4 湊さん
ふんふんっ、と漫画ならそんな擬音がつきそうな勢いで湊さんは審査を終える。
「査定額はこちらになります」
すまし顔の湊さん。恐らく審査員ということで厳格な雰囲気を出したいのだろうが、両手で見積書をつかんで見せてくるその仕草は限りなく子供っぽい。
「ありがとうございます」
礼を言って受け取ろうとすると躱される。見積書で口を隠し、湊さんは上目遣いで言う。
「近況報告を交換しましょうっ」
何が楽しいのか、ブンブンッ、とポニーテールが揺れる。いや、湊さんは犬ではないのだからどういう心境なのかはわからないのだが。
「はあ、まあ、ボチボチです」
実際日雇いのバイトだと思うと破格の収入だと思う。収入面などを含めてハンターになって良かったと伝えるのだが、湊さんはジッと見つめてくる。
「……えー……」
ジーッと見つめてくる。良い娘ではあるのだがたまによくわからない。
「……今日あったことでもいいですよっ」
何を言えばいいのか皆目見当もつかず困っていると、湊さんは見積書の奥からそう言った。
「あー、なるほど……今日はネズミと言われました」
びりッ、と見積書が破ける。
「……ンっ……どう思いましたかっ」
「特には――……いや、ハムスターじゃないのか、とは思いました」
ムムムムム、という感じで湊さんの眉が寄せられ、
「まあっ、まあまあまあっ――良いでしょうっ」
何が良いのかは謎だが、眉が元の位置に戻る。
「ではっ、私の番です――」
正直、渡世に近況を話しても湊さんの得にはならないと思うのだが、まあ、今日は人が少ない。他のハンターが後ろに来るまでは、湊さんが満足するまで付き合おうと背もたれに体を預けたのだった。
この回いらないような気がしないでもない。まあでも書きたかったので書いた。