第二十一話 Henry -破られし殻-
待ち伏せをしながら一輝達は息をひそめ、瓦礫から対象を覗く。
横についたキャタピラの側面装甲には六基ほどの軽機関銃が取り付けられており、背部にはミサイルコンテナ、頭頂部には大型主砲をつけている大質量の兵器が動くたびに地響きが鳴るが、それでも一輝達は動かず側面が近づくまで待つ。
「いいか、タイミングを見て突っ込むぞ! カレン! バックアップしろ!」
〈了解! イーグルと連携する!〉
「よっしゃ! 突っ込め!」
一輝達の前にあった瓦礫をヘンリーはタックルで吹き飛ばすと、その音に反応したLOWの兵士が振り返る。
そうしてできた無防備な一瞬を逃さず、イーグル部隊とカレンの弾丸が一斉にLOWの兵士を撃ち抜く。
「おっしゃー! 登れ!」
ヘンリーはショットガンで機銃を撃ち、機銃を両肩の装甲で受けながら正面に立ち引きつけながら近づき、一瞬の隙をついて側面に取り付けられた梯子を一輝とアルバは掴む。
だが、上部に人が乗ることを想定していたのか対空砲が一輝達の方を向くと太刀川は腰部のホルスターを開け、三枚の板を取り出し空中へ投げる。
すると、板は上空でT字に形を変え滑空すると対空砲にレーザー刃を突き刺し爆発した。
「すっげ、あんなの持ってるのか……」
〈すごいでしょ、んじゃアタシは後ろに下がるね~〉
いつもの調子で太刀川は答えるとすぐに通信を切る。
「もたもたすんなアルバ! とっとと行くぞ!」
「お、おう」
一輝に急かされアルバはドールの大型ユニットの上に乗ると、突如足元が揺れ二人はよろけてしまう。
〈こちらアリゲーター部隊! ドール前面にとりついた! 背部の敵は任せたぞ!〉
「了解しました!」
「任せろ!」
結城拓真とヘンリーは大きな声で返事をすると、結城拓真は上空から機雷をばら撒き混乱した前線に向かおうとするLOW兵士を足止めし、機雷の間を抜けながらヘンリーは両肩の装甲版を繋ぎ大剣にすると、相手のヘルメットを大きくへこませた。
首元まで達しているだろうその窪みの中身を誰も想像したくないのか、ヘンリー以外は目を逸らす。
「うわ……」
「あれは……即席ミートソースだな……」
「二度とパスタが食べられなくなりそうな事言わないでくれよ……」
「わ、わりぃ」
二人は上部に昇り、対空砲の残骸を盾にしながらレーザー式の対空砲も無力化していく。
誤って対空砲を撃ち抜かないための安全装置が働いているのか、一輝達が対空砲の残骸に隠れると猛攻は即座に止むが、悔しそうにその銃口は一輝達を狙い続ける。
「へっ! 最新技術がこうも足を引っ張るとはな! どこ産の技術だか知らないがお粗末だな!」
「油断するなよ一輝! 結局一発貰えば致命傷なのは変わりないんだから!」
残骸は二人分の幅は無い都合上前後に分かれるが、距離が離れる後方の一輝はアルバよりも動きが制限されるが、一輝はアルバが顔を出し銃口が逸れたのを確認したのちに顔を出すことで被弾率を下げていた。
徐々に減る対空砲、後方前方を保護する布陣は挟み撃ちによりガタガタになった布陣は既にLOWの意図していた作戦とはかけ離れている。
その状況にしびれを切らしたのか、フォルンの対空砲は一斉に火を噴くと、上空から大量の榴弾が降り注ぎ敵味方問わず吹き飛ばす。
「ぐあっ!」
辺り一面に爆撃を食らい巻き上がる土煙に一輝達は目元を覆うが、やがて晴れるとそこには立っている人影はごくわずかだった。
空中戦を繰り広げていた結城も爆撃を食らったのか墜落しており、ヘンリーは自慢の重装甲が生きたのか立っているものの、装甲のいくつかは弾け飛んでいる。
そしてカレンの居るイーグル部隊は壊滅に近いのか、狙撃部隊の潜んでいた場所は瓦礫の山と化していた。
「敵味方容赦なしかよ……」
アルバが静かにつぶやく。
呟く通りに敵味方の識別の暇もなかったのか、はたまた識別が狂っていたのかLOWの兵士も巻き込まれ無残な姿になっていた。
「とにかく今がチャンス……おわっ!」
「アルバ! てめっ!」
突如現れた人影にアルバは叩き落とされると、一輝はすぐに銃を持ち反抗しようとするが、見慣れない人影は一輝も蹴落とすと高い位置から見下ろす。
「アイツ……ドールか!」
「いってて……いつの間にハッチが開いて……」
前面のフレームが開き、中からスライドするように飛び出したコックピットの中は誰もおらず、見下ろす人影がドールであることは誰が見ても明白であった。
「さっきの爆撃の時……あの時飛び出したのか? 命知らずが過ぎるだろ……」
「つうかそのまま死ねよ……ひょっこり出てきやがって……」
地面に落とされた二人は悪態をつきながら立ち上がると、ドールは高く飛びコックピットに乗り込む。
コックピットは後方にスライドし、フレームが閉じると建物を薙ぎ倒しながら旋回し一輝とアルバ、そしてヘンリーの前に佇むと一斉に機銃を掃射する。
「撃ってきた! 退きましょう! ヘンリーさん!」
「…………」
アルバは状況を把握しヘンリーに撤退を促すが、ヘンリーはむしろドールに向かって真っすぐに突っ込み、肩の装甲版が片方剥がれるも気にせずに突っ込む。
「おい! ヘンリーさん! 死ぬって!」
「一輝! 行くなって!」
「でも流石に……うおっ!」
機銃は一輝の肩装甲を弾き飛ばし、二人は瓦礫の裏に隠れる。
「そこで見てろ新兵ども! ワシに最高の秘策がある!」
ヘンリーはまだ残っている装甲版を閉まったフレームに叩きつけると、フレームが歪み少しの隙間が生まれた。
その隙間を狙い再び装甲版をねじ込むと、先ほどより深く嵌りヘンリーは力を込め下げる。
するとてこの原理でフレームが開き、次に指を入れるとヘンリーは力いっぱいフレームを持ち上げた。
ストッパーが破損したのか、無理にこすれる鉄の音が鳴り響きコックピットの中に光が差し込む。
「よう、やってくれたなこの野郎」
ヘンリーは腕を突っ込むと、コックピット内のドールの胸ぐらを掴み引きずり出そうとする。
が、爆撃から生き残ったLOWの兵士が立ち上がると、グレネードをヘンリー目掛け投げた。
「あのやろ!」
一輝は即座に引き金を引き、瀕死だったLOWの兵士にとどめを刺すがグレネードはヘンリーの足元に転がり爆発する。
「ヘンリーさん!」
一輝達は瓦礫から飛び出し、爆発の向こう側を見つめた。
すると、すぐさま何かが飛び出し二人の間を通り抜けると地面を転がり唸る。
「う…………うぐぅ……」
「ド……」
『ドール⁉』
一輝達は驚きながら、今飛び出してきた人影がドールであることを知ると互いに顔を見合わせ、ヘンリーの方を見た。
白煙の中から現れたヘンリーは既にボロボロであり、ヘルメットのカメラ部分が破損したのか目元から血を流すヘンリーの顔が見える。
「……後は任せたぞ新兵! 何をするかは言わなくてもわかるよな!」
最後に大声を上げ、ヘンリーは膝から崩れ落ちると動かなくなった。
「……ああ、分かった」
「……いろんな人が犠牲になりながらこいつを引きずり出したんだ、やってやろうぜ一輝!」
二人はよろよろと立ち上がるドールの方を見ると、今一度武器を構える。
二連続投下ッ!
今回のタイトル、編集長に名付けてもらう際。
ヘンリーがドールを引きずり出すの、殻を破るって表現がよくね?
と、つぶやいた結果こうなりました。
編集長ナイス!




