半透明人間
やぁよく気づいたね。
僕がここにいることに。
そうさ。
僕は半透明人間さ。
超能力の一種でね。
体を半透明にできるのさ。
これを知っているのは、この世に二人だけさ。
当然、僕を除いてね。
一人目は親友のトモ。
ちょっとしたミスで気づかれてしまった。
それは車に乗って旅行をしたときだった。
あいつの運転で向かっていたんだ。
助手席はあいつの彼女を乗せるために空けていた。
なので僕は後部座席に座っていた。
小さなレンタカーだったので、あいつはバックミラーに僕が映って後ろを見にくそうにしていた。
そこでついやってしまったんだ。
見えやすいように半透明に。
それからはもう旅行どころじゃなくなったね。
彼女を迎えに行くことなんて忘れて、
「いつからできるんだ」
「どうやってできるようになった」
「どこまで薄くなれるんだ」
とかズケズケ聞いてくるんだよ。
僕は焦った。
能力のことが世間に知られてしまった。
解剖実験されるんじゃないか。
見せ物にされるんじゃないかって。
だから…
え。
こんなところで何をしているのかって。
所詮半透明なんだよね。
完透明なら盗みでも覗きでもやり放題だけど。
けれど、この能力を使って良い思いをしたかった。
好き放題したかった。
半透明人間がいても違和感のない場所を探した。
そして見つけたんだこの場所を。
今まで誰も気づかなかった。
何万人もの目の前に現れていたのに。
でも君は気づいてしまった。
だからね。
大丈夫。
痛くはないさ。
一瞬で終わる。
「お客さん。起きてください。もう閉館ですよ」
「えっ、すみません」
「どうでしたか3Dの映画の臨場感は」
「映画どころじゃないことがあったような」
「何かありましたか」
「そうだ半透明人間」
「そうですよ。この映画は『半透明人間現るあらわる』ですよ」
「あれっ、映画の中の話だったのか」
「臨場感が凄すぎて没入してしまうことはよくあることです」
「そうだったのか。凄くリアルだったな」
「では、あちらの出口からお帰りください」
「はい。すみませんでした」
「もう出てきて良いぞ」
「ごめん。気づかれちゃった」
「なんとかごまかせたから良かったけどさ。もうこんなことやめろよな。3Dの映画に紛れて全裸で映り込むとかさ」
「半透明だからできることなんてしれてるだろ」
「俺は医者として内臓を残して半透明になれるお前は重宝しているけどな」
「あれで本当にごまかせたのかな」
「大丈夫だ。誰も露出狂の半透明人間が映画館で3Dの映画に紛れ込んで全裸で映り込んでるなんて信じねぇよ」
深夜の勢いで書きました
なんじゃこりゃ