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6 ゴブリン

 女王の庭園。


 金がなくなった渡世はいつも通りホイールルートを回る。他のハンターにたまに嘲笑されるが、もう慣れたものである。


「わッ、見て見て!」


「何だよ」


「あ、ゴブリンじゃん」


「ホントだ、なんかどこにでもいるよね」


 いつぞやの高校生パーティがあるモンスター――ゴブリンを指さしている。

 鼻がでかい、臭そう、雑魚、散々な言いようで高校生パーティはゴブリンに襲いかかっている。


 ……嘲笑だけで終わるなら全然マシだな。


 茂みで回復薬に使える薬草を探しながらゴブリンの断末魔を聞くと、素直にそう思える。やはり人間同士だと意識しなくても手心をくわえるのだろう。


「ドロップなしじゃん」


「そりゃゴブリンだし」


「え? 何も出さないの?」


「エーテルのクズ石とかなら出た気がするな。あとは――」


 やいのやいのとゴブリンを惨殺した高校生たちは去っていく。それを見計らって渡世は茂みから頭を出した。


 ゴブリン。

 異世界にもいたが、大体似たような扱いだった。冒険者が初めて倒すモンスターはゴブリン、モンスターの食物連鎖ピラミッドの最下層と、よくよく考えれば酷い。こっちでも同じ扱いだと少し同情する。


 ちなみに冒険者は異世界のハンターというべき職業で、モンスター討伐やダンジョン探索で生計を立てている。ダンジョンは異界のようなもので、冒険者の稼ぎ場だ。モンスターを倒し、罠をかいくぐり、宝を手に入れる。ついでにエーテルはマナといわれていた。


 高校生たちが言うようにゴブリンが倒された場所には何も落ちていない。ゴブリンのドロップは異世界でもしょっぱかったがこちらでも同じらしい。


「同じ――」


 渡世はしばし考え、ホイールルートから外れる。ゴブリンで少し確かめたいことができたのだった。



 ゴブリンは基本的には群れで行動する。

 群れで獲物を囲んで粗末な武器や噛みつきで攻撃する。爪でひっかきもする。数が揃えば数の暴力で厄介にはなるが、女王の庭園はその名を冠する通り、雌が生態系のトップである。雌のいないゴブリンは上位個体が生まれないのかもしれない。つまり、この異界ではただのエサだ。


 それでもひとりで、しかも装備なしで戦うのは苦労する。


 一匹のゴブリンの鼻を潰したところでやめときゃ良かったとそう思うが、後の祭りだった。

 あと二匹。三匹の群れを見つけ、奇襲で一匹を沈めたが、レベルがろくに上がってないやる気なしハンターの渡世では結構きつかった。

 

 やばくなったら逃げて、脱いで茂みに隠したレンタル装備を回収して帰ろうと思った矢先、一匹のゴブリンが奇妙な行動を始めた。


 ギャッギャッギャ、と叫び、木の棍棒を捨てたのだ。しかもファイティングポーズをとっている。


 異世界では見られなかった行動に一瞬思考が飛ぶ。


「――ッ」


 その隙を狙ってもう一匹が木の剣で渡世を切る。切りつけられた肩がくそ痛いが、木の棍棒を捨てたゴブリンが気になり渡世は一度距離をとる。


 ファイティングポーズをとったゴブリンはジリジリと距離を詰めてくる。本当に謎だが、とにかく木の剣を持つゴブリンに肘鉄を食らわせる。エーテルを吸ったハンターの体は、低レベルでもゴブリンの頭を砕くだけの力がある。


 ファイティングポーズゴブリンの行動はもう少し検証したかったが、血を流してしまった。エーテルとして消えない人の血が異界のモンスターは大好物だ。他のモンスターが寄ってこないように一気に距離を詰めてファイティングポーズゴブリンを打ち倒す。


「……すまん」

 

 武器を捨てて向かってきた相手である。一発でのしてしまい何だか地味に罪悪感がわいてきた。


「――あっ」


 そんな渡世の前に、確認したかった事が出現する。ファイティングゴブリンがエーテルとなり露と消えた場所に、異世界では「貧者のお守り」といわれたアイテムがドロップしたのだった。


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