第十一話 overwhelming -蹂躙-
「全員撃て!」
結城拓真の一言に従いベータ部隊はドールに銃口を向けるが、ドールはすぐさまその場から離れ迷路のようなライアー街に消えていき、全員は銃口を向けたままゆっくりとその後を追う。
大量に立ち並ぶ建物とそれを繋ぐ連絡橋が日光を遮り、まるでアリの巣の様になっていた。
「まるで迷路だな……」
一人の隊員が呟くと何処からかモーター音が聞こえ、ウルフ部隊の一人が振り返ると壁を走行していたドールがウルフ部隊の一人を串刺しにし走り抜ける。
全員が逃がすまいと銃口を向けるもドールは壁から壁に飛び移り再びどこかに消えていく。
「まずいな……完全にアイツに有利すぎる場所だ」
「……俺らは誘い込まれたって事ですか!」
結城拓真の一言に反応する一輝だが、すぐに口を閉じ再び近づいてくるモーター音に耳を澄ます。
「上だッ!」
屋根に張り付いていたドールは一輝めがけ落ちてくるが、背部に背負っていた剣を取り出し迎え撃とうとするも、剣先が一輝に近づいた時結城拓真が一輝を突き飛ばす。
「ぐあぁぁぁ!」
脇腹を切断され結城拓真は地面に伏す。
「結城さん!」
「早く撃てッ! 今のうちにッ!」
上に立ち結城拓真に銃口を向けるドールだが、アルバが素早く近づき剣を抜くが結城拓真はすぐさま叫ぶ。
「ダメだ! 実体剣とレーザーじゃ実体剣がすり抜ける!」
「えっ⁉」
突然の情報に驚くアルバだが、ドールはその隙を逃さず片手の剣先を結城拓真に向けたままアルバに向かって剣を振る。
「こうなりゃヤケだ!」
もう避けられないと悟ったアルバは剣を振るとドールはその剣を弾く。
「なっ⁉」
「弾いたっ⁉ じゃああの剣は……」
結城拓真は咄嗟に剣を抜き自分に向けられている剣を弾きサブマシンガンを向けるとドールはその場を離れ、急加速しその場を離れていく。
その背中を逃すまいと一輝がR2を撃ち込むも、ドールは上手く躱し再びどこかへと消えていった。
「あの剣……実体刃とレーザーの……うぐっ⁉」
「結城さん! 大丈夫っすか!」
脇腹を抑える結城拓真に近づきアルバは肩を貸すと、結城拓真はすぐさま通信を開く。
「こちらウルフ部隊ブラボー、アルファ聞こえるか?」
〈こちらウィリー、どうかしたか?〉
「ドールと交戦、ウルフ部隊の隊員の全滅……こっちも深手を負ってしまった……」
切り裂かれた脇腹は熱で焼けた為か血は流れていないが痛々しく、結城拓真の顔はヘッドパーツで見えないが苦悶の表情を浮かべているのはそこに居る全員が想像に難くない。
ウィリーも通信越しに聞こえる声があまりにも掠れた声だったためすぐに指示を出した。
〈今何処に居るか教えてくれ、合流次第護衛を付けてお前を後方に下げる〉
「第二目標付近、対空砲を超え坂を下り潜入した……無線では傍受されるかもしれない、これ以上詳しくは言えない」
〈了解、後は勘のいい部下に探させるよ……とにかく生きて合流しよう〉
ウィリーはそう言うと通信を切り、アルバの肩を離れサブマシンガンを握ると振り返り銃を構えた。
「さて……けが人が居るからって手を引いてくれるほど、戦場は甘くないみたいですね……」
武装したLOWの兵士が銃を構え一斉掃射すると、一輝とアルバは折り畳み式の盾を広げ結城拓真の前に立ち、その後ろで結城拓真はサブマシンを乱射する。
「くっ! 数が多すぎる!」
約十人対三人では分が悪いと踏んだ結城拓真は腰に手を伸ばし、スモークグレネードを取り出すと足元に落とし二人に通信を飛ばす。
「スモークが爆発したら左の建物に駆け込め!」
『了解!』
約五秒後、三人の足元でスモークグレネードが破裂し煙幕をまき散らすと同時に一輝達は左の建物に走り息を潜める。
木造の民家はスラム街にあるだけあり地面や壁は汚く、とても裕福に見えない程ボロボロであったがその横をLOWの兵士が走り抜ける音が聞こえ、全員安堵のため息を吐く。
「取り敢えず巻いたが……」
「結城さん、傷は大丈夫っすか?」
「大丈夫と言いたいけど……」
装甲が溶けている部分が熱いのか、未だ少し皮膚の焼ける匂いがフィルター越しに漂い一輝は思わず話題を変える。
「そういえば、民家が有るって事は人……住んでたんですかね」
「住んでたんだろうな、台所用品も置いてある……」
キッチンにはフライパンなどが置いてあり、食卓には何かを煮込んでいたであろう鍋もそのまま放置されていた。
「うっ……腐ってら……」
「アルバ、フィルターをオンにした方が良いぞ」
「そうだな……ん?」
「どうした?」
何かに気づいたアルバが首を傾げ床を見ると床に引きずったような跡があり、その後は途中でくっきりと消えている。
おそるおそるアルバは近づき、机に置いてあったナイフを拾い跡が消えた床に刺し持ち上げると、一部分の床が持ち上がり中にスイッチ類などが格納されているのを確認した。
「これって?」
「無暗に触るなよ……」
「一輝、アルバ……そのスイッチ類は戻しておいてくれ、もしかするとここの住人の秘密保持の為の爆破装置かもしれない」
「こんな密集した場所で爆破装置なんてあるんですか?」
「密輸品とか盗品を扱ってるならね、後は個人情報とか」
「ひえー、おっかない」
アルバはそっとその床板を戻し、窓から外の様子を伺う。
外では未だ付近をLOWの兵士が散策しており、民家の扉を開け中を確認して居た。
「ここも離れた方が良さそうですね……バレる前なら遠くに離れられるかもしれないですし」
「……いや、どうやらもうバレてるみたいだぜアルバ」
「え?」
一輝が天井を見つめながら銃を構え、結城拓真もよろよろとサブマシンガンを構える。
「一匹、じっと獲物を待ってた奴がいたみたいだな」
引き金を引き天井に銃を乱射した一輝と結城拓真だが、天井はバラバラに引き裂かれ崩れ落ち、三人は先ほど入って来たドアの付近に後ろに下がった。
「まっずいなこれ、R2がやられちまった」
一輝のR2は真っ二つに切断され、背部の剣を抜き電源を入れる。
「こいつと正面から切り合うつもりかよ一輝⁉」
「だって銃ねぇんだもん、しかたねぇだろ! うおあっ⁉」
ものすごいスピードで突撃するドールの刺突を剣で受け止めるが、扉を突き破り表へと飛び出す。
「このっ!」
アルバと結城拓真がドールに銃を向けるも、両手についた剣を振り二人の銃を真っ二つに切断する。
「うおおおお!」
剣を握りアルバと結城拓真の間に居たドールに突撃し吹き飛ばす。
不意を突かれたドールは後方に飛び、その上に一輝が馬乗りになる形になり二人はすぐさまその場から飛びのき再び剣を構える。
「撤退しましょう!」
「……したいのは山々だが……」
結城拓真が剣を抜き入り口の方を見ると既に数人の兵士が居り銃を構えていた。
「これは……命の危機を覚悟した方が良いな……」
「俺達死ぬんすか⁉」
剣を振りドールと鍔迫り合いをする一輝だが、後方に広がる光景に思わず叫び声を上げてしまう。
しかしその時、外にいた兵士の首が幾つか飛んだかと思えば銃弾が兵士のヘッドパーツを貫通しその殆どが地面に倒れた。
「……やっと来たか!」
「あれって!」
アルバと結城拓真は窓の外に居る人物を見て感動の声を上げるが、その後ろでギリギリの状態であった一輝は思わず叫んでしまう。
「ちょ、俺の方! 俺の方に誰か応援を!」
大声で一輝がそう叫ぶと、一人の隊員が民家の入り口に突っ込み天井へ飛び一輝を飛び越し、着地と同時にドールの腕を切り裂く。
「私の隊員を殺したのは貴様だな?」
「……」
「ウィリーさん!」
実体刃とレーザー刃の両方を持つ刀で右腕を切断したウィリーはそのまま胴体を切断しようとするが、寸での所で左手の剣で阻まれてしまう。
その隙をつく様に一輝は剣を振るが、足先がボールの様になっているドールは人とは思えない軌道で避け壁を突き破りどこかへと消えていく。
「チッ……逃がしたか……とにかく負傷者はウルフ部隊の隊員に護衛されながら下がれ! ここから先は俺が指揮を執る……」
ウィリーは振り返り大きな声で全隊員に告げた。
「ただいまより部隊はアルファのみとし、ドール撃破を優先で動く事とする!」
『了解!』
「よし! では行くぞ!」
どうも俺です。
先週は旅行に行ったのでなんだかんだ上げてなかったっすね。
今週からまた頑張ります。
あとスマホ壊れたし残業終わらないし俺も壊れますね、あは。




