第十九話 hacking -ハッキング-
ドールを引き付けるまでの間、一輝達は作戦を考え二手に分かれる事にした。
狙撃の出来るカレンと妨害がメインの太刀川は高所から援護をし、一輝とアルバ、ヘンリーと結城拓真は二手に分かれ隙を見てドールを挟み撃ちにするために待ち伏せるポイントまで移動する。
幸いLOWも体制を整えているのか前線付近から撤退しており後方のドールの元で補給を受けていたのか、移動中の一輝達と出会うことは無かった。
「クリア、ポイント到達しました」
〈カレン、こっちも到達したぞ〉
一輝とヘンリーはポイントに到達したことを狙撃手のカレンに伝える。
〈了解、此処から見た限り敵の動きはない……そうだな、各自今の内に……〉
突如ノイズが走り、カレンの声がノイズの向こう側へと消え一輝は焦って返答を返す。
しかしカレンはおろかヘンリーも返答を返さず、二人は顔を見合わせた。
「おい、これジャミングか? いきなり聞こえなくなったんだが……」
「僕の方も聞こえない、多分連中が動き出したって事なんじゃないか?」
「やっぱりか? どうするよ……作戦は聞いてるけど、これじゃあタイミングを計って挟撃なんてできないぞ?」
二人はどうするべきか考え始めるも、未だ戦闘経験の浅い二人は突っ込むべきか否か判断が付かず、気づけば数分立って居た。
そんな時、非登録の回線から通信が入り一輝は恐る恐るその通信にこたえる。
「どちら?」
〈こちら技術開発試験隊のナナ・オリビアです、一輝さんですか?〉
「ナナさん? 小夜さんは?」
〈今席を外してまして……代理で指揮を執りますので軽く現状を説明します、LOWはどう言う訳か対空砲から我々のサーバーにハッキングを掛けてるみたいで……一部回線に不具合が出てます〉
「ジャミングが目的じゃないって事?」
〈そうですね、その対応に技術者と小夜さんが追われていて……後続の部隊が出せない状態になってるんです〉
「なるほど、所で僕たちに何か指示があるんですか?」
〈ハッキング用のサーバーがどうやらその町の回線から来てるようで……ただ、今後方の避難キャンプでも同じ回線を使ってるので切る訳にも行かず……そこで、二人にはいくつかの候補地を転送したので、その場所にあるサーバーを破壊してください〉
「……これ、かなり大手のデータサーバーがある所じゃ……」
〈そうです、一応事業者には許可を得ています……にしても、詳しいですね?〉
「……僕一応、就職活動してた頃はこういう職種に着こうとしてたんで……」
戦争とは無縁だと思っていたころを思い出しながらアルバは苦笑いを浮かべると、ナナも続けて苦笑いを浮かべた。
〈あはは……そのうち戦争が無くなれば、いつか望む職種に就けるはずですよ……それまでどうか、生き延びてください……では通信を切ります〉
「……だってさ、一輝」
「言われなくても死ぬ気はないさ、俺はLOWの連中をぶっ飛ばしてさっさとこんな戦い終わらせて、平和に生きていたいんだよ」
「僕もそうさ……さて、すぐ近くに一つあるみたいだ……潰しに行くか」
一輝達は指定された箇所にあるデータセンターに入り、もはや稼働しているのか怪しいビルへと入る。
前線に近かった分、対空砲の修理をしていたビルよりも損傷が激しく電球はチカチカと点滅しており、スプリンクラーが働いたのか床はびしゃびしゃに濡れていた。
「まだ電気が来てるのか……」
「電気が来てると言うよりは発電機があるんじゃないかな、サーバーは電源供給が絶たれたらそれだけでとんでもない損失出るし」
「…………今からそれを壊しに行くんだけどな……」
「…………発電設備さんにごめんなさいするしかないな」
「いや、事業者にしてやれよそこは」
銃を構え、足音を殺しながらもそんな他愛のないやり取りをする。
間も無くサーバー付近に辿り着く二人だが、目的地周辺で怪しい影が見え咄嗟に身を隠す。
「……誰だ?」
角から様子を伺い、サーバールーム前で待機する人影を確認する。
するとどうやらLOWの兵士のようであり、銃を構え誰か近づかないか監視をしているようにも見え、二人はR2のセーフティを外す。
「……こういう時、グレネードとか持ってると楽なんだけどな」
「僕に持ってるか聞いてるのか、それ」
「いや、ただの独り言だよ……よし、俺が先行するから援護頼む」
「……たまには僕が行くよ、さっき一輝に前に立ってもらったし」
アルバは身を屈めたまま少しずつLOWの兵士と距離を詰め、無防備な兵士の頭にR2の弾丸をぶち込む。
銃声に気づき、隣にいたLOWの兵士が銃を構えるが一輝はその隙に胸元に二発弾丸を撃ち込み、怯んだ隙にアルバはナイフで首を掻っ切った。
レーザーナイフであるため、喉が焼損し穴が開きLOWの兵士はどれだけ呼吸をしようと喉から空気が漏れる為、段々と最初の勢いはなくなりやがてもがく事も無くなった。
「エグイ事するな」
「いや、まぁ……こんな死にかけのハエみたいになるとは思って無かった」
「まあいいや、中はどうだ?」
一輝に言われ、アルバはサーバールームの中を覗くが中には誰もおらずただパソコンが一台稼働しているのみである。
「クリア、パソコンが一台あるけどこれ持ち帰ったら証拠とかにならないかな?」
「なるかもしれないけど、問題はどうやって持ち帰るかだよな」
「それもそうか……そうだ、僕少しパソコン分かるしいっその事ここで解析してみるか」
アルバは手元のロックを外し、ハンドパーツを外すとパソコンのキーボードに手を置く。
稼働しているパソコン内部のファイルなどをチェックし始め、LOWオリジナルなのか独特なUIの画面を手探りで操作していく。
「どうだ? 何か分かりそうか?」
「……うーん、とりあえずまぁまぁ旧式なパソコンだなと……多分世界大戦してた時のじゃあないか?」
「七年前か、それで?」
「独特なUIだけど、多分今の軍用UIの先駆けというか……面影があるから多分旧バージョンなのかも」
「…………じゃなくてさ、もっとこう……敵の情報とか、そういうのは無いのか?」
「……無茶言うなよ、僕所詮パソコン好きな人間でしかないんだからさ……ん?」
アルバは何かを見つけたのか、画面に顔を近づけまじまじと見た後色々な個所をクリックする。
すると何かのダイアログが画面に現れ、数値を入力する欄が現れた。
「なんだそれ?」
「なんだろう、適当にいじってみるかな」
アルバは適当な数値を入れると、サーバーのファンが一斉に唸りだし一気に室温が上がる。
しかし肝心のサーバールームを冷やすための冷房が非常電源で動いている為か出力不足に陥り、サーバーのファンは一気に動きを止めた。
「壊したのか?」
「……壊れてはいないけど、安全装置が働いたっぽい」
アルバはそう言うと、再び非登録の回線から通信が鳴り響く。
〈こちらナナです、一つサーバーが停止したのを確認したのですが一輝さんたちですか?〉
「恐らくは」
〈そうですか……とりあえず今の所は少しハッキングも落ち着いてきました、カレンさんやヘンリーさんも動いているのでじきに収まるとは思いますが……〉
「ヘンリーさん達は大丈夫なんですか?」
〈ええ、今の所損傷等は無いみたいです……〉
「それならよか……」
突如爆発音が響き、ビル全体が揺れ始め一輝達は咄嗟に近くの物に掴まる。
「な、なんだ?」
「おい一輝! 窓の外見ろって! あれドールじゃねぇのか!」
「……デカすぎんだろ……」
揺れの原因と思われるドールが見える程近くに来ていることに驚く一輝達だが、何といってもそのサイズは規格外にも程があった。
戦車などとは比にならないサイズであり、雑居ビル程の高さと片側三車線の道路を埋める幅はまさに要塞と言っても過言ではない。
「あんなの、どうやって運んで来たんだよ!」
「……パーツ単位で現地で組み立てたとかか?」
〈そのようです、大量の輸送ヘリがあのパーツを繋げていったそうな……〉
「おいおい、戦隊モノのスーパーロボットじゃあるまいし……」
〈元々旧フォルン国軍にもあのような兵器のプロトタイプの図面はあったみたいですが……実用化に至る前に終戦したみたいで〉
「……それとまるっきり同じなんですか?」
〈……そうですね、完全な流用ではないですが少なからず影響は受けてるかと……〉
巨大なその要塞が徐々に近づいてくる中、一輝達はナナに指示を仰ぐ。
「ナナさん、俺達はどうしたらいい? 流石に二人であれを対処しろとは言わないですよね?」
〈もちろんです、とにかく他チームとも合流しましょ……ポイントを示しました、ケツァール、イーグル、アリゲーターのチームが同じ場所に待機しています〉
「了解、急ごう」
通信を切り、一輝達は足早にサーバールームを後にし揺れる地面とに足を取られながらも指定ポイントまで走り抜ける。
ロプレです。
最近布団が体に合って無いのかやたら背中が痛いです。
でももう十年近く一緒に寝て来た布団が急に合わなくなることなんてあるんですかね?




