第十八話 Doll play -迫る人形-
七丁目にたどり着いた一輝達は、すぐさま近くの対空砲の修理にかかる。
前線は少しずつ撤退し、迫ってきていることが徐々に近づく銃声からひしひしと感じつつも、ヘンリーや太刀川たちはせっせと修理をしていた。
一つ二つと直しながら一輝は前線を眺める。
「アルバ、そっちに敵影は?」
「今のところは、遭難者の影もないよ」
「そっか、それも見つけたら保護しないといけないのか」
最初のブリーフィングを思い出し、スコープをオンにして再び一輝は敵を探し出す。
すると、一輝達のいるビルの下に集まる数人のLOWを見つけ声を上げた。
「下に数人! 装備からみてLOWです!」
「一輝! アルバ! この場は任せてもいいか! 後三分はかかる!」
「了解しました!」
ヘンリーに指示を受けた一輝達は階段を降り、階段の上からR2のスコープを覗かせスコープを接続する。
もともとオフィスビルであっただろうビルの吹き抜けから下の階を見ると、LOWの兵士は五人程であり、ゆっくりと警戒しながら階段を上っていた。
「どうする? 奇襲するか?」
「じゃあどっちかがここから撃って、もう片方は真正面から叩こうか」
「じゃあ俺が行くよ、アルバ任せた」
「了解、任された」
アルバと別れ、足音を立てないように一輝は近づくと踊り場で奇襲を仕掛ける。
「おらおらおらおら!」
「敵だ!」
奇襲を受け先頭に立っていたLOWの一人はすぐさま倒れ、他の兵は銃口を一輝に向けるが向けるが次は無防備な背中をアルバのR2が撃ち抜く。
突然の挟み撃ちに指揮系統が一瞬マヒしたのか、LOWはどちらに銃口を向けるべきか右往左往しはじめ、一輝達はその隙を逃さず銃弾を撃ち込む。
結局最後の一人になったLOWは階段の手すりの上をスライディングし、アーマーの重さを利用した加速で逃げていく。
「逃がすか!」
一輝は踊り場から飛び出しLOWの兵士を追いかけ始める。
「おい一輝! 深追いするなって!」
アルバが声を上げるも、一輝は気にする事なくビルの外まで追いかけると頭に銃口を突き付けられた。
「こいつ……追ってくる事をわかって……」
すぐさま待ち伏せを受けたことを理解し、一輝はレーザーナイフを取り出すがLOWの兵士はすかさず引き金を引く。
しかし、銃弾はトルーパーのヘッドを掠めただけに留まり、何故かLOWの兵士が銃を持っていた腕に穴が開いていた。
「上⁉」
LOWの兵士は焦った表情で上空を見ると、そこには結城拓真のイーグルトルーパ―がおり、上空から右手のライフルで大口径のライフル弾を撃ち次はLOWの兵士の肩を撃ち抜く。
「くそっ!」
銃を握れず、不利を感じたLOWの兵士は一目散に逃げるがその無防備な背中を次は一輝が撃ち抜く。
敢え無くLOWの兵士は地面に倒れ、そのまま動くことはなかった。
「結城さん! 無事だったんですか!」
上空を飛ぶ結城拓真は地面に降り立ったものの、すぐに返答を返さずヘルメットパーツを外す。
「ああ、でも無線が壊れてね……ヘンリーさん達は上にいるんだろ?」
「はい」
「ならいいや、ついでに直してもらおう……後、敵の深追いはしないほうがいいよ……命がいくつあっても足りないから」
「す、すみません……」
指摘を受け一輝は頭を下げる。
「じゃあ僕は先に上がってるから」
結城拓真は背中のプロペラを回し、足裏からジェットを噴出すると再び上空へと上がっていく。
一輝もそれに続くように最上階へと戻り、すでに撤収作業を開始していたヘンリーとイーグルトルーパーのヘッドパーツの修理をしている太刀川が待っていた。
「これで最後だな、カレンもそろそろ合流するそうだ」
「あれ? 砲台はまだあるはずじゃ……」
「どうやら復旧の余地もないほどに壊されてるらしい、応急処置じゃどうにもならんのだと」
「それもさっきまではLOW前線を張ってたのに、突如散り散りになって砲台を破壊し始めたんだって~」
「まったく、ようわからん連中だ……そのまま押せばもっと容易く前線を押せたはずだろうに……」
どこか納得がいってない様子のままヘンリーは階段を降り、結城拓真も加わったメンバーで合流地点を目指す。
「ようやく連絡手段が復活してよかった……よし、全員に偵察内容を伝えるね」
結城拓真は自らが得た情報を全員に伝える。
「まず前線の兵の数は少なく見積もっても三千人規模って所かな、こっちは一万人規模で対応してるから間違いなく数では有利なはず……にも関わらず苦戦してるのは前線にいるドールのせいだね、戦車以上の大きさユニットを取り付けてるみたいで……ほぼ砦のような物だ……僕も近づきたかったけど、あいにく機銃の掃射で追い払われてね……」
先ほどの無線機の破壊の訳を話すと、太刀川は不思議そうに尋ねた。
「その割には羽が無傷だったけど? もしかして全弾避けたの?」
「いや、距離が離れてたからすぐに引っ込んだのさ……で、話の続きに戻るけど兎にも角にもあのドールを何とかしないといけないと行けない……敵もドール周りを固めてドールとともに前進してきてる、足は遅いが止める術があまりない……短期決戦で決めよう、幸いさっきドールのいる部分のハッチが開いているのが見えた……そこを攻めれば行けると思う」
結城拓真は空中から偵察した際に保存したいくつかの写真を皆と共有する。
そこにはハッチの隙間から見えるドールらしき人影と、薬のような物を運ぶLOWの兵士の姿があった。
「何してるんだ?」
「わからない、もしかすると何か不具合があったのかもね……詳しいことはわからないけど」
「分からないなら喋るな、若造」
ヘンリーは呆れたような声でそう言うと、結城拓真は苦笑いを浮かべた。
「後の詳しいことはカレンさんに聞こうか、彼女もスコープから様子を覗いていたようだし」
「お? 噂をしてたら見えてきたよ?」
遠くに見える人影を指さし太刀川がそういうと、皆は一斉にその方向を見る。
そこにはカレンがおり、スナイパーを担ぎながら一輝達のほうに歩いていた。
「やほ~」
「ん? ああお前たちか、すまない少し遅れた」
「いえ、今いろいろ情報共有していたところなので丁度よかったです」
「そうか? ならいいんだが……結城、さっき撃ち落されかけてたが大丈夫か?」
「ええなんとか、それよりもカレンさん……ドールの様子は?」
結城拓真がドールの様子をカレンに尋ねると、カレンはため息をつきながら答える。
「どうもこうも、ゆっくりとこちらに近づいている……ちょっかいはかけたんだが、気にも留めてないな」
「そうですか……航空支援での爆撃は提案されないんでしょうか?」
「馬鹿言うな、あの装備にヘリや戦闘機が近づけるものかよ……唯でさえ遠距離レーザー兵器と戦闘機やヘリの相性は最悪なんだから……」
「ですよね……」
「……となると白兵戦か、やれやれ……いつになったら落ち着いて墓に入れるのだろうか、ワシは」
強大な敵の前にヘンリーはどこかワクワクした表情で答えると、太刀川は珍しく苦笑いを浮かべた。
「無理はしないでくださいよ、おじいちゃん」
「なに⁉ 長年の経験からどれぐらいの無理ができるかは自覚してるわ!」
「では突撃の準備を始めよう、一輝! アルバ! 二人は特に気を引き締めろ! 最悪死ぬからな」
『は、はい!』
カレンの言葉に二人はどこか怯えながらも、力強い返答を返した。
どうもロプレです。
最近仕事が切羽詰まって来てるので、やばいと思いながらも新人賞もやらねばと。
やる事一杯で、頭が回らなくなってきた。




