLOWの兵士の邪魔をする。
そうしてできた隙を突き、一輝はドールを追いかけた。
LOWもドールの損失を被りたくないのか、一輝を追いかけようとするが結城拓真は銃弾で動きを抑制し、ライフルの銃身で殴りつけるが剣で防がれる。
「……結城……拓真か」
「……なに?」
ガスマスクは小さく結城拓真の名前を呟くと、剣で押し返し蹴り飛ばした。
「結城涼真の弟であり、あの事件以来随分後ろ指を差されているようだな」
「…………それは、俺が一番不快になる冗談だ……」
結城拓真はライフルを構えるが、ガスマスクは一発弾丸を撃ち込むと弾丸はライフルの銃口に入りマガジンが破裂したせいか結城拓真の銃口に亀裂が入る。
「クソッ!」
結城拓真はライフルをパージし、開いた手でアルバの握っていたR2を握るがその隙にガスマスクは突っ込むと首に剣を突き立てた。
「く……」
「…………」
ガスマスクのLOW兵士は静かに結城拓真の顔を見つめると、静かに口を開く。
「……お前は、人間に強い怨みを持ってるんじゃないか?」
「……俺の何を知ってやがる……」
「知っているさ、俺はお前の兄貴から名前を貰い……」
喋りながらガスマスクのようなヘルメットを外す。
するとガスマスクの下に隠されていた素顔を見た結城は驚き、手に取っていたR2を落としてしまう。
「共に戦ったレジスタンス……ハジメだ」
「レ……ジスタンス…………レジスタンスッ!」
レジスタンスという名前を聞いた結城拓真は怒りを露にしながら掴みかかるが腕を切り落とされ、足を撃たれると地面に倒れた。
「なぜ怒る? 俺はお前の兄貴に恩がある……余計なことをしなければ殺しは……」
「黙れっ! お前のせいで! お前と兄貴のせいで! 俺ら家族はどんな苦しい思いをしたと……」
血を流しながら尚立ち上がり、結城拓真はハジメに掴みかかる。
「お前らレジスタンスに兄貴がいたせいで、俺らは一生後ろ指差されたんだぞ! 父さんも母さんもその事実に耐えきれなくて鬱になって首吊ったんだ! あのバカ兄貴とてめぇらのせいで! 俺はあの最悪な男を、兄貴なんて認めないッ!」
「……俺らは間違った事などしていない、それにお前の兄貴は多くの命を救った! 俺らも救われた命の一つだ!」
「俺らは救われてない! あの兄貴はお前らを救ったが、この戦争を生んで大量の死傷者を出しただろうがッ!」
「じゃあ俺らクローンは死んでも良かったというのか?」
冷たい声色でハジメは問うと、結城拓真は顔を近づけ呟いた。
「……それが一番、人の為に……」
結城拓真が言葉を言う前に、顎下から撃ち込まれた弾丸が結城拓真を黙らせる。
力なく倒れ、地面に倒れた結城拓真を見下ろしながらハジメはガスマスクをかぶりなおすと、ため息交じりに呟いた。
「…………弟と聞いて期待してたんだがな……残念だ……」
そう言ってハジメは背を向け一輝が向かった方へ逃げてく。
一方そのころ、一輝はドールを追っていたが茶髪の男は追ってくることを計算に入れていたのかトラップまみれの道を苦戦しながら進んでいた。
「クソ、地雷にワイヤー……敵陣に向かってる以上、ここで動けなくなったらお陀仏だぞ……」
罠の位置を把握している茶髪の男とどんどん距離を離され、気づけば見失っていた一輝は足を止め、結城拓真に通信をつなげる。
「結城さん、ドールを見失いました……結城さん? 結城さん! ……何かあったな……ナナさん!」
〈小夜です! 今はどういった状況ですか!〉
「あれ、ナナさんは……」
〈すいません、ナナさんは混乱した後方部隊との連絡中で……私も今帰ってきたので〉
「なるほど……今前線は死傷者だらけで……結城さんに足止めを手伝ってもらってドールを追ってたんですが、見失ってしまって……」
〈了解しました、LOWの面々も徐々に撤退してるみたいです……そのまま後方に下がって下さい〉
「了解しました……」
一輝は通信を終え、背を向けその場を離れた。
そしてその様子をヘリから見ていたハジメと茶髪の男は戦場を見下ろしながらため息を吐く。
「はぁ……ハジメ君、助けに来るの遅くない?」
「…………悪かったな英二、俺にも準備があった」
「それに、気になるあの子には振られたってか……なぁハジメ、この作戦の意味は何だ? リバー街道を取ろうってカトルに吹き込んだのはお前だろ?」
英二はそういいながらハジメの顎を掴むと、顔を近づける。
「俺はな、兄弟達が安心して……かつ安全に生き残る道を作るために付いてきてるんだ、決してお前の都合のいい武器じゃねぇ……そこんところ、もっかい考え直してくれや」
「……無駄死にをさせようなど一度も考えた事は無い」
「……そうか、ならいい……あの爆撃の跡もそう言うなら見なかった事にしてやるよ」
英二は腰を下ろし、椅子に座ると口笛を吹きながら遠くなってく戦場を眺めていた。
ども。
最近投稿が遅れてますが、ちょーっと予定を詰め込み過ぎただけです。
夏の暑さが去る事には週一に戻りたいなと。




