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5 ハンター協会

 ハンター協会。

 異界が出現し、自衛隊から民間にハンター業は移行された。それとほとんど同時期にハンターの互助組合が組織された。そこから形や規模を変え、いまのハンター協会がある。

 ハンター協会の役目はハンターの円滑なサポートを旨としている。湊さんがやっていた審査員もハンター協会の仕事の内だ。その他にも異界の安全や秩序を守る役割も担っているが、渡世が良くお世話になっているのは目の前の施設である。


「日替わりお願いします」


 異界の周りには協会がハンターのための施設を運営している。渡世も借りていたレンタル武具屋、汚れと汗を落とす銭湯、そして食堂である。


 湊さんと別れ、飯を食おうと渡世はその食堂に訪れた。


 協会から補助が出ているからハンターは安く食べられる。味も渡世は美味いと思うが、あまり人はいない。シャキシャキとしたモヤシが入った豚汁を吸い、サバの味噌煮をむしり、飯に乗せてかっこむ。美味い。夢中で飯を食い、セルフのお茶で一服して食堂を出る。

 

 満足したところで隣接した銭湯に入る。いつもは風呂に入ってから食堂に行くが、今日は腹が減っていた。体を洗って熱めの湯に肩まで浸かると疲れがほぐれていくようだ。まあ、ホイールルートを回すだけではそこまで疲れはしないのだが。


 女王の庭園から離れ、暗くなった街並みを眺めながら家――ねぐらに向かう。


 当時、異界周辺は異界出現時に安全のために人の居住が禁止された。異界のモンスターが現世に侵入する危険性。異界は現世から見ると空間が歪んで見え、たまにエーテルの粒子が稲妻となってその歪んだ空間を奔っている。そのため放射線やその他有害な物質が放出されている懸念があった。

 

 その名残で人の少ない空白地帯ができている。その空白地帯に半分踏み込んでいる雑居ビル、そこに渡世のねぐらであるネットカフェがあった。


 

「これ、今日の」


 早速、異界探索の報酬をネカフェの利用料にあてる。


「………」


 美形だが愛想の悪い店員は頷くだけ。まあ、初利用からこんな感じだからもう慣れた。


 このネカフェは場所の悪さと店員の愛想の無さからか3人の常連と一見の客しか来ない。どうやって生計を立てているのか、3人の常連の一人、渡世は少し心配だ。

 小さな店だ。個室に囲まれた狭い通路を縫うように歩くと、個室の扉、か細いプライバシーを守るカーテンが開く。


「おー、渡世くんおかえり」


 ネカフェの常連の一人、先輩の徳さんだ。異世界の20年を抜けば徳さんのほうが年上であるし、ハンターとしても徳さんのほうが先輩だ。このネカフェを紹介してくれた人でもある。

 湊さんから勧められハンターになった、渡世と同じ元路上生活者でもある。だから親近感を感じてくれているのか、徳さんはこうして挨拶をしてくれる。


「徳さんも帰ってたんですね」


 徳さんと少し話をして渡世も寝床に入る。古いPCにクッションが置いてあるだけの狭い個室だ。横になると足も延ばせない。独特の匂いがするが、充分落ち着ける。

 

 それに、異世界でほとんど一人で行動し、放浪していた渡世にとって、おかえりと言ってくれる人がいるのは嬉しいものだった。


 四角形の狭い個室で寝返りを打ち、ひんやりした壁に背中を預ける。寝てるときに壁に背中を預けると安心するのはなぜだろうか……。

 

 眠気のままに目を閉じ、他の部屋の物音を聞きながら渡世は心地いい眠りに身を預けたのだった。

ネカフェの名前、あってもいいような気がするし、なくてもいいような気もする。


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