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3 ネズミ

 来た道を戻っていると男2人女2人の4人パーティとすれ違う。

 

 高校生ぐらいだろうか?

 

 渡世としては異界が出現する前の日本を思い出し、未成年に危険な異界を探索させていることに落ち着かなくなる。まあ、彼らとしてはまだハンターになって一か月の新人に心配されたくないだろうが。


「見たかよあのおっさん」


「見た見た。レンタルアーマーでホイールルート回してんじゃん」


「アレがネズミっていうの? 初めて見た」


「ちょっと声大きいって」


 ホイールルート。

 ハンターたちにとってハンターたる所以は危険な異界を探索し、新たな世界を拓くことだ。15世紀から17世紀の大航海時代やアメリカの西部開拓時代のノリに近いだろうか。その彼らにとって、モンスターのテリトリーの境界を通るハンターは嘲笑の対象だ。

 

 危険を恐れ、安全なルートを回し車を回すネズミのように行ったり来たりする。

 

 そんなハンターをネズミと呼ぶ。

 

 ハムスターホイールともいうらしいからハムスターではないのか、と思ったりもするがネズミのほうが嘲笑してる感は出るのだろう。

 

 笑い声が遠ざかっていくのを聞きながら縄張り争いで敗れたモンスターのドロップを拾い集める。これはネズミではなくハイエナ行為。いつもは渡世と同じようなハイエナが拾ってなくなったりしているが、今日は運がよかった。


 鞄がいっぱいになったところで渡世は女王の庭園を出ようとスポーン地点に向かう。スポーン地点は物々しくバリケードが設置され、ハンター兼自衛隊員たちが警戒している。まるで軍事基地のような様相だがスポーン地点にモンスターは寄り付かない。


 だから自衛隊員も少人数で警備にあたっている。その他にもハンターの救助、仲裁、違法行為の取り締まりなどの任務もある。自衛隊員でハンターというのは相当数が限られるため激務であろうと思われる。


 そんな苦労をおくびにも出さない自衛隊員の間を抜け、換金所に向かう。異界の物を審査せずに現世に持ち出すのは違法のため、一度審査を通す。そのときに金額査定までして換金してくれるため、ハンターの間ではその審査を換金所と呼んでいる。


「あ、渡世さん」


 その審査員のひとり、鑑定スキル持ちのみなと かなめさんだ。異界に入っているから彼女も当然ハンターのひとり。


「こちらへどうぞッ」


 湊さんは正面に手のひらを向ける。すまし顔だが勢いがすごい。トレードマークのポニーテルが弾んでいる。女性審査員の制服はシックなデザインのスーツなのだが、湊さんが着るとまるでリクルートスーツのようである。


「こちらへ――……何してるんですかっ……渡世さんっ、来てくださいっ」

 

 すまし顔ながらムッと頬を膨らます器用な湊さん。別に他の審査員の席が空いてるため湊さんの所に行く必要はないのだが……。


 ただ、まあ、あの弾むポニーテールがしょんぼりすると謎の罪悪感が湧く。異界が出現した、ファンタジーが蔓延した日本で何をしていいのかわからず公園で路上生活をしていた渡世に、異界出現後の社会常識を教えてくれたのは彼女だ。


 ハンターに誘ってくれたのも彼女で、恩人だ。世話焼きで凄い良い娘でもある。


(だから俺のような怪しいおっさんは近づかないほうがいいと思うのだが……)


「――こちらにお掛けくださいっ」


 近所の野良犬を撫でようとして無視されたような顔をされてしまうと、世話になっただけに無視はできないだろう。


 そう思いながら渡世が湊さんの対面に座ると、ポニーテールが弾んだのだった。


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