第二十話 Raid Battle -三重奏は轟音を奏でる-
揺れる地面の上を走り、指定された場所に着くと見慣れない人達とヘンリー達が見え手を振る。
「おーい!」
「よし、技試隊は全員揃ったぞ! 各自役割を伝え任務に掛かれ!」
二人を見るなりカレンが答えると、他部隊の隊長と思しき三人が前に出る。
「アリゲーター部隊隊長タールだ、我々はドール及びその周辺部隊の足止めだ……本体は任せたぞ?」
タールはそう言うと、親指を立てた。
ヘンリーにも負けない程の重装甲でありながら、ドット迷彩の採用で周囲の風景と溶け込んでおり。
方腕にはペンチのような武器が付いている為、奇襲による一撃粉砕を目的としているのか、アリゲーター部隊は目的を伝えその場を離れ身を潜めながらドールのいる場所へと向かう。
「ああ、ドールは必ず止める……そっちも無駄死にだけはするなよ」
カレンが見送りの言葉を伝えると、次は結城拓真のように背中にプロペラのついたアーマーを着た女性が前に出る。
「ケツァール部隊は上空からの航空支援及び、戦況の報告を頼む」
「ケツァール部隊隊長ヘラよ、オーケー! 本体は任せたわよ!」
ヘラは部下たちを引き連れ上空へと飛んでいくと、ビルを盾にしながらドールのいる方向へと飛んでいく。
「イーグル部隊の隊長鷹崎だ、狙撃を担当する」
「ポイントは抑えたのか?」
「既に抑えてる、トラップの類も準備した」
「了解した、お互い無事でいよう」
「……了解」
右のカメラアイが三眼式になっているイーグル部隊の面々は部隊に指示を出すと、足並みを揃えて狙撃中を片手に散開する。
「よし、我々技試隊はドールと正面からぶつかる! 連中をこれ以上前進させるわけにはいかない!」
「と言っても、あの重装甲のどこに攻め込むんだ?」
「空中から見た限りでも、対空砲に歩兵用の機銃……それを囲むようにLOWの兵隊が展開されてる、真正面からじゃ穴だらけになって終わりだ」
ヘンリーと結城拓真は不思議そうにカレンの方を見るが、カレンは策があるのか狙撃中を構えると背の高いビルのほうに向けた。
「アレを使う」
「アレ……ああ、そう言う事ですか」
「まさか……カレンさん、アレを倒すんですか?」
納得した結城拓真の横で少し引いた声で一輝は尋ねると、カレンはため息を吐いた。
「これは戦争だ、ビル一つで数万人の命が救われるなら大したことじゃないさ」
「解体なら任せろ、ワシらでタイミング見てぶっ壊してやろう」
ヘンリーは乗り気なのか、武器を構えると一人楽しそうに声を上げる。
「あの……」
「どうした? アルバ?」
「どうやって解体するんですか? ダイナマイトみたいな爆破物がないとさすがに厳しい気がするんですけど……」
「戦場に爆破物がないと思うか? 後方から既に手配している……その間に我々とアリゲーター部隊でドール付近の兵士を相手し、ケツァールの状況指示によりイーグル部隊が爆弾を撃ち抜く手はずだ」
「じゃあやっぱり正面に立つんですか? ドールの」
「そこまで近づかなくてもいい、ただ引き付ける必要はある……あのビルにLOWを近づけないようにな」
「じゃあ行きましょうか~、さっさと行かないと間に合わなくなりそうですしね~」
徐々に近づく地鳴りと発砲音、それを聞いた一輝達は歩み出す。
前線は既に崩壊しており、フォルン国軍は迫りくる轟音と銃弾から逃げるほかないのか、中には発狂しながら一輝達とすれ違うトルーパーがおり技試隊はどこか辟易した表情を見せた。
「ふんっ、情けない連中よ」
「あはは、普通あれだけの兵器を見たら逃げ出すのが吉だと思うけどね~」
「命は一つだ、逃げに徹することも恥ではない」
「そんな事を言ったら誰が国を守る? 軍人の命は国を守るための盾だ、後退は選択肢にない」
「軍人も生き物だ、家族がある……老兵の貴方には少し難し考えですかね?」
カレンはため息を吐きながら狙撃中のスコープを調整し、遠くにドールが見える位置からその様子を探る。
「ワシらが命を散らす覚悟を見せなければ、その家族すら守れないんだぞ」
「家族……」
結城拓真はどこか複雑そうな声でそう言うと、ドールの主砲が傾き弾丸が打ち出されると目標のビルが撃ち抜かれた。
ビルは大穴が開き崩れ落ちると、根元に設置されていた爆薬が破裂したのか爆発が起こる。
「おい! おいおいおいおいおい! 目標のビルがつぶれちまったぞ!」
一輝は思わず大声を上げると、通信が繋がり向こう側からは阿鼻叫喚の叫び声が聞こえた。
〈おい! どうなってんだ! ああクソ! しっかりしろルーク!〉
「ドールがビルに向かって発砲した! クソっ! ワシらの作戦に気づいたのか?」
〈後方部隊は壊滅だ! 今の倒壊と爆発で負傷者だらけだ! ただでさえ多くの人員を割いたのに……クソッ……とにかく俺らは負傷者を運び出す! そっちに手は回せねえ!〉
現場は相当混乱しているのか、怒号と絶叫が混じりながら向こうから通信が切断される。
「いったい何が……」
「一輝! 伏せろ!」
結城拓真が声をかけると、一輝は何事かと振り返る。
すると無数の弾丸がドールから放たれ、一輝達は一斉にその場から離れると慌てて通信を開く。
「ケツァール! 上空からの情報を……」
〈…………う…………その…………声……〉
「何があった! アリゲーター! イーグル!」
〈こちらイーグル、ケツァールが対空砲で撃墜されたのを確認した! しかもフォルンの対空砲だ!〉
「何? ハッキングは収まったんじゃ……太刀川! ネットワークの状況を確認してくれ!」
「了~解……ん? あれ? ここら一体の対空砲が別のネットワークに接続される? 接続先は……ドール!」
「あれ自体がハッキング用サーバーって事⁉」
太刀川の声を聴いたアルバは、思わず声を上げるとヘンリーは両肩の装甲版を外すと接続し、スライドさせた柄を握ると一本の大剣の様にして肩に担いだ。
「アリゲーターは生きてるか?」
〈ヘンリーさん……何とかこっちは、しかしさっきから探るように連中がうろついている……漏れたのか? 情報が〉
「どうやらドールにハッキング能力があるようだ、そこから漏れた」
〈……他サーバーは停止したんだよな? ならアイツを止めれば収まるのか?〉
「付近のオンライン兵器は軒並み掌握されてる、けど国防サーバーまでハッキングされてないって事は……そこまで範囲は広くないかも!」
「太刀川! それは本当か! なら……」
ヘンリーは建物の壁を破壊するとビルの中に逃げ込む。
「こっちにこい! 遠回りで側面から叩く!」
「写真見たけど、側面が一番装甲が多いんじゃ!」
「見たところ側面にあるのは機銃ぐらいだ! それぐらいワシなら何とでもなる! 真正面より勝率は高い! そこでカレン以外は全員ドールに取り付け!」
「本気か! ヘンリー!」
「ああ! 老兵の缶を信じろカレン!」
ヘンリーは先頭に立ちながら、ビルの壁を大剣で破壊しながら突き進む。
そうして一輝達はドールの轟音のせいか無事ドールの側面付近まで、敵に見つかることなく近づくことができた。
非常に遅れました俺です。
こんなクソ暑いのに熱を出したり、俺は一体何をやっているのか。
新人賞も落ち着いたのに、戻ってこれずにすいません。
今週から再開します。




